細越麟太郎 MOVIE DIARY

最新の映画情報や批評を掲載します。

●『ハムナプトラ/3』ミイラとゾンビの死闘、北京版。

2008年07月31日 | Weblog
●7月30日(水)13-00 五反田<イマジカ第二試写室>
M-084『ハムナプトラ・3/呪われた皇帝の秘宝』The Mummy: Tomb of the Dragon Emperor(2008) universal
監督/ロブ・コーエン 主演/ブレンダン・フレイザー ★★★☆
気がつけば3作目の「ミイラ」発掘冒険シリーズ。
どうも「インディ・ジョーンズ」の亜流のような気がするのは、家族3人の遺跡発掘騒動のせいだろう。
しかしこれは宿敵ユニヴァーサル映画が、老舗パラマウント映画に挑戦する商売仇挑戦状。
ミイラとゾンビの戦いなのだから、似ていても別物という自負がある。
今回はオリンピックイヤーなので、中国が戦場だ。
古代中国の皇帝軍と自由民兵たちの戦場が万里の長城になり、その遺跡を発掘したために、ジェット・リー扮するエンペラーが甦り、またもや平民のゾンビ大群と闘う。
まさに死人同士の死闘が、ノンストップで1940年代の上海に及び、ド派手に展開するサマはCG大戦争。
コンピューターのゲーム感覚だが、ま、よーやるわい、というユニヴァーサルの気合いは半端じゃない。
しかも、次作の予告宣言までしているという勢いだ。お疲れさん。

●8月16日より、日劇などでロードショウ

●『心のともしび』がスクリーンでまた見れた、という感慨。

2008年07月30日 | Weblog
7月29日(火)11-00 渋谷東急
M-083 『心のともしび』Magnificent Obsession (1953) universal 米
監督/ダグラス・サーク 主演/ジェーン・ワイマン ★★★☆☆
渋谷で開催中のぴあフィルムフェスティバルで、ダグラス・サーク監督作品が11本も連続上映されているので、公開当時見たのに、ほとんど記憶のない「心のともしび」を見に行った。
昔よりも客が入っているのは、マニアの人気によるものだろう。
当時はマーヴィン・ルロイや、ヘンリー・キングなどの名作に押されて、この作品も低い評価のメロドラマだった。
事故で大けがを与えた責任を感じて、自分で医師になって恋人の大病と視力を治すなんて、到底ありえないバカな話だと思っていたので、わたしの記憶も曖昧だった。
いま見ると、50年代の物創りの丁寧さと曖昧さが面白い。
ジョン・M・スタール監督作品のリメイクで、傑作「哀愁の湖」には及ばないが、改めてサークのオブセッションには魅了された。久しぶりに懐かしのムードミュージックに酔ったような気分は、悪くない。
この企画に感謝したい。

●渋谷東急で、8月1日まで。

●『ニール・ヤング/ハート・オブ・ゴールド』いま心に甦る。

2008年07月27日 | Weblog
●7月26日(土)DVD鑑賞
『ニール・ヤング/ハート・オブ・ゴールド』Heart of Gold (2005) paramount vantage
監督/ジョナサン・デミ 主演/ニール・ヤング ★★★☆☆
2005年にナッシュビルで行われたニール・ヤングのコンサートは、新曲がほとんどの初演奏で、それを友人で「羊たちの沈黙」でアカデミー作品賞を授賞したジョナサンが演出。
欲しかったDVDが、やっと手頃な値段で出たので、さっそくの鑑賞。
なにしろ70年代にニール病に感染して、「ハート・オブ・ゴールド」は毎日のように聞いていたLPだったものだから、60歳を過ぎて、貫禄のでた彼のステージの姿は、遅れて来たさすらいのガンマンのようだ。
タフな風貌から、あのやさしい歌声が聞かれると、ああ、もういけない。
竹中直人さんと飲んだ時も「ニールの歌を聞くと涙だもんね」という実感が甦る。
素晴らしいカメラとセット。そしてエミルー・ハリスのバック。
たまらないような青春の風が頬をなでる。

●パラマウント・ジャパンDVD

●『ブロードウェイ、ブロードウェイ』のオーディション・サバイバル。

2008年07月26日 | Weblog
●7月25日(金)13-00 渋谷<ショウゲート試写室>
M-082 『ブロードウェイ、ブロードウェイ』Every Little Step (2008) 米
監督/ジェームズ・D・スターン 主演/オーディションを受けた若者たち ★★★☆☆
ミュージカル「コーラス・ライン」が再演されるに当たって、3,000人ものオーディションの中から、19人のダンサーを選ぶまでの、一種のドキュメンタリー。
もともとオーディションの厳しさを描いたミュージカルだから、恐らく当確が固そうな若者にカメラは向けられているが、この道もまた険しい。もちろんスターは登場しない。
まるでスポーツの世界でのアスリート達のトーナメントを見るような熾烈な戦いは、それだけで特典映像的な見ものになっている。しかし、部分的には原案のストーリーも織り込まれているのが微妙。
だから、これは本番ミュージカルではなくて、そのステージに憧れる一種の『フェーム』でもある。
華やかなブロードウェイの、本当のバックステージの怖さが、現実として凄まじい厳しさがあり、楽しい舞台は、これらの努力によって生まれる。
真のミュージカル・スターを夢見るひとは必見だろう、が。
『コーラス・ライン』が見たくなる。

●10月、新宿ピカデリーなどでロードショウ

●『ハンコック』の超人パワーには、とても付いて行けない。

2008年07月24日 | Weblog
●7月23日(水)13-00 神谷町<ソニーピクチャーズ試写室>
M-081 『ハンコック』Hancock (2008) columbia 米
監督/ピーター・バーグ 主演/ウィル・スミス ★★★
新しいタイプのスーパーヒーローを生む為に、ハリウッドを代表する英知が結集した。
制作は『ダ・ヴィンチ・コード』のアキヴァ・ゴールズマンと『コラテラル』のマイケル・マン。
監督は『キングダム/見えざる敵』のピーター・バーグ。
しかも助演がシャーリーズ・セロンとなると、これは必殺の布陣だ。
ところが、どうも変である。
「スーパーマン」や「スパイダーマン」「バットマン」などは既存のコミックなので、暗黙の了解で見ていた面白さが、この荒唐無稽な新ヒーローにはどうもルールがないようだ。
ひとと社会のために悪を滅ぼすのはいいとして、記憶喪失したというシャーリーズとの関係も曖昧。
だからパワーダウンしても、よく判らない。
いろいろすっきりしないことの多いヒーローアクションのご迷惑パワーだった。

●8月30日より、丸の内ピカデリーなどでロードショウ

●『消えたフェルメールを探して』絵画探偵の捜査を追う。

2008年07月23日 | Weblog
●7月22日(火)13-00 京橋<映画美学校第一試写室>
M-080 『消えたフェルメールを探して』Stolen (2005)米
監督/レベッカ・ドレイファス 主演/ハロルド・スミス ★★★☆
1990年にボストンのガードナー美術館から十数点の絵画が盗まれた。
手薄な警備を欺いて、警官を偽装した強奪事件だった。その中にはフェルメールの「合奏」という作品もあり、500万ドルという懸賞金が掛けられたが未だに見つかっていない。
絵画探偵という存在は、この映画で初めて知った。
ハロルド・スミス探偵は皮膚がンを患っていて、まるでサイボーグのような風貌が個性的。
絵画の盗難は目的が複雑で、個人の鑑賞趣味で犯行するよりも、テロリストの活動資金変換源として強奪するケースも多く、この犯罪もIRAの背景も浮かんで来る。
犯罪捜査のドキュメンタリーとして見るのはいいが、これだけの貴重な芸術品を、勝手に盗むという行為の悪辣さに、だんだん見ていて腹が立って来た。
フェルメールの展覧会を見るファンの方は、この映画もどうぞ。

●9月、渋谷アップリンクで公開。

●『シナトラ/ザ・グレイテスト・ストーリー』で、まさかの自殺未遂。

2008年07月21日 | Weblog
●7月20日(土)VHS special
『フランク・シナトラ/ザ・グレイテスト・ストーリー』Sinatra(1992)HBO
監督/ジェームズ・サドウィズ 主演/フィリップ・カズノフ ★★★☆☆
没後十年を記念して、シナトラのライフ・ストーリーの映画がDVDで発売される。
シナトラの次女ティナが1992年に制作し、全米で放映された240分もの長編。
当然、生前のシナトラ本人も見た筈なので、内容に問題はないだろう。
ニュージャージーのホボーケンでの少年時代から、70年代のカムバックまでを丁寧に描いていて、とくに最初の妻との生活に、恋人エヴァ・ガードナーが登場した波乱の時期がドラマとして盛り上がる。
主演のカズノフは横顔が似ている瞬間はあるが、まずまず。
歌のシーンは当然、シナトラ本人の声なので安心できるが、歌詞の内容が、彼の心の動きを表現していて、それが彼の人生の歩みにリンクしているシナリオには工夫がある。
エヴァはマーシャ・ゲイ・ハーディンが妖しく演じていて、トミー・ドーシーとの友情のシーンにも熱いものだあった。それにしても自殺未遂があったとは、ね。
40年代から60年代にかけてのニューヨークやハリウッドの時代考証も興味がある。

●ワーナー・ブラザースから9月10日、DVD発売

●『ひゃくはち』の二度目は耳で見ろ。

2008年07月19日 | Weblog
●7月17日(木)13-00 京橋<映画美学校第一試写室>
M-000 『ひゃくはち』"108" (2008) ギャングスター/日
監督/森 義隆 主演/斉藤嘉樹 ★★★★
最近、2度も試写で見たなんて映画はない。
自分でもはっきりした理由はないが、野球が好きで、野球の好きなこの映画が好きだからだろう。
高校野球部で、ただ甲子園を目指している補欠のガキどもが、とにかく生き生きしていて、昨今の幼稚で凶悪な犯罪や、野方図なぐうたら映画に出て来る人間どもにうんざりしているせいもあるだろう。
「俺らは野球が大好きなんだべさ」という、ただそれだけの青春に、つい感動し拍手したくなる。
先のことなんかじゃなく、いま汗を流して白球を犬のように追いかける。
男のコなら、こうあって欲しいのだ。

●8月9日より、テアトル新宿で公開。

●『あぁ結婚生活』ちょっと待った熟年離婚。

2008年07月16日 | Weblog
●7月15日(火)13-00 京橋<テアトル試写室>
M-079 『あぁ、結婚生活』Married Life (2007) kimmel 米
監督/アイラ・サックス 主演/クリス・クーパー ★★★☆☆
ドリス・デイの歌で始まる40年代のアメリカ。
大戦の影響のないような中産階級の家庭の歪みを、まるでダグラス・サーク監督風の一見平和そうな夫婦メロドラマのように見つめる。その語り口がラジオ的でいい。
ところが、いきなりクリスは、友人のピアース・ブロスナンに浮気と離婚の考えを語る。
そして話は妻の毒殺まで大げさに。
まるでウディ・アレンの夫婦映画のような危険な展開となるが、そこはともかくメロドラマの定石の枠の中で、どうにか夫婦の危機は通過する。安易だが、それもあの時代らしい。
結婚とは、こんなもの。というには特にシリアスでも、ましてやシニカルでもない。
どこか懐かしい、よきアメリカ家庭の空気だけは楽しめた。

●9月下旬、ル・シネマなどでロードショウ

●ジェシー・ストーンに、もう一杯。

2008年07月14日 | Weblog
●7月14日(月)DVD
『暗夜を渉る』Night Passage (2006) sony pictures
『湖水に消える』Death in Paradise (2006) sony pictures
監督/ロバート・ハーモン 主演/トム・セレック ★★★☆☆
いずれもDVDで発売された、ロバート・B・パーカー原作「ジェシー・ストーン警察署長」シリーズの映画化で、先に発売された『ストーン・コールド』も同じシリーズ。
ロス警察を免職になったジェシーは、ボストン郊外のパラダイスという小さな町の警察署長になる。
部下はふたり程度。
作品はいずれも事件そのものよりも、中年警官の向上心を喪失したような日々が淡々と描かれる。
これはポリス映画というよりも、アメリカン・ハードボイルドの疲労感を見つめていて、非常に共感の濃いシリーズとして味わいがある。
夢はないが、失望もしていない。ただ人生のピークをとうに過ぎた男の疲れた情感に好感のもてるドラマ。
老犬と酒だけが友だ。
劇場公開しなかったが、深夜にひとりで見る作品としての静かな個性はある。
「てめえの気持ちは判るよ、でも許せねえものは放っとけねえよ」とジェシーが吐き捨てる。
たった一発の銃弾でドラマが決まる。これは現代の西部劇だろう。