細越麟太郎 MOVIE DIARY

最新の映画情報や批評を掲載します。

●「モンドヴィーノ」はワイン業界映画なんだ。

2005年09月30日 | Weblog
●9月30日(金)13-00 渋谷<シネカノン試写室>
M-132「モンドヴィーノ」Mondovino(2004)仏
監督・ジョナサン・ノシター <ドキュメンタリー作品> ★★☆☆
ワインを飲む楽しさを描いたドキュメンタリーかと思って見たら大違い。
これは世界のワイン業界の戦争を紹介した、ワイン・プロの映画。
だから全く知らない人たちが、それぞれの事情を話すだけなので期待外れだった。
しかも素人の手持ちカメラの取材なので、見ていて疲れる。
美意識のないワイン映画だから、食事のないワインのようで数分で退屈してしまった。
これならディスカバリー・チャンネル・テレビで見るレベルだろう。

●「ブラザーズ・グリム」の驚異のファンタジー。

2005年09月29日 | Weblog
●9月29日(木)13-00 京橋<メディア・ボックス試写室>
M-131 「ブラザーズ・グリム」Brothers Grimm (2005) 米
監督・テリー・ギリアム 主演・マット・デイモン ★★★★
ディズニー・アニメは案外に恐ろしいのだが、そのエッセンスはグリムの童話が多い。
「白雪姫」「眠れる森の美女」「赤ずきん」などのグリム童話の誕生エピソードを壮大なアドヴェンチャーにしたテリー・ギリアム久々の新作だが、かなりパワフルな冒険ファンタジーとして成功している。
屈託のない童話のイメージを、圧倒的アクションで引っ張る演出はラストまで途切れない。
フランスに支配されていた19世紀のドイツの森。
陰湿で暗い画面だが、マット・デイモンとヒース・レジャーが、いつものハリウッド・エンターテイメントの乗りで飛ばすので、アッと言う間の二時間。映画の持つ夢の世界を圧倒的なCGグラフィックで見せた絶品である。
もういちど、ルーブルの大画面で見たいおとなのファンタジー傑作だ。

●「探偵事務所・5」の不思議なムード。

2005年09月28日 | Weblog
●9月28日(水)13-00 渋谷<東芝試写室>
M-130 「探偵事務所・5」D-5 Project (2005) 日
監督・林 海象 主演・成宮寛貴 ★★★
60年代のテレビ映画を見ているような不思議なムードがある。
これは林監督の探偵映画に対してのノスタルジーなのだろう。
もし今の感覚で作るなら「インファーナル・アフェアー」に負けない感性が見られるだろうが、この作品は探偵事務所を昔の東映映画のような懐古趣味で描いている。もともと日本での探偵業というのはダンディズムとは遠い位置にあるものだろうから、この面白さも判らんでもないが、・・・・。

●「ダウン・イン・ザ・バレー」の時代錯誤の悲劇。

2005年09月26日 | Weblog
●9月26日(月)13-00 京橋<映画美学校・第一試写室>
M-129 「ダウン・イン・ザ・バレー」Down in the Valley (2004)米
監督・デビッド・ジェイコブソン 主演・エドワード・ノートン ★★★☆☆
バレーとは、ロス郊外のサン・フェルナンド・バレーのこと。
「E.T.」や「パリ.テキサス」の舞台になった新興住宅地で、モダーンな家が多いが妙に寂しい町だ。
その町に現れたエドワード・ノートンは、昔のカウボーイの生き残り。
カーク・ダグラスの「脱獄」や、リチャード・ウィドマークの「最後のガン・ファイター」と同じ時代錯誤者である。
ピストルが自己主張になっていて、彼のアイデンティティーであり、分身でもある。
その彼のダンディズムに恋した17才の少女と13才の少年の数日が描かれるが、それは虚構の悲劇にも見えるが、彼らの人生のスタートでもある。
いい話なのだが、演出のバランスが不安定で、妙な甘さが残る。
ノートンが演出した方が、もっと味の濃い衝動作になっただろう。惜しまれた。

●「カーテンコール」の昭和ノスタルジー。

2005年09月22日 | Weblog
●9月22日(木)13-00 京橋<メディア・ボックス試写室>
M-128 「カーテンコール」(2005) 日
監督・佐々部 清 主演・伊藤 歩 ★★★☆☆☆
閉館間近い映画館が娯楽の王者だった昭和30年の頃を追想する。
それだけなら、いくつもの名作があったが、この映画は下関の「みなと劇場」を舞台に青春を過ごした幕間芸人の、その後の人生も追い求める。
そして離散した家族の愛の温もりを探る。
ひとりの女性記者の追い求めた過去は、いつか自分の家族問題とオーバーラップしてくる。
ドキュメンタリーなタッチの佐々部監督は家族の絆にフォーカスするので、映画館閉館のノスタルジーは、あくまでサブなテーマだ。という訳で、これも「男はつらいよ」のような人情劇として上々にまとまっている。
しかし監督のテレなのか、せっかくの映画館での再会シーンは避けている。
それが、どうも不満だった。どこかで褪めていたのだろうかな。

●「ダーク・ウォーター」の水と「マサイ」の水

2005年09月21日 | Weblog
●9月21日(水)15-30 半蔵門<東和試写室>
M-127 「ダーク・ウォーター」Dark Water (2005) 米
監督・ウォルター・サレス 主演・ジェニファー・コネリー ★★★☆☆☆
和製ホラーのリメイクだが、これはこれで良く出来ている。
ニューヨークのルーズベルト島は、イースト・リバーにある小さな島で、昔は精神病院や工場だけの孤島だったが、ブルックリンやクイーンズよりもマンハッタンには近いので、アパートは便利だ。
離婚裁判係争中のジェニファーは、娘の親権を獲るために、とりあえず島の老朽アパートを借りる。しかし、天井から黒い水が滴り落ちて不快な雑音にも悩まされる。
大都会の不気味な生活感を恐怖映画にした「モーターサイクル・ダイヤリー」の監督は、ヒッチコックの「マーニー」のように、女性心理のトラウマや色彩による恐怖、陰湿な暗黒空間や湿度の不快感を巧みに映像化して飽きさせない。
娯楽的にも上質なモダーン・ホラーだが、不審な夫の陰謀や弁護士の挙動など、謎が多い割にはしっくりしないラストだった。
このままでは終わらない不吉な印象を残した傑作サスペンスだ。

●9月21日(水)13-00 紀尾井町<角川ヘラルド試写室>
M-126 「MASSAI/マサイ」(2004)仏
監督・パスカル・プリッソン 主演・マイナ・マコ ★★★☆
アフリカ、ケニアのマサイ族の若者を出演させたロード・ムービーといえるが、とにかく本物のマサイ族のファッションや音楽や慣習がユニークで面白い。とにかく泥水でも平気で飲む行動に恐れ入ってしまう。
いま、同じ地球で、このような種族が生活していることが、映像的にもショックがある。
ドラマとしてはシンプルなライオン狩りと、行方不明のマサイの捜索がテーマになっているが、やはり現実のケニアや、彼らの人間習性が、ディスカバリー・チャンネル・テレビのような興味で飽きさせない。
不思議で印象的な作品だ。

●イン・ハー・シューズ」の難読症と、アルツハイマー病

2005年09月20日 | Weblog
●9月20日(火)13-00 六本木<FOX試写室>
M-125 「イン・ハー・シューズ」In Her Shoes (2005) 米
監督・カーティス・ハンソン 主演・キャメロン・ディアス ★★★★☆
インテリだが美貌に自信のない姉トニ・コレットと、美形だが難読症でスターになれない妹キャメロンのモメごとだらけの日々に疎遠だった叔母さんのシャーリー・マクレーンが現れてから、ドラマが締まってくる。
ジェニファー・ウェイナーのベストセラー小説を、「8 mile」のカーティス・ハンソンが演出、制作がリドリー・スコットなので、ハリウッド第一級の人間ドラマになった。コミカルなタッチはハーバート・ロスの作品のような女性的ムードが充実して、久しぶりに繊細なヒューマン・ドラマだ。キャメロン・ディアスの変身したような演技をコレットとシャーリー・マクレーンが支えたアカデミー・レベルの傑作だ。
●9月20日(火)10-00 六本木<GAGA試写室>
M-124 「私の頭の中の消しゴム」2004 韓国
監督・イ・ジェハン 主演・ソン・イェジン ★★★☆☆☆
恋をして結婚をした新婚生活だが、若妻のアルツハイマー発病で、幸福な現実は悪転していく。
健忘症が進行して記憶喪失になるラブ・ストーリーはドリュー・バリモアの「50回目のファースト・キス」を思わせるが、生命よりも先に知能が死ぬ、という、この難病は悲惨で、韓流メロドラマのムードで一気に盛り上げる。
「ここは天国ですか?」とつぶやいた若妻の放心にホロリとするが、演出は軽すぎてサラリとして不満が残る。
難病ものなら、もっとなり振り構わず動転するような意外なアイデアが見たかった。
「四月の雪」のように、この甘さがファンにはいいのだろうが・・・。

●「ヴェニスの商人」の古典的トリック。

2005年09月15日 | Weblog
9月15日(木)13-00 京橋<メディア・ボックス試写室>
M-123 「ヴェニスの商人」The Marchant of Venice (2004)米
監督・マイケル・ラドフォード 主演・アル・パチーノ ★★★☆☆☆
いいネタは、どう料理しても美味しい。
さすがにシェークスピアのストーリーが面白いので、長さ(130分)は感じない。
とくにラストの法廷の場面になると、アガサ・クリスティーのミステリーのように意外性に気持ちよく騙される。
もちろん、これはレトリックの巧妙さで、夫が妻の男装に気付かない筈はない。
でもこれがシェークスピアの「十二夜」と同様のトリックなのだから、素直に騙されなくては楽しめない。
アル・パチーノが楽しそうに悪役を演じ、その大仰な演技が楽しめた。
マイケル・ラドフォードの演出は前半は平坦で退屈したものの、後半一気に勢いを取り戻した。
シェークスピアの面白さを確認できただけで、大いに楽しめた。

●「僕のニューヨークライフ」とその後の「マンハッタン」

2005年09月14日 | Weblog
●9月14日(水)13-00 京橋<メディアボックス試写室>
M-122 「僕のニューヨークライフ」Anything Else (2003)米
監督・ウディ・アレン 主演・ジェイソン・ビッグス ★★★★
ウディ・アレンの作品としては「メリンダとメリンダ」の前の作品だが、こちらの方がいい。
79年の「マンハッタン」では、恋人がロンドンに勉強に行くのを懸命に止めようとしたウディだが、この作品では、自分からニューヨークを離れようとする。事実配給会社のドリームワークスともめて、今後はロンドンを拠点にするという。
ま、それは作家としては試練になるだろうが、ニューヨーク大好きなわたしなどは寂しい。
その点、今回は徹底的にマンハッタンを見せるし、ジャズクラブの「ヴィレッジ・ヴァンガード」でダイアナ・クラールのライブ・シーンが見れたので、それだけで★がひとつ多い。
つまりウディ・アレンとニューヨークが好きなファンには、毎度の金太郎飴で安心してしまう。
若いテレビ作家の役をジェイソン・ビックスが好演して、ウディの青年時代を覗かせる。
「グッド・ウィル・ハンティング」に似た話だが、ダニー・デ・ヴィートが案外に笑えた。

●「四月の雪」とランダム・ハーツ。

2005年09月13日 | Weblog
●9月13日(火)13-00  東銀座<U.I.P.試写室>
M-121 「四月の雪」April Snow (2005) 韓国
監督・ホ・ジノ 主演・ぺ・ヨンジュン ★★★☆☆☆
なるほど、これがヨンさま、ですか。初めまして。
「冬のソナタ」も見ていないので、初めて演技を見ました。
監督の作品は前に見ていて、割に好感を持っていたのですが、正に「韓流メロドラマ」とはこれなんですね。
話はシドニー・ポラックの「ランダム・ハーツ」そのもの。
それを自動車事故にしたものだから、被害者の遺家族も絡んでくる。
それにしても寡黙なドラマだ。このスローテンポは眠くなる。だって、ふたりともあんまりしゃべらないし、なぜか事故を起こした男の友人も家族も出て来ないので、ふたりの話に終始する。
それはそれでシンプルでいいし、監督の美学も例によってクールだ。
退屈はしたが、韓国メロドラマとしてはアベレージの作品。ヨン様も個性とバランスは崩していない。
カメラが相変わらず、いい映像を見せていた。要するにシンプルな謙虚な映画なのだ。
残念なのは、このメロドラマが日本で出来ない現状だろう。