細越麟太郎 MOVIE DIARY

最新の映画情報や批評を掲載します。

●ジェーン・ジェンキンスとの再会。

2009年09月29日 | Weblog
●9月28日(月)10-00a,m, 赤坂<ホテル・ニューオータニ、タワー2f. ル・サロン・ド・ニナス>
★A STAR IS FOUND/ジェーン・ジェンキンス・インタヴュー会見★

007シリーズや「天使と悪魔」などのハリウッドのトップ・キャスティング・ディレクター、ジェーン・ジェンキンスが、昨年上梓した「スター発見」が、10月に翻訳出版されたのを機に、本人が来日。
訳者でもあり共通の友人の奈良橋陽子さんの通訳とご厚意で2時間独占インタヴューした。
早川書房の「ミステリマガジン」に掲載するための取材だが、いつものように楽しい談笑に終始脱線した。
とくにキャスティングというのは、役者の相性バランスをジグソーパズルのように推理するので、一種の探偵業のようなものだわ、という極意には、いろいろと苦労話が語られ、興味は尽きない。
彼女が過去に担当した50以上の作品の中から、ミステリ関係として「ミザリー」、「ハメット」、「エアフォース・ワン」、「カジノ・ロワイヤル」などのキャストの裏話から、大スター発見の経緯などに意外な展開が多く秘められていて、その全貌をどのように紹介するかが、これからの作業となる。

●雑誌「ミステリマガジン」掲載は1月号の予定。

●『きみがぼくを見つけた日』赤い糸がズタズタに切れていても大丈夫。

2009年09月26日 | Weblog
●9月25日(金)13-00 内幸町<ワーナーブラザース試写室>
M-101 『きみがぼくを見つけた日』The Time Traveler's Wife (2009) newline
監督/ロベルト・シュベンケ 主演/レイチェル・マクアダムス ★★★
ブラッド・ピットが制作したロマンティック・ファンタジーだが、ピンと来ないラブストーリーだ。
赤い糸で結ばれたカップルだが、男は突然タイムスリップして、別の時空に行ってしまう。
これまでのタイムスリップものは、それなりに苦労や約束ポイントがあったから、何とか納得していた。
しかしこのエリック・バナは、まるで急病人になったように、突然消える。
その原因も前兆もないので、見ていて戸惑ってばかり。これではドラマに身が入らない。
愛の本質を描こうとした長編原作はベストセラーだというが、おそらくそこには恋の運命的なことが綴られているのだろう。
しかし映画では、ひたすら事前に了解されたように、男が消えて、女は再会を待つのが繰り返される。
恋とは、待つことだ、と言いたいのだろうが、見ている方は付き合いきれないのだ。
いま恋をしているひとは、もっと寛大かもしれない。が。

●10月24日より、丸の内ルーブルなどでロードショー

●『カールじいさんの空飛ぶ家』の意外に若すぎるアドヴェンチャー根性。

2009年09月25日 | Weblog
●9月24日(木)13-00 六本木<ウォルト・ディズニー試写室>
M-100 『カールじいさんの空飛ぶ家』Up (2009) pixar / disney
監督/ピート・ドクター 主演(声)エド・アズナー ★★★☆
妻に先立たれたカール老人は、家の強制立ち退きを機に、屋根にたくさんの風船をつけて、妻との夢だった南米にある絶壁の滝エンジェル・フォールを目指す。
ここまでは名作『ハリーとトント』のようでいい。
ところがあっという間に現地に着いてしまってから、いろいろと妨害があって、とくに尊敬していた探検家が実は悪人だったりして、後半はインディージョーンズのような大アクションが展開する。
杖を必要としていたカールじいさんが、がらりとスーパーマンになってしまうのには呆れてしまった。
この辺がハリウッドの興行事情だろうし、黄昏老人のセンチメントだけでは商売にならないのだろう。
せっかくの待望シニア・ヒーローの企画に期待していたので失望したが、老人が名優スペンサー・トレイシーにそっくりに描かれているのが嬉しくて、これもあの『老人と海』の幻想的なパロディーなのかなーーーと眺めてしまった。

●12月5日より、全国お正月ロードショー

●『イングロリアス・バスターズ』凶暴アパッチ族のナチス討伐戦。

2009年09月20日 | Weblog
●9月18日(金)10-00 半蔵門<東宝東和試写室>
M-099 『イングロリアス・バスターズ』Inglourious Basterds (2009) universal 米
監督/クエンティン・タランティーノ 主演・ブラッド・ピット ★★★☆☆☆
ナチス占領下のフランスでも、徹底的なユダヤ人狩りがゲシュタポ秘密警察によって行われていた。
しかしパルチザンとは別の反ナチス狩りグループも、密かに活動をしていた。独立愚連隊だ。
彼らはアパッチ族の血を引くピットを隊長にしたプラトーンで、ナチス兵隊を野球バットで殴り殺して、その頭皮を戦勝品として剥がしていた。
その漫画チックな発想は、相変わらずに辛辣なタランティーノだが、今回は天下のメジャー作品のせいか、カメラの設定がオーソドックスで画質も美しく、それぞれのエピソードの演出も丁寧で入念。
その不思議なバランスがたまらなく面白い。
とくにゲシュタポの尋問シーンの執拗な演出などは、実にサスペンス豊かで重厚。一転してバイオレンスのシーンになると、これまたお得意の残酷で突飛なアイデアで魅了して緩急自在。
総統までを巻き込んだ映画館での殺戮シーンは、毎度のド派手な展開でキレまくる。
まるで『ワルキューレ』の不甲斐なさをぶっ飛ばすような映画的発奮は、タランティーノ節が全開だが、史実を逆手に取って笑い飛ばす豪快ぶりには、本当に恐れ入ってしまう。
このワル乗りに、ついて行けますか?

●11月20日より、六本木TOHOシネマズなどでロードショー


●『パブリック・エネミーズ』男達の壮絶な逃避行と終焉の美学。

2009年09月19日 | Weblog
●9月17日(木)13-00 半蔵門<東宝東和試写室>
M-098 『パブリック・エネミーズ』The Public Enemies (2009) universal 米
監督/マイケル・マン 主演/ジョニー・デップ ★★★★
古典的ギャング映画『民衆の敵』(31)のリメイクかと思って見たら、違った。
あの30年代の大不況のアメリカで、銀行強盗などで指名手配されていた<ベビーフェイス・ネルスン>、<プリティボーイ・フロイド>、そして特に<ディリンジャー>などのギャングスターの最期を、ダイナミックに再現している。
背景は<ボニー&クライド>のようだが、デップの演じるディリンジャーは非常にストイックなスタイリストで、独特の犯罪美学にこだわっている。
彼を追うF.B.I.の捜査官を演じるクリスチャン・ベイルも同じように個性的な完璧主義者だから、このふたりの曲者同士の駆け引きが、ドラマを強力に引っ張っていく。これがすこぶる魅力的だ。
監督は、いつも男ふたりの一騎打ちにこだわるが、今回は史実のように、ディリンジャーが最期の夜に見たクラーク・ゲイブルのギャング映画『男の世界』での台詞が、ドラマを決定づけていて印象的。
映画ファンには、とても感慨深い快作だ。

●12月12日より、日劇ほかでロードショー

●『ジュリー&ジュリア』のレシピはいいが、調理は半熟だな。

2009年09月16日 | Weblog
●9月15日(火)13-00 神谷町<ソニー・ピクチャーズ試写室>
M-097 『ジュリー&ジュリア』Julie & Julia (2009) columbia 米
監督/ノーラ・エフロン 主演/メリル・ストリープ ★★★☆☆
テレビが家庭に普及しだした50年代後半。
アメリカの家庭では、主婦たちがジュリア・チャイルドの料理番組に夢中になっていた。
まだVTRのない時代だから、全部生中継。失敗しても番組は続けられる。
ジュリアはそれで人気を獲得した。長身で奇妙なアクセントで、フランス料理を作る妙なおばさんは全米のアイドルだった。彼女は500種類ものフランス料理のレシピ本も残したのだ。
さて、現代。若いジュリーは、なぜか昔のジュリアの料理本に興味を持ち、実際にそのレシピで味を確かめて自分のブログで連載した。そしてこれがヒット。そう、ブログは続けることに意味がある。
かくして、時代を越えてジュリアの味は現代でも生きている。
女性映画らしく、監督のノーラは女性ならではの味覚で作品を料理した。しかしドラマとして、ただの憧れだけで終わってしまうのには、どうも未練も残ったのは、欲張りだろうか。
例によって、メリルは呆れるばかりのソックリさんと好演しているのはいいが・・・。

●11月28日より、日比谷シャンテシネなどでロードショー

●『あなたは私の婿になる』の古典的スクリューボール•コメディの懐かしい風味。

2009年09月12日 | Weblog
●9月11日(金)13-00六本木<ウォルト•ディズニー試写室>
Mー096『あなたは私の婿になる』The Proposal (2009) Touchstone 米
監督/アン•フレッチャー 主演/サンドラ•ブロック ★★★☆☆
就業ビザが切れてしまう関係で、ニューヨークの切れ者女性編集長が、若い部下社員に結婚を命令する。
これは逆セクハラだが、仕事人間の彼女はいまが正念場だから、結婚詐欺で急場を凌ごうとした。
ところが当局は、その結婚の正当性を裏づけるために、男性部下の実家のあるアラスカのド田舎まで調査に来る。
そこで急遽、本当の結婚をすることにしたが、祖母が心臓発作を起こしたものだから、実家は大騒ぎ。
そんなドタバタな話は、往年のキャサリン•ヘプバーンのスクリューボール•コメディによくあった。
それを承知で、監督はクラシックなタッチでテンポよくドラマを展開するので、意外に面白い。
アラフォーのビジネスウーマンを演じるサンドラは、自分がプロデュースも兼ねているので、奮迅の大活躍。
スラップスティックな味わいも程よく洗練されたアメリカン•コメディとして、かなり楽しめた。
これもあの9ー11以来厳しくなったイミグレーション騒動を逆手にとった傑作だ。

●10月16日より全国ロードショー


●『私の中のあなた』で描かれた個人的な人生のあり方。

2009年09月05日 | Weblog
●9月5日(金)13-00 六本木<GAGA試写室>
M-095 『私の中のあなた』My Sister's Keeper (2009) new line 米
監督/ニック・カサベテス 主演/キャメロン・ディアス ★★★★
難病ものは苦手なので試写を敬遠していたが、カサベテス監督は二代にわたってファンだし、どうもこの作品はアカデミー賞に絡むらしいという噂を聞いて、渋々見ることにした。
白血病の姉のためにドナーとして血液や組織を提供してきた11歳の妹が、献血を拒否する提訴をした。
依頼を受けた弁護士は、裁判を通じて、家族のありかたや人間の生命の尊厳に、新しい認識を持つ。
たしかに難病ものではあるが、これはその問題を抱えた周囲のアメリカン・ホームドラマなのだ。
かなりシリアスになりがちな内容だが、監督は要所にユーモアをちりばめて、決して暗くならないスタンスを維持しながら、高質なドラマに昇華しているのは、お見事。
キャメロンも、持ち前の陽気さと、母親としての責任感で、凝固しがちでアンバランスな感情を交えて好演しているが、決して個人プレイにならないアンサンブルな脚本と演出の配分が秀逸だ。
食わず嫌いにしては、意外な拾い物だった。

●10月9日より、東宝シネマズ日劇などでロードショウ

★昨日のタイトル表示で、新しいパソコンの操作ミスで不思議な文字が入ったことをお詫びします。
正式なタイトルは『パイレーツ・ロック』でした。

●『パイレーツ•ロック』は海賊ロックン•ロールのタイタニック。

2009年09月04日 | Weblog
●9月3日(木)13-00半蔵門<東宝東和試写室>
M-094『パイレーツ•ロック』The Boat That Rocked (2009) universal 英
監督/リチャード•カーティス 主演/フィリップ•シーモア•ホフマン ★★★☆☆☆
1966年頃にイギリスでロックの放送を規制していたことは知らなかった。
その政府の制圧に抵抗したDJたちが、オンボロ貨物船を放送局にしたてて、領海線ギリギリの海上で、終日ロックンロールの新譜をオンエアしていたという設定。
あの「M★A★S★H」のような、苦境からの独占放送は、それだけでも痛快な設定だ。
しかしオンボロ船もガタがきて、政府も拿捕の強制執行に乗り出したものだから、さあ大変。
とうとう船体にも穴が開いて沈没の危機。
それでもロックンロールをやめない根性が実に楽しい。
多少時代感覚のズレはあるが、懐かしいあの頃の興奮が楽しめた。
ロックファンには必見だろう。

●10月24日より、六本木シネマズなどでロードショー

●『リミッツ・オブ・コントロール』の微妙なコントロール。

2009年09月03日 | Weblog
●9月1日(火)13-00 京橋<映画美学校第一試写室>
M-093『リミッツ・オブ・コントロール』The Limits of Control (2009) Focus 米
監督/ジム・ジャームッシュ 主演/イザック・ド・バンコレ ★★★☆☆
組織の重鎮暗殺の依頼をうけた殺し屋が、スペイン各地で情報提供者と会い、ターゲットの隠れ家に行く。
ただそれだけの話はよくある。
しかしこの作品は、ひたすらストイックで、セックスもバイオレンスもアクションもない。
ただ指令の入ったマッチ箱を受け取るだけのために、カフェでエスプレッソを2杯飲む。
あの「サムライ」のようだが、ストーリーは監督の前作「ブロークン・フラワーズ」と同じだ。
ハリウッド・バイオレンスに対しての皮肉だろうが、娯楽性を期待すると、これは、わさびの抜いた寿司のようでもある。
ただクリストファー・ドイルのクールな映像が随所に楽しめるので、スペイン観光という視線で見ていれば退屈はしない。そこがジャームッシュの癖の強いブラックユーモアだろう。
エンドクレジットに『No Limits, No Control』と出たのは、監督の自笑自虐だろうか。

●9月19日、シネマライズなどでロードショウ