細越麟太郎 MOVIE DIARY

最新の映画情報や批評を掲載します。

●『パリ連続殺人事件*殺人鬼に罠をかけろ』のメグレ警部には、もっと会いたかった。

2021年01月30日 | Weblog
●1月28日(木)21-30 ニコタマ・サンセット傑作座
OV-27-24『パリ連続殺人事件*殺人鬼に罠をかけろ』"Maigret tend in Pieje" (1958) Intermondia Film/ Jolly Film. France
監督・ジャン・ドラノワ 原作・ジョルジュ・シムノン 主演・ジャン・ギャバン、ジャン・ドザイ <モノクロ・スタンダード・120分>VHS
このシムノン原作の<メグレ警視>シリーズは、ジャン・ギャバンの主演が好評で、「サン・フィアクル殺人事件」とこの2本が、邦訳ビデオ化されていた。
フランスでは、もちろん、このシリーズは大ヒットして、もっと数本は製作公開されていたらしいが、日本では、たしかこの1本だけが劇場公開。
50年代のパリ。オペラ座の裏通りの辺りに広がる旧市街は、住居の建物の1階が道路になっていて、よく映画にも出て来たが、とにかく迷路の街なのだ。
その暗い裏通りで、夜な夜な若い女性だけの連続殺人事件が頻発して、パリ市警の古参刑事のメグレが、パイプタバコを噴かして犯人捜査をしていくシリーズ。
長い刃物による背後からの刺殺で、物取りでも、暴行レイプでもなく、突然に背後から刺殺して逃走するという犯行で、メグレは近所に出没する実行犯を捜査していく。
犯行には、その界隈にある肉屋の長く刀剣のような刃物が使われていることから、その肉屋のオヤジなども参考人として尋問されるが、背景には女性に対する憎悪が潜む。
という展開で、メグレは界隈のアパートの最上階に住んでいる若いアーティストと、その妻とそこに同居している老婆も、事件の参考人として呼ぶ事にした。
このケースは、同じギャバン主演でジュリアン・デュヴィヴィエ監督55年作品「殺意の瞬間」にも似ているが、殺人の原因になっているのが高齢老母とのコンプレックス。
あの「刑事コロンボ」なども、シリーズ化されて当時は評判になったが、どうも母親と若妻との軋轢にクレイジーになる息子の家庭内事件は、当時は多かった。
それにしても、この時期のジャン・ギャバン作品は、このようなファミリー・クライシスを背景にしつつも、実に味のある推理洞察を見せて、実に味わい深い。

■左中間に深々と転がるゴロの妙打。 ★★★☆☆☆
●アートデイズ・デジタル・メディオ・ラボ配給VHS

●『ラスベガス・ストーリー*犯罪都市』に滲む50年代B級クライムの蜃気楼。

2021年01月26日 | Weblog
●1月27日(月)21-30 ニコタマ・サンセット傑作座<自宅VHS鑑賞>
OV-24-22『ラスベガス・ストーリー<犯罪都市>』"The Las Vegas Story"(1951)RKO Radio Pictures (VHS)
監督・ロバート・スティーブンソン 主演・ジェーン・ラッセル、ビクター・マチュア <スタンダード・モノクロ・88分>FMS
これぞ、50年代ハリウッド・B級プログラム・ピクチャー・・・という、ある種、当時の<低俗文化的な遺産>、のような典型的な娯楽作品。
当時は<プログラム・ピクチャー>といって、まったくアカデミー賞などは関係ない、二本立て興行用の、まさに他愛のない時間つぶしの低俗映画なのだが。
わたしは、まだ中学生頃だったが、近所の洋画専門館の宣伝の先輩との日常的なおつきあいで、事務所の裏口からフリーで入れてもらった時期に見た作品。
たしかこれも、<刺身のつま>のような前座作品で、メインの作品は「ゼンダ城の虜」や「キング・ソロモン」のようなカラー大作だったが。
しかし、わたしなどは、本当にハリウッド映画が好きになってしまったのは、このような何の足しにも記憶にもならない<トラッシュ・ムービー>だったのだ。
まだ「オーシャンズ11」などが生まれる前の、戦後間もない頃に見た、はじめてのラスヴェガスという風景は、高層ビルのニューヨークとは違った<アメリカ>だった。
座敷で花札を振るヤクザ映画とは違って、こうして初めて見る砂漠の都市ラスヴェガスの輝きは、われわれ少年の目には、まさに<賭博の蜃気楼>のような魅力に見えた。
「サムソンとデリラ」で人気ものだったビクター・マチュアは、いつものように眠そうな目で、この遊び人の放蕩都市を警備している、要するに<深夜のシェリフ>。
多くの賭博場にはギャンブラーたちが日夜、大金を賭けては人生の勝負に出て、多くはイカサマ賭博の餌食になって、砂漠の蜃気楼となって消えて行く。
ジェーンは元歌手だが、夢に破れてヴェガスに戻って来て、以前の恋人だった古参のシェルフ、ビクターと再会して、また犯罪事件に巻き込まれて行くのは、定番だが。
なぜか名曲「スターダスト」の作曲で有名なホーギー・カーマイケルが、クラブシンガーとして演技も達者な姿を見せているが、これぞ<50年代>の至宝なのだった。

■ボテボテのピッチャーゴロだが、センターへ抜けて行く妙打。 ★★★☆
●PFMサプライ・VHS

●ミスター・ロバーツ<ヘンリー・フォンダ>への年賀状

2021年01月24日 | Weblog

    孤高の苦笑 <ヘンリー・フォンダの印象>     


 たしか10年ほど前のこと、『黄昏』の監督マーク・ライデルが、アクターズ・スタジオ
L. A.の講師として来日して、青山学院の講堂で演出指導と講演したのを聞いた事がある。
 作品の演出については多くを語らなかったが、この作品にヘンリー・フォンダとキャサ
リン・ヘプバーンが共演したことが、まるで白日夢のようだった、と当時を偲んだ。
 キャサリンはハリウッドを代表する名女優で、アカデミー賞を4回も受賞しているし、
ヘンリー・フォンダは80本も越える映画に出演したハリウッドの至宝だ。「そのふたり
が目の前にいるだけで奇跡であって、とても若輩者のわたしが演出するなどは、恐れ多く
て出来なかった」と、ライデル監督は告白したものだ。
 なぜか、その二人は共演作品はなく、この作品の本読みの瞬間が初対面。しかし人間国
宝のような名優の姿に、よけいな演技の注文は必要ないだろう。
 キャサリンはその初日に、長年の朋友だったスペンサー・トレイシーが生前に愛用して
いた帽子を持って来て「これを被ってちょうだい」と、ヘンリー・フォンダにプレゼント
したという。だから、先輩のベージュのフェルト帽は、ドラマの中でいつもフォンダは被
っていたが、これは尊敬するスペンサーへの敬意の表れでもあり、どこかボケて珍しくユ
ーモラスな演技は、おそらく先達へのオマージュがあったのだろう。
 もしかしたらキャサリンも、その従順で剽軽(ひょうきん)なフォンダの姿に、生涯愛
したスペンサーの面影を投影していたのかもしれない。
 その効果があってか、フォンダは長い俳優人生で、なぜか無縁だったアカデミー主演男
優賞にノミネートされ、遅すぎたが初めての受賞をしたが、当日の受賞会場には病身で出
席できなかった。そして受賞の朗報をみやげに半年後の82年8月に他界した。
 作品の企画を提案したのは、もともとは不肖の娘ジェーン・フォンダだったが、ラスト
で父と娘が和解するシーンでは、「撮影中スタッフみんなが泣いてしまった」という。
 ヘンリー・フォンダの出演した映画は、幸運にもほとんど見ているが、印象としては、
とても誠実で、陽気で、保守的なアメリカの良心、その化身だと感じていた。
 『牛泥棒』(43)では、町の住民たちが牛泥棒容疑者のリンチをしようとする狂気に、
最後まで抵抗して、事件の真実と民主主義の協議性を抗議していたし、「十二人の怒れる
男」(57)でも同様に、殺人容疑の少年の無実にこだわって疑問を主張。制作も関わったこ
の作品は、シドニー・ルメット監督の映画デヴューとなり、大きな評価を得た。
 監督とは次作の『女優志願』(58)でも組んだが、高名なブロードウェイ演出家を演じ、
泥酔した新人女優とコトの後に、そのボーイフレンドに雪の降るセントラル・パークで、
己の軽率な行為を詫びるシーンの、あの雪を被ったヘンリー・フォンダの恥じ入る表情は、
彼のキャリアでも最高の演技だったと思う。 
 当たり役の『ミスター・ロバーツ』(55)でも、太平洋戦争時の軍用備品配送船の仕事に
不甲斐なさを持つ愛国者で、最前線への再三の志願をして、直後に直撃弾で死亡した。
 若きリンカーンも演じたが、『野望の系列』(61)では国務長官候補や『最後の勝利者』
(64)では大統領候補を演じて、『未知への飛行』(64)で遂にアメリカ大統領役にも昇格。
いかにも実直な愛国者のイメージが定着した。
 とくに『胸に輝く星』(57)での、老練なシェリフがリタイアする姿は絶品だった。
 『荒野の決闘』(46)のワイアット・アープも伝説の名物保安官だが、アフターシェーブ
・ローションの香りをつけて、クレメンタイン嬢と優雅にダンスをした。
 あの長い脚のスキッとしたラインはフォンダの魅力であって、保安官事務所の前の板張
りの廊下で、椅子から脚を投げ出して、柱でバランスをとっているポーズは絶品だった。
 彼の親友のジェームズ・スチュワートは、『馬上の二人』(61)でワイアット・アープを
演じたとき、あのフォンダのポーズを真似していたが、共演のリチャード・ウィドマーク
はそれを見て苦笑していた。クリント・イーストウッドも常にフォンダを尊敬していた。
 まえに高倉健さんにお会いしたときに、一番好きな俳優さんは?という質問に、即座に
「ヘンリー・フォンダですね」という返事が出た。
 「とくに『ミスター・ロバーツ』が好きだな。立ち姿がいい。あの役はオレもやってみ
たいす」と照れ笑いした。横尾忠則さんが監修した『憂魂・高倉健』という写真集には、
ちゃんとヘンリー・フォンダの写真も1ページ分、掲載されている。
 合作映画出演の多い高倉健さんは、ロバート・アルドリッチ監督の『燃える戦場』(70)
で、憧れのヘンリー・フォンダと共演しているが、残念ながら「絡み」のシーンはない。
 もしかしたら、尊敬する俳優と同じ作品にタイトルされるという、ただその一点で、出
演のオファーを受けたのかもしれない。
 『ミスター・ロバーツ』はブロードウェイのお芝居で、映画俳優だったヘンリー・フォ
ンダは初めて舞台に立ち、そのステージは4年ものヒットとなり、ハリウッドとは『アパ
ッチ砦』から7年ものブランクがあり、後に1955年の映画化でも主演したが、恩師で
監督のジョン・フォードと役作りのことで口論となり、怒った巨匠はメガホンを途中で捨
てて、その後は、「哀愁」などのマーヴィン・ルロイが演出を担当した。
 ジョン・フォード監督とは「アパッチ砦」(48)「怒りの葡萄」(40)「荒野の決闘」(46)
などと作品が多くて、彼らの関係は強固な子弟同士に似た厚いものだった筈だが、恐らく
4年ものブロードウェイ・ステージで得たフォンダの役作りは、いかに恩師で巨匠であっ
ても、譲れないものがあったに違いなく、撮影の途中で突然に決別したのだ。
 作品はフォードらしく、コメディ・タッチで演出されていて、フォンダの上官役はジェ
ームズ・キャグニーで、下士官役のジャック・レモンがアカデミー賞を受賞しているが、
主役のフォンダの演技はブロードウェイのように、真面目な士官の役を貫いて演じて、バ
ランスはチグハグな印象を受けた。
 その結果、作品も主演のフォンダも、アカデミー賞にはノミネートされなかった。
 当時は、ジョン・フォード監督の病気降板説が流れたが、監督はすぐに一番の舎弟とも
いえるジョン・ウェインと『捜索者』(56)の撮影に入っているから、やはりフォンダとは、
決定的な確執のトラブルがあったろうと思われる。その後の再会はなかった。
 それを契機にしてヘンリー・フォンダの俳優人生は変わった。
 変えたのは、あのアルフレッド・ヒッチコック監督である。
 『間違られた男』(56)はヒッチコックとしても珍しいタイプのニューロティックなフ
ィルム・ノワールで、フォンダはマンハッタンでバンドのベーシストの役だが、ある金融
窃盗事件の容疑で、自宅の前で帰宅時に不当検挙された。
 実行犯に似ていた為だが、その衝撃のために妻は重度のノイローゼになって人格を失う。
 ラストで逮捕された真犯人の男に「お前は、俺のワイフに何をしたんだ」と吐く。その
時のフォンダの表情には怒りと絶望があった。初めて見た、深い翳りの表情だった。
 それからは善良だったイメージを捨てて、なぜか『ワーロック』(59)や『ウェスタン』
(68)のような癖のある悪役も、敢えて演じるようになった。
 『刑事マディガン』(67)や『絞殺魔』(68)、『エスピオナージ』(73)での、あの冷たい
無表情な居直りはどうだ。
 『黄昏』の原題は<輝きの湖>とでも言うが、老父ノーマン・セイヤーは、生涯俳優
ヘンリー・フォンダの孤高な人生の苦い集大成であり、映像の遺言だったのだ。




 



●『プードルスプリング』は、マーロウ探偵の亡霊が活躍だ。

2021年01月22日 | Weblog
●1月19日(火)21-00 ニコタマ・サンセット傑作座
OV-019-17『プードルスプリングス』"Poodlesprings" <1998> HBO Films. Universal Pictures.
製作・シドニー・ポラック 監督・ボブ・ラフェルソン 主演・ジェームズ・カーン、ブライアン・コックス<103分>
あのフィリップ・マーロウ探偵を創作したレイモンド・チャンドラーが、原案を残していたストーリーを、ロバート・B・パーカーが書き上げた探偵もの。
というだけで、マーロウ・ファンには悶絶の名探偵絶品ストーリーを、「コンドル」や「追憶」のシドニー・ポラックがプロデュース。しかし劇場未公開。
名作「ファイブ・イージー・ピーセス」のボブ・ラフェルソンが監督した、というだけで鳥肌ものなのだが、ハリウッド崩壊の時代でテレビ向けとなった異色作品だ。
マーロウ探偵のイメージを踏襲した、B・パーカーの探偵小説は、<スペンサー探偵>のシリーズとして、早川書房からハードカバーで40冊ほども発行された。
当時、チャンドラー、ロス・マクドナルドの、私立探偵ものに熱中していた当方は、そのすべてを買いあさり、読破して、来日したパーカーにも会ったほどの熱狂もの。
2000年直前の世紀末には、通勤サラリーマンで、よく海外出張もしていた幸運で、毎日のように彼のスペンサー小説にはお世話になった、という時代だった。
この作品は、その時代の凋落の最後に製作された、チャンドラー系のウェストコースト・ディテクティブもので、結局は劇場公開されずに、レンタルビデオでの登場。
ロスのダウンタウンで、しがない私立探偵として、家出や離婚騒動の捜査はお断りしていたが、ある日、友人の探偵が電話中に射殺されて、マーロウが事件の乗り出した。
という、毎度おなじみのプロセスなのだが、マーロウは秘書の美女に惚れ込んで結婚したら、彼女が富豪の令嬢で、<プードルスプリング>に新居移転ということになった。
だいたい、しがない探偵は、ダウンタウンの裏通りの安アパートに1部屋のオフィスを構えるのだが、彼らはパームスプリングのような、陽光の豪邸に住みついた。
結局は、そのブルジョアなファミリーに翻弄されて、あの「大いなる眠り」と似たような大家族事件に巻き込まれて行くが、一応はマーロウ探偵もののスタンスは保持。

■左中間へのゴロを野手がモタツく間にツーベース。 ★★★☆☆
●レンタルDVDのコピー鑑賞。


●『フランキー・ザ・フライ』は、デニス・ホッパーの自画像のような軽妙洒脱なアウトロー。

2021年01月17日 | Weblog
●1月16日(土)21-30 ニコタマ・サンセット傑作座
OV-16-14『フランキー・ザ・フライ』"The Last Days of Frankie The Fly" (1997) Nu Image, Inc. KSS Film Inc. KSVB-23254
監督・ピーター・マークル 主演・デニス・ホッパー、キーファー・サザーランド  <カラー・ワイド・ステレオ・VHS・96分>配給・ケイエスエス
たしか98年の頃だったか、彼自身の写真展のゲストとして来日していたデニス・ホッパーに会う機会があって、狭い、たしか麻布だったか、会場に行ってみた。
あの「イージー・ライダー」のプログラムを見せたら、とても喜んで隅から隅まで見ていたので、プレゼントしたら、少年のような笑顔を見せたものだ。
ハリウッドで成功して、ビバリーヒルズに自宅を持てるのは、ほんの一握りのラッキーなひとで、ほとんどはサンセット大通りの南の坂道から堕ちて行く。
この主人公の<フランキー>も、そのひとりだが、映画業界は諦めて、ロスの南にあるヤクザな倉庫街で、ボスのお抱え運転手兼雑用係をしているのだ。
<ザ・フライ>というのは、飛んでいるひとではなく、ゴミに群がる<ハエ>のことで、自分のプライドや野望は捨てて、ひたすらオーナーの言う事に従っている。
たしかにデニス・ホッパーという俳優は、5回もの離婚を繰り返し、あの「ジャイアンツ」では、ジェームズ・ディーンの友人だったので、チョイ役に出演。
数えたことはないが、「ブルーベルベット」「スピード」「地獄の黙示録」などにも出演していて、7、80年代には、ニュー・シネマの常連だったのだ。
たしかに、ほとんどはチョイ役だったが、いつも印象的な役に出ていたので、わたしなどは、まさにクラスメイトの旧友のような親しみを感じていたものだ。
その彼が主演したこの役でも、ギャングのボスのお抱えドライバー兼雑用係で、ホットドッグを買いに行ったり、殺人の後処理までやってしまう。
<フライ>というあだ名は、<ハエ>のことで、腐ったもののそばには飛び交うので、ヤクザ仲間からは、そう呼ばれているのだが、ラストでは復讐を果たす。
<フランキー>といえ『お前らは、シナトラのことも知らねーーのか』とボヤイていたが、ラストでは悪友も殺してメキシコへと消えて行くのだった。

■ボテボテながら左中間を抜けるツーベース。 ★★★☆☆
●KSS、VHSビデオテープ。

●『異国の出来事』は、ワイルダー監督の苦い里帰りか。

2021年01月14日 | Weblog
●1月13日(水)21-40
OV-12-10『異国の出来事』" A Foreign Affair (1948) Paramount Pictures
監督・ビリー・ワイルダー 主演・マレーネ・デイトリッヒ、ジョーン・フォンティーン<104分・モノクローム・スタンダード>
身勝手な話しだが、昨年9月頃に、自宅のVHS機器が不調になり、DVD併用の新機種を購入したこともあり、コレクションしていたVHSテープの処分を覚悟。
たしか、70年代の頃には、まだベータやVHSのビデオテープが映像コレクションには重宝していたので、好きな映画のオリジナル・テープを集めたものだ。
しかし、その後、LDからDVDの時代となり、テープは市場から消えてしまい、わたしの貴重な映画のコレクションも、哀れ過去のゴミとなる運命を迎えた。
すべての作品が、その後、DVD化されたわけではなくて、とくにハリウッド全盛の4、50年代に傑作のほとんどは、哀れ消え去ってしまったのだ。
さすがに高齢化と伴い、わがVHSテープのコレクションも毎週のようにゴミ捨ての日には、哀れにも、わたしの部屋から消える運命を迎えたのだが、これもその1作。
ヒッチコックと共に、わたしの青春時代には<ビリー・ワイルダー>監督の作品が、映画の趣味性の方向を決定づけてくれて、彼の名前は<映画の先生>となったのだ。
とくに「サンセット大通り」は、わたしのフェイヴァリット・フィルムのベストなのだが、この作品はその直前の監督作品なのだが、あまり評価は高くなかった。
ワイルダーはポーランドの生まれで、ヒトラーの独裁と戦渦を逃れてアメリカに亡命した青春だったのだが、これは戦後のベルリンを訪れて撮影、製作されたのだ。
もちろん、ミュージカル・コメディの傑作「ヒットパレード」や、「皇帝円舞曲」のあとで、名作「失われた週末」の直後の,いちばんアブラの乗切っていた時代。
やはり戦渦に廃墟となったベルリンにロケしたかった気持ちが、彼の個人的な感傷を後押ししているが、そのことで、ドラマ性は貧弱になってしまっているのが残念だ。
ドイツの名花マレーネ・デイトリッヒを使いたかった野望はいいが、恋人役で肝心のアメリカ軍人の役が、ジョン・ランドでは、残念ながらこのテーマは支えきれなかった。
せめて、この後に演出した「サンセット大通り」のW・ホールデンか、「地獄の英雄」のカーク・ダグラスなどのオスカー・レベルだったら、もっと見応えがあったろうに。。。

■当たりはいいが、セカンドを狙ってタッチアウト。 ★★★☆
●VHSテープでの鑑賞。

●『巴里横断』の、あの戦時下のギャバン・オールナイト漫才

2021年01月10日 | Weblog
●1月9日(土)21-30 ニコタマ・サンセット傑作座<VHS鑑賞>
OV-7-5『巴里横断』"La Traversee de Paris" (1956) French Film, B&W/standard size
監督・クロード・オータン・ララ 主演・ジャン・ギャバン、ブールヴィル <81分・モノクロ・スタンダード>
激化する第二次世界大戦時下のパリは、封鎖されて路上にはナチスの軍兵が、銃装備でパトロールしているが、パリジャンの食欲は関係ない。
それでも深夜になると、空腹なパリジャンは、チーズとフランスパンだけでは食欲は満たされないので、肉やソーセージなどの調達に出没するのだ。
ある夜に、ヤミ商人のブールヴィルは、北駅の裏通りで殺したばかりのブタを1匹調達して、その肉をモンパルナスの自宅に運ぶために苦労していたが・・。
たまたまカフェから出て来た酔っぱらいのジャン・ギャバンと、口論しているうちに、話しが、その生のブタを運ぶことに同意して、一緒に運搬作業することに。
とにかく、東京で言えば、浅草からわがニコタマまで、陸路、その重いブタの死体を運ぶというのは、いかに運搬作業用陸車に乗せての作業は重労働なのだが、
ボードビリアンで漫談家として人気のあったブールヴィルは、当時人気絶頂のフランスの国宝級の名優ジャン・ギャバンとの<慢才道中>なので、飽きさせない。
夜警のナチス兵隊に会うと、その近くのヤミ・カフェに逃げこんでは客人たちと世間話しで安いグラッパで、時間つぶしをしてナチスの警戒をかわして行く。
つまりフレンチの漫才映画で、達者なジャン・ギャバンの話しをブールヴィルの話術で見せて行く、あの「おかしな二人」のフレンチ版なのだ。
とくに、50年代はジャン・ギャバンは絶好調で、フランス映画の代表作の<顔>として、「フレンチ・カンカン」や「現金に手を出すな」は代表的名作だ。
「望郷」の頃のような若さのなくなった初老のギャバンには、とくにこの時期には名作が多く、この時期の「冬の猿」やメグレ警部シリーズは絶品だったのだ。
だからこのピーク時に、こうした彼の名演を見られたわが世代は、とにかく彼の渋い声と不機嫌な表情には魅了され、あれがフランス映画のピークだったのを、記憶する。
「ありがとう・・・ジャン・ギャバン!!!」。

■ただのセカンドゴロなのに、ベースに当たって逆戻りヒット。 ★★★☆☆
●保存VHSテープでの鑑賞

●『桑港(サンフランシスコ)』で再現された大地震で、恋の行方も大揺れ。

2021年01月06日 | Weblog
●1月5日(火)19-30 ニコタマ・サンセット傑作座
0V-003『桑港(サンフランシスコ)』"San Francisco"(1936) Metro Goldwyn Mayer Studio
監督・W・S・ヴァンダイク 主演・クラーク・ゲイブル、スペンサー・トレイシー<115分>モノクロ・DVD
シネコンに行っても、見たい新作映画もやっていないので、こちらは勝手にDVDでの、クラシック映画での自宅名画座での新春映画祭だ。
これは、サンフランシスコの観光映画ではなくて、1906年の4月17日に襲った大地震がラストに起こり、都市が火災で壊滅したときの再現ディザスター。
クラブを経営しているゲイブルは、あの「風と共に・・」のレット・バトラーの、あのままの気合いで、美女にもモテモテの伊達男ぶりで、<夜の帝王>だ。
ドラマは彼を中心にした夜の社交界を描いた、多角的なメロドラマで、ナイトクラブでは美女達のラインダンスを、あのゲイブル・スマイルで仕切っていた。
映画としては、ハリウッドを描いた「イヴの総て」のような、世界が1時間以上も続いていく、よくあるハリウッドの夜の都会もので、フレッド・アステアの踊りはない。
ところが、メロドラマの男女関係がゴタゴタしていた社交界、そのナイトクラブでショウガールたちがステージで乱舞していた最中に、あの大地震がやってくる。
電気は切れているが、そこは映画だから、その信じられない地獄の惨状が展開するなか「風と共に去りぬ」のアトランタの大火災のような大パニックの展開だ。
どうにか倒壊していく夜のサンフランシスコの惨状ななか、そこは主演のゲイブルは、クラブの新人歌手で、恋人のジャネット・マクドナルドと、生き延びて行く
あのチャールトン・ヘストンの「大地震」に比べたら失礼な、ハリウッド・クラシックも、こうしてDVDのも合本ものの安価なアルバムで見られるのも、幸せな時代。

■ただのセンター・フライが意外に伸びて、ツーベース。 ★★★☆☆
●アカデミー賞DVDセット、オフィスYK(R)2009セット。

●今年は、もっと見れるように。

2021年01月01日 | Weblog
●あけまして、おめでとう、で、ございます。
今年も、どうぞよろしく。

昨年は、コロナ世界大戦の戦渦で、試写は激減で、たったの34本しか見れませんでした。
しかも、なぜか、ろくな新作も少なくて、ベストテンの選考も苦策しましたが、
一応、見れた作品で日本映画ペンクラブの選考には、下記のように投稿しました。

★日本映画ベスト・3
①影裏
②ドクター・デスの遺産/BLACK FILE
③スパイの妻

★洋画ベスト・3
①リチャード・ジュエル
②レイニーデイ・イン・ニューヨーク
③男と女、人生最良の日々