細越麟太郎 MOVIE DIARY

最新の映画情報や批評を掲載します。

●『ビヨンド・ザ・エッジ<歴史を変えたエベレスト初登頂>』のナマ撮り映画魂。

2014年04月29日 | Weblog

4月25日(金)13-00 九段下<角川映画試写室>

M-043『ビヨンド・ザ・エッジ<歴史を変えたエベレスト初登頂>』Beyond the Edge (2013)general film corporation ・ニュージーランド

監督・リアン・プーリー 主演・チャド・モフィット <91分・3D> 配給・KADOKAWA ★★★★

1953年5月29日。ちょうど60年前の今日、イギリスの登山家エドモンド・ヒラリーとシェルパのテンジンが、人類で初のエベレスト登頂に成功した。

当時もいろいろのニュース映画や、劇映画「エベレスト征服」などで、その快挙は紹介されて、われわれも興奮して見入った記憶がある。

この映画は、その当時の実情を、ニュースフィルムをベースにして、3Dカメラと俳優たちを使って再現した、実に忠実で渾身の新しい作品。

それまでにも、世界各国の登山家グループが世界最高峰への登頂を試みては失敗を繰り返していた。急変する悪天候と雪崩で、多くの登山家が亡くなっていた鬼門だ。

イギリスのグループも33年もの昔から挑戦しては失敗を繰り返していたが、この年も入念なプランと、多くのスタッフを動員して3月から実動を開始。

映画では、その当時の装備と人員と機材などを現地で用意して、実に忠実に<再現ドラマ化>をしていくが、無駄なショットは避けて、ラストの二人の行動に肉薄するのだ。

もし試写室の気温と気圧と強風も、同じような条件であったら、とてもわれわれは平然とは見ていられまい。それを、ふと考えると恐怖する。

ネパールのカトマンズで、用意された機材や食料などを30人のシェルパと600人のポーターでベースキャンプまで搬送。

そのプロジェクトの第一グループが登頂に失敗したために、ヒラリーとテンジンは、9つのキャンプを経由して、とうとうその日の11時30分。8848メートルの山頂に立つのだ。

見どころは、やはり、その世界最高点からの360度を見晴らすナマの3D映像の素晴らしさ。これが、映画という映像文化の魅力だろう。

「ロード・オブ・ザ・リングス」の映像スタッフを起用したという、この作品は、実に冷静に奢る演出もなく、ただただ実像ならではの美景を見せてくれる。

CGやスクリーン・プロセスやエフェクトなどのトリッキーな手法をまったく使用しない映像美と臨場感は、これこそが<映画だあ・・・>という魅力が溢れている。

 

■フルカウントでファールのあと、文句なしのバックスクリーン直撃弾。

●6月28日より、ヒューマントラストシネマ渋谷などでロードショー 


●『人生はマラソンだ!』でホロリとした瞬間。

2014年04月26日 | Weblog

4月24日(木)13-00 京橋<テアトル試写室>

M-042『人生はマラソンだ!』De Marathon (2012) Eyeworks film & inspire pictures オランダ

監督・ディーデリック・コーバル 主演・ステーファン・デ・ワレ <113分> 配給・ザジフィルムス ★★★☆☆☆

よく、人生はマラソンだ。と言われる。ま、それぞれにコースの途中でリタイアする者もいれば、納得の完走を果たすものもいる。

だから、この映画のテーマも感動も知れているので、日程のスケジュールの最終試写まで見なかった。だって、「フル・モンティ」のマラソン版だろ。

でもやっぱり見てみると、愚かな先入感は見事に裏切られて、百も承知のドラマ展開でも、ラストではホロリとさせられるのは、よく出来ているからだ。

テーマはむしろ、あのオンボロ楽団が、ロイヤル・アルバート・ホールのコンサートに挑戦する「ブラス!』によく似ている。

ロッテルダムの下町にあるボロいガレージは借金まみれで、4人のオンボロなオヤジたちも、人生の終盤が近いので、投げやりなのだ。

この壮年のオヤジたちにも、それぞれの生活苦があって、とくに、バカ息子にテを焼くステーファンの家庭はボロボロでどうしようもない。

それでも工員のひとり、エジプト移民の若者が、そのガレージの倒産危機を救うために、市民マラソンに参加して、チームで完走すれば、倒産の助成金が貰えることを知り、走ろう、と提案。

もう、これは走るしか残りの人生の道はない。そこで老人グループ4人は出場を余儀なくされる。という、まさに「ブラス!」状態なのだ。

レースの当日、42キロを休み休みで、どうにか走るのだが、案の上、末期がんを隠していたステーファンは、あと300メートルの地点で倒れて病院に搬送された。

それからの意外な展開は、この作品のネタバレになるので書かないが、なかなか練られたシナリオで泣かせてくれる。

たしかに「クール・ランニング」のような、現実は慣れはしているが、これが映画ならではのファンタジーなのだ。

ロジャース=ハートのミュージカル「回転木馬」の<ユール・ネバー・ウォーク・アローン>のメロディを使ったシーンには、どうも個人的な友人の思い出もアタマをよぎってしまって、ホロリ。で、★をひとつオマケである。

 

左中間に抜けたゴロを野手がファンブルする間に、もうけもののスリーベース。

●6月、シネスイッチ銀座などでロードショー 


●『なまいきチョルべンと水夫さん』の賞味期限切れのビミョウな味。

2014年04月23日 | Weblog

4月22日(火)13-00 六本木<シネマートB3試写室>

M-041『なまいきチョルべンと水夫さん』Tjorven, Batsman och Moses (1964) AB svensk filmindustri スウェーデン

監督・オッレ・ヘルボム 主演・マリア・ヨハンセン <92分> 配給・クレスト・インターナショナル ★★☆☆

試写室に入るまで、この映画が50年も昔の作品だとは、うかつにも知らなかった。ま、年代物の骨董品も、もちろん、良ければいい。

しかし、問題は、なぜ50年もしてから、こうして発掘公開するのか。それならば、いまよくレンタル・ショップで見かける<発掘DVD>でも、いいではないか。

ちょうど50年前のスウェーデン映画といえば、「野いちご」や「沈黙」などの巨匠イングマール・ベルイマンの枯淡な作風が大変に衝撃だった時代。

だから、とくに北欧の映画というのは、孤高で端正な知的作品が多いのか、という強い憧れを抱いたものだった。

同時に、60年代には、ジャック・タチの「ぼくの伯父さん」や、ルイ・マルの「地下鉄のザジ」のような、コミックな子供目線の作品も人気があった。

おそらく、この作品も、その時代で人気のあった少女コミックだったろうが、日本で公開するには、リスクも多くて見送られたのだろう。

アストリッド・リングレーンの原作では「ロッタちゃん」のいくつかが日本でも公開されて、そのオフビートな面白さは、それなりに印象に残ったものだ。

ロッタちゃんほど意地悪ではないが、この映画のチョルべンという、やや肥満型の少女もユニーク。いわゆる西洋人形とは異端にいるようなメタボな個性派だ。

ストックホルムよりは、やや東に位置するこの映画の舞台になったウミガラス島は、おそらくは保養地なのだろうが、チョルペンの家族たちは日常的に生活している。

裕福ではないが、大きな老犬の<水夫さん>と仲良しの少女は、アザラシともよく泳いで遊んでいる。そこにキツネも加わって、ウサギが殺された事件で島は騒々しくなる。

要するに少女漫画の世界なのだろうが、多くの動物たちや、善良な大人たちも、この小さな島の中で大騒ぎして暮らしているのが、50年しても何も変わっていない。そこがこのメルヘン世界の魅力なのだろう・・・が。

情報過多な現代とはまったく別の自然環境でも、少女たちは幸福な日々を送っているという、そのノホホンとした時代回帰した世界も、タマにはいいか。というお好きな方は、どうぞ。

 

■ファールで粘ってのプッシュバントだが、ファーストの正面。

●7月19日より、新宿武蔵野館などでロードショー 


●『私の男』と情欲に溺れて行く氷の微笑。

2014年04月20日 | Weblog

4月18日(金)13-00 京橋<テアトル試写室>

M-040『私の男』(2014)日活、文藝春秋、キリシマ一九四五、ハピネット

監督・熊切和嘉 主演・浅野忠信 <129分> 提供・日活映画配給グループ ★★★☆☆

真っ黒のスクリーンに、ギシギシっという音が聞こえ、次第にスクリーンに流氷の氷原が見えてくる。

北海道、奥尻島。大地震による津波で多くの家が流されて、ひとり救出された少女ハナは、遠い親戚だと名乗り出た浅野と暮らすことになる。

まるで親子のように年齢の離れたふたりだが、やがて少女が高校生になった頃のふたりは「男とおんな」の秘められた生活が孤立していた。

4年もの歳月が過ぎても、その不思議な関係にあるふたりを危惧して、遠縁の男がハナを説得しようとしたが、流氷の流れに姿を消してしまう。

直木賞受賞の桜庭一樹の原作を、「夏の終り」の熊切監督が演出したこの映画は、隔絶された北の厳寒に住む男と少女の、異様なラブストーリー。

凍てつく流氷のロケーションが、いかにも閉ざされた人間の情欲を凍らせ、独特のエモーションに生きざるを得ないような人間の哀しみを抉って行くのだ。

大島渚監督の「愛のコリーダ」に出演した藤竜也が、この孤立したふたりに接近するという設定が、いかにも情欲のミステリーのムードを深めて行く。

しかし、その男の凍死事件のあとに、ふたりが上京してから、その足跡を追って来た警察官が登場。映画は氷結の世界から東京貧民の泥沼生活となる。

おそらく原作では、その地域の落差がふたりの心情を濃密に書き込まれているのだろうが、映画の方は、どうも後半は「事件もの」の展開に見えてくるのが惜しまれる。

浅野は「雪国」の池部良のように、いや「飢餓海峡」の三国連太郎のように、情欲と犯罪に押し流されて行く男の、放心したような狂気を滲ませて好演。

しかしタイトルのように、主役は少女からファム・ファタールに変身していく二階堂ふみの、まさに氷結された流氷のような冷たくも激しい欲情のモンスターぶりだろう。

男が、この転落していく情欲の地獄に、次第に自我を狂わせていくのに、その表情を冷たく嘲笑して生きて行くラストの「氷の微笑」のハナは、肌寒い。

 

■痛烈なセカンドゴロを、野手が弾いてしまい、ヒット。

●6月14日より、新宿ピカデリー他で全国ロードショー 


●『オールド・ボーイ』は地獄の浦島太郎なのか。

2014年04月17日 | Weblog

4月15日(火)13-00 六本木<アスミック・エース試写室>

M-039『オールド・ボーイ』Oldboy (2013) vertigo entertainment / good universe

監督・スパイク・リー 主演・ジョシュ・ブローリン <103分> 配給・ブロードメディア・スタジオ ★★☆☆☆

もともとは土屋ガロンのコミックを韓国で2004年にパク・チャヌク監督が映画化してヒット。これはそのリメイク版だ。

ニューオーリンズ。広告代理店のジョシュは辣腕のエージェントだが、かなり悪どい商法でクライアントを牛耳るイヤな奴。アルコール中毒で無軌道だ。

1993年のこと。ある夜に彼はトラブルを起こして泥酔して、路上で暴力沙汰で起こし、気がついたら殺風景で汚れた個室に監禁されていた。

なにが何やらワケのわからない状態だが、毎日のように、餃子とウォッカの小瓶と下着を提供されて、20年が過ぎてしまった。

気がつくと、2013年の現代に、野原に放置されたトランクから、なぜか解放されたのだ。まさにアメリカの「浦島太郎」のようだ。

離婚した妻は殺され、ひとり娘の行方を探して、実に奇怪で謎めいた現実の中を、彼は悪夢のように徘徊しつつ、多くの謎を探って行く。

ま、このような話は、よくフィルム・ノワールな映画に登場する設定なのだが、やはりスパイク・リーの語り口は不気味で無骨で、かなり独善的な展開。

あの名作「25時」や「インサイド・マン」の頃のエッジの効いたシャープな演出の切れ味は、まるで映画そのもののように過去に変色したようだ。

イカガワしい餃子配送組織を探し、サミュエル・L・ジャクスンを脅して、謎めいたエリザベス・オルセンを脅して、自分の過去を封印した真相に迫って行く。

たしかにコミックの画調でなら、この残虐にして奔放なストーリー展開も面白いかも知れないが、どうもジョッシュのキャラが一本調子で面白くないのだ。

もしタランティーノのような奇想天外でユーモアのあるタッチなら興味も湧くだろうが、この作品の暗さと残虐さには、後半は閉口してくる。

しかもせっかく追いつめた真犯人がシャールト・コプリーでは、20年もの昔からこの事件を引きずっているような大物には見えないのも引っかかる。

だって、20年の空白から戻って、すぐに<スマホ>を巧妙に扱える男などいないだろう。なんて、つまらないことも気になってしまった。

 

■大きなライトフライだが、結局はファールラインでチャッチ。

●6月、新宿バルト9などでロードショー 


●『アメイジング・スパイダーマン2』in3Dの、めまいを起こしそうな飛遊についていけるか。

2014年04月15日 | Weblog

4月9日(水)13-00 神谷町<ソニー・ピクチャーズ試写室>

M-038『アメイジング・スパイダーマン2』in 3D The Amazing spider-man 2 (2014) columbia pictures / marvel entertainment

監督・マーク・ウェブ 主演・アンドリュー・ガーフィールド <143分> 配給・ソニー・ピクチャーズ・エンターテイメント ★★★☆

新しいスパイダーマンの誕生秘話と、父親であった科学者が子供を隣人に預けて妻と共に亡命したのが、この新シリーズの第1作だった。

この2作目でも、冒頭で父親のキャンベル・スコットが亡命中にスパイと共にプライベイト・ジェットで事故に遭うシーンが復習として紹介される。

そうでもしないと、このようにマーヴェル・コミックの映画化ラッシュで、それぞれのキャラクターの判別もつかなくなってしまう。

今回は、ニューヨークの守護神となったスパイダーマン青年が、学校のガールフレンドとの交際の合間にも、外敵と空中戦を展開するテンポが凄まじくスピーディ。

こうなると、スーパーマンとキャプテン・アメリカと、バットマン、あのダークナイトとの区別がつかなくなるが、こちらは一番の年少組であって、その若さが魅力かも。

政治テロやエイリアンやトランスファーマー・ロボットたちと戦うわけではなく、企業秘密に関して昔のクラスメイトとの確執がテーマの底になっているのも、これが青春映画だから。

まるで<ワン・ダイレクション>のメンバーのような横顔のアンドリューも、これなりの親しみがあって、いまのアメリカンなヤングの好みのマスクなのだろう。

彼らのハイスクールの卒業式の日。プルトニュームの流出のトラブルから、蜘蛛の毒素を秘蔵するオズコーブ社のジェイミー・フォックスを救ったことが事件の発端。

その事件の際にジェイミーは、うなぎの毒素に感染してしまい、仮死状態だった彼は、うなぎの強烈な電磁波によって怪物<エレクトロ>として復活してテロ活動をする。

アカデミー賞受賞の名優だが、それからのジェイミーは完全に怪獣に変身となり、お気の毒にも、この作品では別人の姿となって悪事を繰り返して暴れ回るのだ。

10年前には、スパイダーマンがマンハッタンの高層ビルの間を飛びまわるのが快感だったが、いまではそのスピードも増大して、もはや快感ではなくなった。

結局、ゲームパソコンで進化したコミック・ファンには、もうこのスピード感でないと追随できないご時世なのだろうか。ちょいと嘆かわしい。

 

■センターオーバーの飛球が飛びすぎてフェンスに当たり、返球でセカンドアウト。

●4月25日より、全国GWロードショー 


●『ラスト べガス』は、名優ジジイたちの「ハングオーバー」だぜ!!!

2014年04月12日 | Weblog

4月8日(火)13-00 九段下<角川映画試写室>

M-037『ラスト べガス』Last Vegas (2013) CBS films / good universe / laurence mark production

監督・ジョン・タートルトーブ 主演・マイケル・ダグラス <105分> 配給・KADOKAWA ★★★☆

善き40年代の、あの戦後のブルックリンで不良少年仲間だった、4人も今や70歳。  

満年独身だったマイケルが、いい歳をして結婚することになり、その仲間たちに久しぶりに集まるべく声をかけた。

しかしモーガン・フリーマンはクスリ漬けの老体で孫の世話をしていて、ケビン・クラインも目の不自由なご老体。

おまけにロバート・デ・ニーロは妻を最近亡くしたのに、マイケルが葬式にも来なかったことを根にもっていて不愉快なのだ。

それでも、お互いに先の短い人生なのだから、とにかく晩婚のバッチェラー・パーティに、ラスヴェガスで会うことになった。

要するに、ジジイたちの「ハング・オーバー」である。ま、「おかしな二人・2」の4人版という次第。しかも全員オスカー名優であるから豪華。

この4人の老練ハリウッド名優たちの豪華なヴェガスの御乱交ぶりにつき合う訳だから、いちいち文句を言うのも野暮な話である。

よくある「花嫁のパパ」のような展開には、とくに新味はないが、この老練な4人の名優たちの和気藹々な馬鹿騒ぎにおつきあいの時間は、一応は愉しい。

ウディ・アレンの「サンシャイン・ボーイズ」でのピーター・フォークとの確執ほど深刻な亀裂はないが、デ・ニーロも徐々に柔らかくなる。

というのも、ダグラスが実は昔デ・ニーロのカミサンと恋をしていて、その腐れ縁が延長戦になっていた、という次第。

それもバーのサルーン・シンガーのメアリー・スティーンバーゲンが、仲介になって、結婚式は急転換。これも年寄りの酩酊でいいではないか。

とにかくこれだけのキャリアの名優たちの「お遊びコメディ」だ。まさか続編はないだろうから、いま見られるだけでも感謝!!!としよう。

 

■ボテボテのセカンドゴロがベースに当たってイレギュラーヒット。

●5月24日より、新宿角川シネマなどで、ロードショー 


●『パークランド/ケネディ暗殺、真実の4日間』あのときの緊急ERの迫真の混乱。

2014年04月09日 | Weblog

4月7日(月)13-00 六本木<アスミック・エース試写室>

M-036『パークランド/ケネディ暗殺、真実の4日間』Parkland (2013) exclusive media entertainment LLC

監督・ピーター・ランデルスマン 制作・トム・ハンクス <93分> 提供・カルチャー・パブリシャーズ、★★★☆☆

あの1963年11月22日のダラス。何度も映画化されたJFKの暗殺は、結局はFBIとアメリカ政府によって、真相は封印されている。

政治的な暗殺の背景は、「ダラスの熱い日」や、実行グループの行動を描いた「フラッシュバック」。そして「ジャック・ルビー」まで。

多くの関連作品は作られ、オリバー・ストーンの「JFK」は、かなり関係事実を収集した力作だった。

ところが、この作品は、「パークランド・メモリアル・ホスピタル」という、ダラスの総合病院の当日と、その4日間の混乱ぶりを再現している。

せっかくだからプロデューサーのトム・ハンクスが、病院の緊急外科の専門医師でも演じていれば、もっと迫真のドラマになったかもしれない。

つまり、当日、病院に担ぎ込まれた大統領を処置したERたちの混乱と動揺は、かなりリアルで悲壮だが、人間ドラマにまでは突っ込んでいないのが、どうも軽いのだ。

看護婦主任のマーシャ・ゲイ・ハーディンが、大統領絶命の瞬間に、自分のロッカーから十字架を出して来たのが、とても印象的だった。あとは大混乱。

おまけに容疑者として検挙されたオズワルドが、ジャック・ルビーに撃たれて、また同じ手術室に運ばれてくるというのも、事実とはいえ、皮肉な現実だ。

ドラマは一種の団体劇となっていて、狙撃の瞬間を8mmカメラで撮っていたポール・ジアマッティが、フィルムの版権をFBIに委ねるという経緯も複雑な背景となる。

たしかに、当日のパークランド病院の混乱は予期出来ないパニックだったろうが、セミ・ドキュメンタリー映画として加工できるのは、これが限界だろう。

ひとり、ビリー・ボブ・ソーントンのFBI捜査官が、妙にリアリティがあって、いい味を出していたのは、さすがだ。

しかし、まあ、これが、歴史的な真実の再現ドラマとしての宿命であり、ルールなのだろう。

 

■ショート後方に上がった、これこそがご当地テキサスヒット。

●6月28日より、新宿武蔵野館などでロードショー 


●『キャプテン・アメリカ☆ウィンター・ソルジャー』豪放なCGコミックの大暴れ。

2014年04月06日 | Weblog

4月3日(木)12-45 目黒<ウォルト・ディズニー映画試写室>

M-035『キャプテン・アメリカ☆ウィンター・ソルジャー』Captain America / Winter Soldier (2014) marvel studios

監督・アンソニー&ジョー・ルッソ 主演・クリス・エヴァンス <136分> 配給・ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン ★★★☆

どうもいまだに、このマーヴェル・コミックスの「マイティ・ソー」や「アヴェンジャーズ」「アイアン・マン」などの関連がわからない。

ということは、わたしには「マーヴェル・コミックス」を語る資格はない。ということはわかっているのに、またこの新作を見にでかけた。

これは、単純に、魔法使いや、怪獣や亡霊やゾンビや異次元エイリアンは出ない。という単純な理由であって、いわゆるアメリカン・コミックの原点らしい、ということ。

ま、少年時代に夢見たスーパー・ヒーローの大活躍が見られることと、あのロバート・レッドフォードの悪役ぶりが見たかったからだ。

「シールズ」と名乗る国際平和維持組織の防衛システムの管理下にある職員「キャプテン・アメリカ」は、開発中の巨大空中空母の監視強化に疑問を持っていた。

ところが<ウィンター・ソルジャー>と名乗る強敵が現れ、そのスナイパーは大戦中に戦死した筈の友人にそっくりだった。

そしてその背後には、シールズの幹部であるレッドフォードの存在があり、長官のサミュエル・L・ジャクソンとも対立するやっかいな存在だった。

しかも謎めいたブラック・ウィドーであるスカーレット・ヨハンソンの接近も、どうやらダブル・スパイの陰謀めいていて、この多角的な相関関係が、また、ややこしい。

円盤に似た盾を自在に駆使して戦うクリスの勇姿は、ローマ時代のスパルタカスの再来なのだろうが、この円盤の小道具が使い勝手が実に便利でいい。

なぜか、失われた筈なのに、その盾はまるで忠犬のように、キャプテン・アメリカを救うのだ。いかにも好都合な展開が続く。ま、いいではないか。

すべてはそれも、もとはといえば「アメリカン・コミック」なのだから、こちらがややこしく悩む必要はない。この派手なCGアクションを楽しめばいいのだ。

 

■フルカウントから狙った大きなセンター・フライだが、フェンスいっぱいで失速。

●4月19日より、全国ロードショー

4月3日(木)12-45 目黒<ウォルト・ディズニー映画試写室>

M-035『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』Captain America / Winter Soldier (2014) marvel studios

監督・アンソニー&ジョー・ルッソ 主演・クリス・エヴァンス <136分> 配給・ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン ★★★☆

どうもいまだに、このマーヴェル・コミックスの「マイティ・ソー」や「アヴェンジャーズ」「アイアン・マン」などの関連がわからない。

ということは、わたしには「マーヴェル・コミックス」を語る資格はない。ということはわかっているのに、またこの新作を見にでかけた。

これは、単純に、魔法使いや、怪獣や亡霊やゾンビや異次元エイリアンは出ない。という単純な理由であって、いわゆるアメリカン・コミックの原点らしい、ということ。

ま、少年時代に夢見たスーパー・ヒーローの大活躍が見られることと、あのロバート・レッドフォードの悪役ぶりが見たかったからだ。

「シールズ」と名乗る国際平和維持組織の防衛システムの管理下にある職員「キャプテン・アメリカ」は、開発中の巨大空中空母の監視強化に疑問を持っていた。

ところが<ウィンター・ソルジャー>と名乗る強敵が現れ、そのスナイパーは大戦中に戦死した筈の友人にそっくりだった。

そしてその背後には、シールズの幹部であるレッドフォードの存在があり、長官のサミュエル・L・ジャクソンとも対立するやっかいな存在だった。

しかも謎めいたブラック・ウィドーであるスカーレット・ヨハンソンの接近も、どうやらダブル・スパイの陰謀めいていて、この多角的な相関関係が、また、ややこしい。

円盤に似た盾を自在に駆使して戦うクリスの勇姿は、ローマ時代のスパルタカスの再来なのだろうが、この円盤の小道具が使い勝手が実に便利でいい。

なぜか、失われた筈なのに、その盾はまるで忠犬のように、キャプテン・アメリカを救うのだ。いかにも好都合な展開が続く。ま、いいではないか。

すべてはそれも、もとはといえば「アメリカン・コミック」なのだから、こちらがややこしく悩む必要はない。この派手なCGアクションを楽しめばいいのだ。

 

■フルカウントから狙った大きなセンター・フライだが、フェンスいっぱいで失速。

●4月19日より、全国ロードショー


●『複製された男』はシュールな映像美のダブル・ノワールだ。

2014年04月04日 | Weblog

4月2日(水)13-30 六本木シネマートB-2試写室

M-034『複製された男』Enemy (the Double) Rhambus Media, roxbury pictures. canada.

監督・ドゥニ・ヴィルヌーヴ 主演・ジェイク・ギレンホール <90分> 配給・クロックワークス ★★★☆☆☆

モノトーンな映像で、非常にクリエイティブで独特の映画術に貫かれた、ひどくダークでエキセントリックな異色のフィルム・ノワールだ。

ジェイクはモントリオールの大学で、退屈な歴史の講師をしているが、身重の妻とも怠惰な生活の日々で生彩がない。

友人の勧めで見たビデオ映画に、ふと、自分にそっくりな俳優が出ているので、気になって、その男の別の出演作品も見てみて驚いた。

年周りも風采も声までも、まったく自分と同じ男が街にいることに悩み、ジェイクはその俳優のキャスティング事務所を突き止めて行ってみた。

守衛の男も、ジェイクを俳優と間違えてしまい、後日に俳優のアパートに浸入したら、クローゼットの衣類もぴったりで、恋人までも間違えてしまった。

そして、ドラマは、この瓜二つの男との奇妙な出会いと、スワッピング・ライフの展開になり、まったく予期しない悪夢の生活に転落していくのだ。

ジョン・フランケンハイマー監督の「セコンド」は、秘密病院の整形手術で、自分の風貌を若返らせて運命の地獄に落ちて行くが、あのケースによく似ている。

ただ、つい先日見た「プリズナーズ」でも優れた映像で魅了したドゥニ監督は、このノーベル賞受賞作家ジョゼ・サラマーゴの不思議な原作を、より鮮烈に描いて見せる。

たしかにヒッチコックの「白い恐怖」や「めまい」のような、意識下の倒錯を描いたテーマというのは、実は見ている映画そのものが、まったくの「思い込み」なのだと察知させる。

それは、ストーリーの随所に登場する巨大なスパイダーの姿が、この作品の<ミステリアスな鍵>なのであって、デヴィッド・リンチや、クローネンバーグの作品に共通した異様な世界に落下するのだ。

講師のジェイクは、俳優になりすまして、その恋人とも情事を重ねて行き、事態はロナルド・コールマンの「二重生活」のように、オセロのような地獄になる。

ま、当然のように、このシュールな映像と<蜘蛛>の謎はかなり異色で、好みのケースになるが、わたしは魅了され、かなり面白かった。

 

■ライトのポールのギリギリでフェンス上段に当たるスリーベース。

●7月18日より、TOHOシネマズシャンテ他でロードショー