細越麟太郎 MOVIE DIARY

最新の映画情報や批評を掲載します。

●『永遠の門・ゴッホの見た未来』で再現される狂気の天才画家の視線。

2019年07月29日 | Weblog

7月18日(木)13-00 外苑前<GAGA試写室>

M-054『永遠の門・ゴッホの見た未来』" At Eternity's Gate (2018) Walk Home Entertainment Productions LLC /River Stone Pictures

監督・脚本・ジュリアン・シュナーヴェル 主演・ウィレム・デフォー、マチュ・アマルリック <シネマスコープ・112分> 配給・ギャガ、松竹

画家のフィンセント・ファン・ゴッホに関しては、われわれには、58年のカーク・ダグラスがゴッホを熱演した「炎の人・ゴッホ」が印象に深く残っている。

何しろ画家で映画監督で、同じ名前の巨匠、ヴィンセント・ミネリが描いた作品は、カークとアンソニー・クイン演じたゴーギャンの好演で評判だった。 

もちろん、その昔の作品を比較する気もないが、当時のカークは絶頂期で、「バイキング」や「OK牧場の決闘」などで、人気も絶頂の時代だった。

多くのアカデミー賞にもノミネートされた作品の印象はまだ残っているので、ついつい初老のウィレム・デフォーが30代のゴッホを演じたのかが引っかかる。

しかし、そんな御託はともかく、ここで彼の演じるゴッホの狂気も、その正気との境界線が見え隠れするので、画家の狂気は巧妙に再現されていて見逃せない。

というのも、芸術家の天性の才能は、冷静な常軌をかすかに逸脱した瞬間に現れるものだから、ここでデフォーが演じているゴッホも、精神的な加齢は当然あるのだろう。

画家で稀有の友人ゴーギャンのアドヴァイスで、パリを離れて、太陽がいっぱいの南フランスのアルルに流れて来てから、ゴッホは明るい陽光の魅力に取り憑かれる。

キャンバスを担いで、広い南仏の田園丘陵を、あの名画に描かれた風景や橋を求めて歩き回る姿は、モジリアーニやロートレックとは対照的に屋外派で眩しい。

その画家ゴッホの描き出す風景は、いつも太陽の光を浴びて迷彩色が飛び散って行く、その画法も狂気も、あの自身の耳を切り落とすような狂気へと沸騰していく。

しかし映画はごく淡々とクールに描かれていて、あの大昔のカーク・ダグラスの狂気の沙汰ほどのヒステリックではなく、ごくクールに静観していくようだ。

ま、10月11日からの、上野の森美術館での<ゴッホ展>の、まさにコマーシャル映画という印象は、絵画ファンには格好の教材となるだろう。

 

■高く上がったセンターフライだが、フェンスまでは届かず・・。 ★★★☆☆

●11月8日より、全国ロードショー


●『ロケットマン』で再現される歌手エルトン・ジョンの成功と秘話。

2019年07月26日 | Weblog

7月18日(木)10-00 半蔵門<東宝東和試写室>

M-053『ロケットマン』" Rocketman " (2019) Paramount Pictures, Marv Entertainment.

監督・デクスター・フレッチャー 主演・タロン・エガートン、ジェイミー・ベル <121分・シネマスコープ>配給・東和ピクチャーズ

もちろん、これは宇宙飛行士のSF映画ではなくて、このタイトル曲でヒットした、あの歌手のエルトン・ジョンの実伝サクセス・ストーリーだ。

そのエルトン自身が総指揮をした作品だから、まさにご本人の承認済みの自伝映画で、試写室は連日満員と聞いていたので、早めに入場。

さすがに朝の9時半では、まだサラリーマンの出勤時間なので、評論家諸氏には苦手時間なのか試写室も出勤まばらで空いていて、ほっとしての試写スタート。

ま、ビートルズの解散などで人気が落ち出した時代のロンドンに、このエルトン・ジョンの登場は、<ローリングストーンズ>の活躍とは対照的に地味だった。

ヒット曲の<ユア・ソング>も、実に地味なLPジャケット・デザインで、当時はサラリーマンだった当方も、銀座の日本楽器の店頭で恐る恐る買ったものだ。

ピアノ・ソロによる曲は、実にシンプルで心地よく、当時としては<ディープ・パープル>や<グランド・ファンク・レイルロード>などの中で地味ながらヒット。

まるで教会の賛美歌のように透き通るソロ・ソングは、ジョン・レノンよりも澄んでいて、ニール・ヤング・ファンの私にも、フレッシュな印象は好感だった。

この新作では、そのエルトンが総指揮をしているので、サクセス・ストーリーにはウソもなく、主演のタロンもよくエルトンに化けていて、まるで実物のようだ。

しかし、あの時代のご時世で、ファッションもトゥーマッチなサイケなエルトンは、エリック・クラプトン・ファンのわたしには、ただの<変なガイジン>だった。

という次第で、成功と麻薬の現実には、たいして興味なく、やはり実写版の「ビル・エヴァンス」の実話の方が好感で、この作品は最後まで<傍観>の印象。

 

■かなり高く上がった左中間へのフライだが、惜しくもレフト・フェンスまで。 ★★★☆

●8月23日より、東宝系ロードショー


●『永遠に僕のもの』の天使の顔をした悪魔の青春犯罪実話。

2019年07月21日 | Weblog

7月16日(火)13-00 外苑前<GAGA試写室>

M-052『永遠に僕のもの』" El Angel " (2018) K & S Films, Underground El Deseo, Capital Intelectual, S.A.

製作・ペドロ・アルモドバル 監督・脚本・ルイス・オルテガ 主演・ロレンソ・フェロ <115分・ビスタサイズ> 配給・GAGA

88年の「神経衰弱ぎりぎりの女たち」で多くの国際映画祭で受賞して、98年には「オール・アバウト・マイ・マザー」でオスカー受賞などなど。

秀逸なアルゼンチン作品で有名なアルモドバルが、ここではプロデュースに専念した新作が、実在の犯罪少年カルロスの青春を再現したというクライム・ストーリー。

1971年に窃盗常習犯で逮捕された美少年は、多くのかっ払い犯罪を犯していて、いまでもそれから50年以上も牢獄に居るという実在の犯罪の再現ドラマだ。

南米アルゼンチンといえば、カルロス・サラ監督の「タンゴ」で有名で、わたしなどの記憶では、あの情熱的なアルゼンチン・タンゴが歯切れよく耳に残っている。

しかしこの作品は実在の美少年犯罪と、その家庭や友情の実態を描いていて、まるで犯罪に罪悪感を持たない美少年の青春は、まるでヒーロー願望映画の印象だ。  

特に生活に不自由もなく、比較的に裕福な生活に恵まれた美少年が、どうしてここまで常習的に犯罪を侵すのかは、つまりこれが<青春>だった、というテーマ。

ことの重大な悪質さの認識もない犯罪者というキャラクターは、多くのハリウッド映画でも見て来たが、ラテンの陽だまりが背景になっている、というのがコワい。

ちょっとマリリン・モンローの気だるい微笑を漂わせるロレンソ少年には、おそらく多くの女性が母性本能を刺激されるだろうが、わたしなどにはただの不良ガキ。

という視点では、ちょっと飽きのくるクライム・ストーリーで、ぜひ、あれから50年も牢獄にいるという現在の実在人物を、写真でもいいから見たいと思ったが・・。

あのジェームズ・キャグニーの「汚れた顔の天使」の<ベビーフェイス・ネルソン>のような、犯罪臭のまったくない青春映画というのが、不気味だ。

 

■良い当たりのライト・ライナーだったが、好捕される。 ★★★

●8月16日より、渋谷シネクイントなどでロードショー


●『ジョアン・ジルベルトを探して』で青春のボサノバ原点追想旅行だ。

2019年07月19日 | Weblog

7月11日(木)13-00 京橋<テアトル試写室>

M-051『ジョアン・ジルベルトを探して』"Where are You, Joao Gilberto? (2018) Gashot Films / Ideare Audience / Neos Films

製作監督・脚本・ジョルジュ・ガショ 音楽・ジョアン・ドナート <111分・ビスタサイズ> 配給・ミモザ・フィルムス

<ボサノバ>のリズムを初めて聞いたのは、初めてニューヨークに行った67年に、<ヴィレッジ・ヴァンガード>でウェス・モンゴメリーを聞いたとき。

それまでは<サンバ>や<マンボ>などの、ラテンの軽いリズムに接していたので、とにかく軽いリズム感覚だなーーと思っていた。

しかし、フィフス・アヴェニューのレコードショップで、フランク・シナトラが、アントニオ・カルロス・ジョビンと共演したレコードを買って、ショック!

その心地のいいリズム感は、サンバほど<お祭り>っぽくなくて、あの、ラテンの木陰の薫風を感じさせる、テキーラ・カクテルの香りがしたのだった。

それからは、ジャズ界に限らずに<ボサノバ・ブーム>がやってきて、あのアストラッド・ジルベルトの軽い歌も、クイード・テイラーのプロデュースでヒット。

70年代のジャズはすっかりボサノバのリズムで占拠され、そのアストラッドと離婚したジョアン・ジルベルトも、リード・アルバムをヒットさせていた。

そんな時代に青春だった当方としては、もちろん、ジョアンのCDも漁っていたが、彼の謎めいた自殺で、あのボサノバ台風も去ったのだった。

しかし今でも時々聞くボサノバの音感は、午后のラテンの温風のように気だるく気持ちいいが、ジョアンがこれほど謎めいた失踪癖があったとは・・・・。

という実にミステリアスな、ジョアンの足跡を追うドキュメントは興味深く面白かったが、あんな狭いトイレの中で作曲していた・・というのは、信じられない。

イメージのジョアンは、カルロス・ジョビンとは違って、もっとマイナーな<テキーラ・カクテル>のようで、この作品で自殺の真相も、また、より謎めいた。

 

■左中間の凡フライだが、野手が目測を見失いスリー・ベース。 ★★★★

●8月24日より、新宿シネマカリテなどでロードショー


●『ガーンジー島の読書会の秘密』意外にも心地いい第二次戦争秘話の美談。

2019年07月17日 | Weblog

7月9日(火)10-00 六本木<キノ・フィルム試写室>

M-050『ガンジー島の読書会の秘密』"The Guernsey Literary & Potato Peel Pie Society " (2018) Studiocanal , Blueprint Pictures, MK Productions

監督・マイク・ニューエル 主演・リリー・ジェームズ、トム・コートネイ <124分・ビスタサイズ> 配給・キノ・フィルムズ  

英仏海峡の中でも小さな島、多分、東京の山手線の広さもないような島にも、まだドイツ軍が駐屯していた第二次世界大戦末期。

頭上には連合軍の爆撃編隊が飛び交う時代だが、この小さな島には爆撃もなく、一応は占領下だったが、戦渦は幸運にも免れていた、という時代。

<史上最大の作戦>がノルマンディ海岸が迫るころにも、この<瀬戸内海の小島>のような<ガンジー島>は、不思議な平和に包まれていた。

それでもドイツ軍の監視のもと、秘密裏に住民の少数は<読書会>という、一種の読書の趣味の集いを開いていて、リリーはその数人の集会に招かれる。

映画では<読書会>という少人数の集会はテーマになったことは記憶にないが、ナチスの監視を逃れて市民が独自の生活を維持するというテーマはあった。

あのジャン・ギャバンが、ブールビルと共演した「パリ横断」は、ナチスの占領下のパリで、夜中に豚肉を移送するという、傑作があったのを思い出した。

この作品は、戦争爆撃下のロンドンから、この島の<読書会>に招かれたリリーの、素晴らしくもサスペンスに満ちた数日を描いた・・というユニークな温情作品。

要するに、あの世界大戦下にも、このような知的で美しいエピソードが、爆撃機が頭上を飛行しているという状況で、実は営まれていた、その事実に感銘した。

食料のない時代でも、こうして<ジャガイモの皮>で、パイを作って、名作文学の<読書会>を、ほんの6人ほどで開催していた、という設定はユニーク。

オスカー受賞の名作「スリー・ビルボード」のプロデューサーが、「フォー・ウェディング」「魅せられて四月」のマイク監督で再現した、ハート・ウォーミング傑作。

 

■レフト後方のフライの返球の間にツーベース・ヒット。 ★★★☆☆☆

●8月30日より、TOHOシネマズ・シャンテ他でロードショー


●『ブラインドスポッティング』の監視つき仮釈3日間の黒人青年の挙動。

2019年07月13日 | Weblog

7月5日(金)13-00 渋谷<ショウゲート試写室>

M-049『ブラインド・スポッティング』"Blindspotting" (2018) Oakland Moving Pictures LLC.

監督・カルロス・ロペス・エストラーダ 主演・ダヴィード・ディグス,ラファエル・カザール <95分・ビスタサイズ>配給・Regents

サンフランシスコの湾から東に位置する<オークランド>という街は、東京で言えば<川崎>のような位置関係にあって、とくに観光地でもない。

いちど、クリント・イーストウッドの長男のカイルが、ジャズのライブ出演で東京に来たときに、インタヴューしたチャンスに、この街の話しが出た。

長老のクリントは、サンフランシスコから100キロ程南に位置する、<カーメル>という小さなステキなビーチタウンの市長もやったことがあった。

ビーチに近いゴルフ場やテニス・コートも隣接する、いかにも<カリフォルニア>という印象のステキなエリアを所有しているクリントはレストランも経営。

しかし、長男のカイルは、父親のクラブハウスには住まないで、内陸に100キロほど入った<オークランド>に住んでいると、照れながら言っていた。

ま、野球場もある若者の街だから、オヤジのクラシックなフラットハウスよりは、オークランドの方が活気があっていいのだ・・・と、カイルは豪語していた。

この映画はその街が舞台になった、やはり若者たちの好きそうな雑居シティで、マンハッタンから離れた<クイーンズ>のような賑やかさは若者の趣味に合うだろう。

映画はそのオークランドで、仮釈放になった黒人の若者が、保護観察というのか<指導監督期間>の3日間の話しで、周囲からのヤバい誘惑に勝つ迄のストーリー。

たしかに、この雑居都会の雑然とした風景と、犯罪の悪臭は危機一髪のテンションがあって、オヤジのヒット作品「ダーティ・ハリー」のシスコほど美しくもない。

つまり、いかにも犯罪の温床のような悪臭を放つ街で、この保護観察中の黒人の若者が、いかに更生していくか・・・というのはサスペンスがある。

無名の若い黒人をメインにして、それを囲む白人の友人や街の喧噪が、いつでも青年を犯罪の世界に引き戻すのかという、危機感と友情に包まれた異色の力作だ。

 

■センターの手前でワンバウンドした打球がフェンスへ、ツーベース。 ★★★☆☆

●8月30日より、渋谷シネクイント他でロードショー


●『ラスト・ムービー・スター』は、現実の痛恨<ラスト・ショー>の苦い味。

2019年07月10日 | Weblog

7月3日(水)13-00 渋谷<映画美学校B-1試写室>

M-048『ラスト・ムービー・スター』Burt Raynolds/ The Last Movie Star (2017) Whitener Entertainment / Manot Brothers Productions

監督・脚本・アダム・リフキン 主演・バート・レイノルズ、チェビー・チェイス <104分・ビスタサイズ>配給・ブロードウェイ

昨年、2018年9月6日に、82歳で亡くなった俳優バート・レイノルズの、まさに<ラスト・ムービー>なのだが、ちょっと勘違いして見ていた。

というのも、日本のタイトルには、<バート・レイノルズ最後の出演作>とあり、わたしは彼の映画は好きなので、ほぼ全作見ていた関係で、この試写は<告別式>。

つまり、多くの彼の過去に出演した作品のスクラップによる追悼記録映画かと思って見始めたのだが、それは当方の勘違いで、全くの新作ドラマなのだった。

たしかに、老齢のバート・レイノルズは実名で出演しているのだが、これは全く新しいドラマで、過去の映画スターの、新しい視点のリアル残酷辛口ドラマ。

つまり、もう過去の映画スターのバートは、<国際ナッシュビル映画祭>から、彼の出演作品の回顧上映映画祭に招待され、ハリウッドからナッシュビルに飛ぶ。

なにしろ、過去にも同期のビッグのクリント・イーストウッド、ロバート・デ・ニーロ、ジャック・ニコルソンも出席しているというビッグな映画フェスティヴァルらしい。

一応はヒマだし、出る事にしてロス空港に行ったら、招待席は満席の中央エコノミー席で、ナッシュビル空港に着いたものの出迎えもなく、やっとブスなネーチャンと遭遇。

ガムを噛んでいる彼女に案内された映画祭の会場というのは、豪華なシアターではなく、実に寂れたビルの狭い一室で、数人の映画おたくマニアがまばらな拍手をした。

つまり、ライバルのクリントやデ・ニーロが招待されたという映画祭は、まったく別の組織の<ナッシュビル国際映画祭>であって、これは数人のマニアの集会なのだ。

失望したバートは椅子を蹴って帰ろう・・と思ったのだが、そこに過去の<バート・レイノルズ>の亡霊が現れて、これも人生の<リアル>なのだ、と宥めるのだった。

という、実に屈折した過去の栄光と、現実の老化による勘違いの<センチメンタル・ジャーニー>で、ついついファンだったわたしも不覚にも、ホロリとしてしまった傑作。

 

■ただのレフトフライと思った当たりが、フェンス直撃スリーベース。 ★★★★☆

●9月6日より、新宿シネマカリテ他でロードショー


●6月のニコタマサンセット傑作座ベストは『ハッピーエンド』

2019年07月07日 | Weblog

6月のニコタマ・サンセット傑作座上映ベスト

 

*1・『ハッピーエンド』18・監督ミヒャエル・ハネケ 主演・ジャン=ルイ・トランティニアン<DVD>

   南仏の大家族が、いつもの豪華なランチ・パーティの最中、長老のジャン=ルイが入水自殺をしようとするが、家族に止められる。

   20年ほど前に盛岡市のミステリー映画祭にやってきたトランティニアンとワンコソバを食べた思い出が、まるで白日夢のように、懐かしく思い出した。

 

*2・『いつも二人で』67・監督・スタンリー・ドネン 主演・オードリー・ヘプバーン <DVD>

   1967年に、ニューヨークのラジオ・シティ・ミュージックホールで封切り初日に見たのが、まるで先月のことのように思い出す。

   ニコタマ・オードリー・ヘプバーン映画祭は満席札止めのために、痛恨の自宅DVDだが、実に哀しくも皮肉な人生コメディの傑作。

 

*3・『果てしなき路』10・監督・モンテ・ヘルマン 主演・ドミニク・スウェイン <DVD>

   新作映画の撮影中に起きた殺人事件は、なんだ、これは現実なのか、それともドラマなのか・・と混乱させるトリッキー・ミステリー。

 

*4・『ローマンという男』17・監督・ダン・ギルロイ 主演・デンゼル・ワシントン <DVD>

*5・『サバービコン』17・監督・ジョージ・クルーニー 主演・マット・デイモン <DVD>

*6・『刑事』12・監督・重光敦彦 主演・高倉 健主演の、NHK放映ミステリー <DVD>

*7・『上海から来た女』47・監督・オーソン・ウェルズ 主演・リタ・ヘイワース <DVD>

*8・『ミンクの手ざわり』59・監督・デルバート・マン 主演・ドリス・デイ追悼、大変お世話になりました。合掌。<LD>

*9・『赤い家』42・監督・デルマー・デイビス 主演・エドワード・G・ロビンソン <DVD>

*10『現代任侠史』73・監督・石井輝男 主演・高倉 健 <DVD>

 

*ナイター野球観戦のために、DVD鑑賞が減っています。

 

●6月の試写ベストは、痛恨の秀作『帰れない二人』。

2019年07月06日 | Weblog

★6月に見た試写ベスト・3

 

★1・『帰れない二人』<中国> d.ジャ・ジャンクー 主演・チャオ・タオ ★★★★☆☆☆

   5年の刑期を終えて出所した中年女性は、事件に絡んだ恋する男を中国奥地ウィグル地区まで追って、恋の痛切逃避行が延焼する。

 

★2・『プライベイト・ウォー』d.マシュー・ハイネマン 主演・ロザムンド・パイク ★★★★☆

   戦場記者として世界を駈けるロザムンドは、多くの実戦記事を発信していたが、イラク戦線の前線取材で銃弾に果てる迄の、壮絶実話映画化。

 

★3・『ワイルドライフ』d.ポール・ダノ 主演・キャリー・マリガン ★★★★

   アメリカ中西部の都市で、夫は炭坑事故に出張している最中の家庭生活の炎上を、必死で支える妻の日々を見つめる、ひとり息子の視線。

 

☆その他に試写で見た傑作は、イライジャ・バイナムの「ホット・サマー・ナイト」、韓国映画「工作」などでした。


●『帰れない二人』の果てしなく熱い底なしの白日夢。

2019年07月04日 | Weblog

6月28日(金)12-45 京橋<テアトル試写室>

M-047『帰れない二人』" Ash is Purest White " (2018) Shanghai Film Group, Xstream Pictures / M K Productions <中国フランス合作>

監督・脚本・ジャ・ジャンクー 主演・チャオ・タイ、リャオ・ファン <135分ビスタサイズ> 配給・ビターズ・エンド  

あの傑作「山河ノスタルジー」から3年しての、いま、もっともパルムドールに値する監督と言われる中国映画監督ジャ・ジャンクーの新作。

北京でのオリンピック開催決定を契機にして、中国全土は活気づき、裏道ではヤクザの抗争も激化していて、殺人事件に絡みチャオは投獄され5年して出所。

あの殺しで助けた男リャオを探して彼女は列車の旅をして、西部の奥地ウィグル自治区の古都でダムの完成で水没するフォンジュへと、さすらいの旅をして再会する。

しかしリャオには妻がいて、貧しいながら家族がいたが、チャオとの再会で二人の関係は再燃焼してしまい、ドラマは泥だらけの逃亡北帰行となっていく。

複雑な人間関係を清算してから、また二人は一緒になろうともがく姿は、それは、あの<ボニー・アンド・クライド>のように、地獄への逃避行となっていく。

その血だらけの人間関係を、さすがは名匠のジャ監督は、急速に変化発展する中国の、多くの山間部の風景を、まるで文明の廃棄物処理場を見る様に描いて行く。

また燃え上がる中年のヤクザもの二人の恋は、こうした中国奥地の混乱と、まさに廃棄物未来都市のような背景を取り込んで、壮大な人間ドラマにしていく。

発展する上海などの栄華とは対照的に、その産業廃棄物置き場のようになっていく地方都市の乾燥した粉塵の風のように、二人の旅路は地獄へと向かって行く。

ちょっと、トリュフォの「暗くなるまで、この恋を」を思わせるが、さすがジャ・ジャンクー監督は中国人の個性とプライドで、感動的なラブストーリーに仕上げた。

まるで、あの志賀直哉の「暗夜行路」のような、しかし乾燥しきった中国大地と僻地を舞台にして、最近、もっとも素晴らしい人生廃棄物ラブストーリーだった。

 

■高く上がったフライは、レフトのポールを巻いてスタンドイン。 ★★★★☆☆☆

●9月6日より、渋谷bunkamuraル・シネマでロードショー