細越麟太郎 MOVIE DIARY

最新の映画情報や批評を掲載します。

●『LOGAN/ローガン』のヒューは、あの「アウトロー」のクリントに似て来たなー。

2017年04月30日 | Weblog

4月19日(水)12-30 六本木<FOX映画試写室>

M-049『LOGAN*ローガン』(2017) 20th Century Fox Film Marvel Entertainment 

製作・監督・脚本・ジェームズ・マンゴールド 主演・ヒュー・ジャックマン パトリック・スチュワート <138分・シネマスコープ> 配給・20世紀フォックス映画

ブロドウェイ・ミュージカルでも人気のあるヒュー・ジャックマンは、実は17年も前から「Xメン」での、ミュータントのクワ爪男の役を持ち味にして、何とこれで9作品目だという。

まさにジェームズ・ボンドばりのライフワークのようだが、「Xメン」も、「ウルヴァリン」という異名でも再三の活躍をしていたのだが、われわれには意外に馴染みが薄かった。

とはいえ、<マーヴェル>ブランドのアクションアニメ・ヒーローなので、あの両手の拳から殺意と怒りと共に6本の長い刃の出るキャラクターには、2013年に日本でロケした際には、東京でも大暴れした。

しかし、さすがに超ハードな連続アクション作品で疲労したのか、ミュータント・ヒーロー役のヒュー・ジャックマンは、惜しくもこの作品でリタイアするらしく、これが最後のミッションらしい。

近未来2029年で、すでに老化したミュータントの<ローガン>は、ラスト・ミッションとしてローラという少女をカナダ国境まで届ける任務を受けるが、またしても武装集団から攻撃される。

ミュータントが消滅しつつある国境の研究施設では、その少女を必要としていたが、彼女は実は恐るべき知能と戦闘能力を持っていて、ローガンとの逃避行の間にも驚異的な本性を見せる。

まさにあのジャン・レノ主演の「レオン」のように、少女を守るための逃亡と死闘を展開して、いかにも<マーヴェル・コミック>のスーパー・カップルぶりを見せていく。

原案とシナリオを書いて演出もしているジェームズ・マンゴールドは、ヒューとは3回目のコラボで、このウルヴァリン・シリーズでは、あの東京ロケ以来の息のあったアクションを連続して見せる。

映画の中では、再三にわたってアラン・ラッド主演の西部劇「シェーン」のシーンがインサートされるように、この戦う男と少女の関係は、恐らくはシェーンと少年のハートがベースになっているようだ。

監督が、クリント・イーストウッド監督主演のウェスターン「アウトロー」を意識したというだけに、ヒゲだらけで奮闘するヒューも、役作りのせいか、あの絶頂期のクリントの風貌を思わせる。

だから<マーヴェル・コミック>の配下にある作品だが、どこか孤独な荒くれ男の出演した西部劇の匂いがして、ウェスターン・ファンの我々には嬉しいアクション映画の味わいだった。

 

■サードベースに当たるライナーが転々の間にツーベース進塁。 ★★★☆+

●6月1日より、全国ロードショー 


●『LOGAN/ローガン』のヒューは、あの「アウトロー」のクリントに似て来たなー。

2017年04月30日 | Weblog

4月19日(水)12-30 六本木<FOX映画試写室>

M-049『LOGAN*ローガン』(2017) 20th Century Fox Film Marvel Entertainment 

製作・監督・脚本・ジェームズ・マンゴールド 主演・ヒュー・ジャックマン パトリック・スチュワート <138分・シネマスコープ> 配給・20世紀フォックス映画

ブロドウェイ・ミュージカルでも人気のあるヒュー・ジャックマンは、実は17年も前から「Xメン」での、ミュータントのクワ爪男の役を持ち味にして、何とこれで9作品目だという。

まさにジェームズ・ボンドばりのライフワークのようだが、「Xメン」も、「ウルヴァリン」という異名でも再三の活躍をしていたのだが、われわれには意外に馴染みが薄かった。

とはいえ、<マーヴェル>ブランドのアクションアニメ・ヒーローなので、あの両手の拳から殺意と怒りと共に6本の長い刃の出るキャラクターには、2013年に日本でロケした際には、東京でも大暴れした。

しかし、さすがに超ハードな連続アクション作品で疲労したのか、ミュータント・ヒーロー役のヒュー・ジャックマンは、惜しくもこの作品でリタイアするらしく、これが最後のミッションらしい。

近未来2029年で、すでに老化したミュータントの<ローガン>は、ラスト・ミッションとしてローラという少女をカナダ国境まで届ける任務を受けるが、またしても武装集団から攻撃される。

ミュータントが消滅しつつある国境の研究施設では、その少女を必要としていたが、彼女は実は恐るべき知能と戦闘能力を持っていて、ローガンとの逃避行の間にも驚異的な本性を見せる。

まさにあのジャン・レノ主演の「レオン」のように、少女を守るための逃亡と死闘を展開して、いかにも<マーヴェル・コミック>のスーパー・カップルぶりを見せていく。

原案とシナリオを書いて演出もしているジェームズ・マンゴールドは、ヒューとは3回目のコラボで、このウルヴァリン・シリーズでは、あの東京ロケ以来の息のあったアクションを連続して見せる。

映画の中では、再三にわたってアラン・ラッド主演の西部劇「シェーン」のシーンがインサートされるように、この戦う男と少女の関係は、恐らくはシェーンと少年のハートがベースになっているようだ。

監督が、クリント・イーストウッド監督主演のウェスターン「アウトロー」を意識したというだけに、ヒゲだらけで奮闘するヒューも、役作りのせいか、あの絶頂期のクリントの風貌を思わせる。

だから<マーヴェル・コミック>の配下にある作品だが、どこか孤独な荒くれ男の出演した西部劇の匂いがして、ウェスターン・ファンの我々には嬉しいアクション映画の味わいだった。

 

■サードベースに当たるライナーが転々の間にツーベース進塁。 ★★★☆+

●6月1日より、全国ロードショー 


●『LOGAN/ローガン』のヒューは、あの「アウトロー」のクリントに似て来たなー。

2017年04月30日 | Weblog

4月19日(水)12-30 六本木<FOX映画試写室>

M-049『LOGAN*ローガン』(2017) 20th Century Fox Film Marvel Entertainment 

製作・監督・脚本・ジェームズ・マンゴールド 主演・ヒュー・ジャックマン パトリック・スチュワート <138分・シネマスコープ> 配給・20世紀フォックス映画

ブロドウェイ・ミュージカルでも人気のあるヒュー・ジャックマンは、実は17年も前から「Xメン」での、ミュータントのクワ爪男の役を持ち味にして、何とこれで9作品目だという。

まさにジェームズ・ボンドばりのライフワークのようだが、「Xメン」も、「ウルヴァリン」という異名でも再三の活躍をしていたのだが、われわれには意外に馴染みが薄かった。

とはいえ、<マーヴェル>ブランドのアクションアニメ・ヒーローなので、あの両手の拳から殺意と怒りと共に6本の長い刃の出るキャラクターには、2013年に日本でロケした際には、東京でも大暴れした。

しかし、さすがに超ハードな連続アクション作品で疲労したのか、ミュータント・ヒーロー役のヒュー・ジャックマンは、惜しくもこの作品でリタイアするらしく、これが最後のミッションらしい。

近未来2029年で、すでに老化したミュータントの<ローガン>は、ラスト・ミッションとしてローラという少女をカナダ国境まで届ける任務を受けるが、またしても武装集団から攻撃される。

ミュータントが消滅しつつある国境の研究施設では、その少女を必要としていたが、彼女は実は恐るべき知能と戦闘能力を持っていて、ローガンとの逃避行の間にも驚異的な本性を見せる。

まさにあのジャン・レノ主演の「レオン」のように、少女を守るための逃亡と死闘を展開して、いかにも<マーヴェル・コミック>のスーパー・カップルぶりを見せていく。

原案とシナリオを書いて演出もしているジェームズ・マンゴールドは、ヒューとは3回目のコラボで、このウルヴァリン・シリーズでは、あの東京ロケ以来の息のあったアクションを連続して見せる。

映画の中では、再三にわたってアラン・ラッド主演の西部劇「シェーン」のシーンがインサートされるように、この戦う男と少女の関係は、恐らくはシェーンと少年のハートがベースになっているようだ。

監督が、クリント・イーストウッド監督主演のウェスターン「アウトロー」を意識したというだけに、ヒゲだらけで奮闘するヒューも、役作りのせいか、あの絶頂期のクリントの風貌を思わせる。

だから<マーヴェル・コミック>の配下にある作品だが、どこか孤独な荒くれ男の出演した西部劇の匂いがして、ウェスターン・ファンの我々には嬉しいアクション映画の味わいだった。

 

■サードベースに当たるライナーが転々の間にツーベース進塁。 ★★★☆+

●6月1日より、全国ロードショー 


●『グレイトウォール』で怪獣の大群と弓矢で奮闘するジェイソン・ボーンの勇姿。

2017年04月28日 | Weblog

4月18日(火)10-10 二子玉川<109シネマズ・3スクリーン>

M-048『グレートウォール』" The Great Wall "<3D> (2017) UniversalInternational Pictures 

監督・チャン・イーモウ 主演・マット・デイモン、ウィレム・デフォー <103分・シネマスコープ・3D> 配給・東宝東和

どうも今年の、あのアカデミー授賞式で、司会者にマット・デイモンが笑い者ジョークのネタにされていた新作なので、試写で見るのもオックーになって見逃していた。

でも、やはり<ジェイソン・ボーン>のマットの新作となると気にはなっていたので、近所のシネコンの早朝初回に忍び込んで見たが、これはたしかにかなりの珍品。

実はあの歴史的な偉業による<万里の長城>の建設苦労秘話の映画かと思って見たら、とんでもない怪獣退治のアクション3D大作で、もちろん中国映画製作会社も全面協力の大作だ。

マット・デイモンは<ドン・キ・ホーテ>を思わせる流浪の傭兵というか、マルコ・ポーロみたいな冒険家らしく、なぜか得意の弓矢を背にした寡黙な戦士で、この中国に出現した。

なぜか60年に一度出現して長城を攻めて来る饕餮<とうてつ>という怪獣の大群が、とにかく想像を絶する獰猛な戦力で、この長城に攻めて来るので、中国の大群もその防衛に手を焼いている。

まさに、かつてのアパッチ族の獰猛なインディアン達が、カスター将軍を襲ったように、いや、むしろ「トロイ」の戦争のように、怒濤の大群を火力の大砲と増大な兵力で阻止しようとする。

という、ある種、まさに時代錯誤をしたような空前のCG処理で、見た事もない獰猛果敢な怪珍獣たちと攻防戦を繰り返す・・・という、昔見た「トロイのヘレン」か「クオ・ヴァディス」か。・・・。

つまり、あの50年代のデミル映画のような壮大なスペクタクル戦争大活劇で、見ているあいだは、いまが2017年なのだ、ということを忘れてしまいそうな、とてつもない珍品怪獣映画だったのだ。

実はこれが、2万キロにも及ぶという、の<万里の長城>の建設理由だったのだ・・・という仮説による、不思議な昔話を、実に巧妙なモンスター・パニックとして「HERO」の巨匠チャン・イーモウはホラを噴く。

たしかに寡黙な弓の名手マット・デイモンは、中国美人女性司令官の誘惑も無視して、懐かしい中国の名優アンディ・ラウなどと共に、再三襲いかかる怪獣退治に奮戦するのだ。

という意味では、最近公開された映画の中でも、かなりクレイジーな<珍品作>として、恐れ多い3D大作であり、今年最高の珍品なのだった。

 

■センターライナーかと思ったが、意外に失速してポテン・ヒット。 ★★★☆

●全国ロードショー中

  

●『ワイルド・スピード*アイスブレイク』では何と、氷上で原子力潜水艦と激闘だ!!!

2017年04月26日 | Weblog

4月17日(月)13-00 半蔵門<東宝東和映画試写室>

M-047『ワイルド・スピード*アイスブレイク』" Fast & Furious 8 " (2017) Universal International Studios,/ Original Films

監督・F・ゲイリー・グレイ 製作+主演・ヴィン・ディーゼル、ドウェイン・ジョンソン <136分・シネマスコープ> 配給・東宝東和

何と、気がつけば、このシリーズも第8作目で、しかも第1作から総てが大ヒット作というから、いまや「007」や「スターウォーズ」などのレベルのシリーズ。 

はじめは、あの「理由なき反抗」のように、深夜のロスの裏道で、自慢の改造車で、違法のスピード・カー・レースをしていた不良グループの映画だったのが、いまやスパイ大戦争。

スキンヘッドの巨漢ヴィン・ディーゼルとドウェイン・ジョンソンは、どうも似た者同士で区別がつかなかったが、そこに白人青年のポール・ウォーカーが絡んだトリオがユニークだった。

ところが数年前にポールが、友人の運転していた自動車事故で亡くなり・・・さて、シリーズ消滅かと思いきや、そこにジェイソン・ステイサムが代打要員で加わってから、またパワー加速。

何と、この新作では、あのクリント・イーストウッドの息子のひとりのスコット・イーストウッドが参画したうえに、「ブレーキ・ダウン」でカー・レースをしていたカート・ラッセルも参加。

おまけにオスカー女優のヘレン・ミレンや、「マッドマックス・怒りのデスロード」でキレまくりの暴走好演でオスカー・ノミネートされた美女シャーリーズ・セロンが極悪のヒロインで暗躍する。

これだからハリウッドの、というか、ユニヴァーサル映画の金策には適わないが、フルスロットルで大金をかけた超スピード大作がこれで、とてもジェームズ・ボンドひとりでは手がつけられない。

ただのカー・チェイス映画だったのが、同士の友情の亀裂から、スパイ大作戦に話が拡大して、とうとう今回はキューバから、ロシア絡みでの北極圏での氷上カーチェイスに原子力潜水艦までが参戦するのだ。

ストーリーはもう国際スパイ戦争が絡んでいるので、実に難解複雑なのだが、ジェイソン・ステイサムと、クリントの息子が軽いコメディ・リリーフで作品を明るくしているので、印象は陽気でいい。

例によって、高級な改造車両が豪快なクラッシュを展開して、前作「スカイ・ミッション」でのパラシュートによる車の空中飛行から、今回は氷上で原子力潜水艦との激突になる。

よくぞ、ここまで大量に高級車を破壊するものだが、これがこのシリーズのトリであって、撮影はプロのスタントが演じましたが、「路上でのスピードの出し過ぎにはご注意ください・・」とラスト。

またしても世界的に驚異的な大ヒットを加速しているという、このシリーズは、しばらくは懲りもせずに暴走を繰り返すようで、われわれとしても、ただ呆れて見るしかないようだ。

 

■右中間へのゴロのヒットでセカンドをオーバーランしたがセーフ。 ★★★☆

●明後4月28日より、全国ロードショー 


●『家族はつらいよ・2』またもや大悲劇に、大爆笑の家庭内戦争。

2017年04月23日 | Weblog

4月14日(金)13-00 築地<松竹本社3F試写室>

M-046『家族はつらいよ・2』(2017)松竹映画<家族はつらいよ・2>製作委員会、住友商事、テレビ朝日、木下グループ、博報堂DYミュージック&ピクチャーズ

監督・山田洋次 主演・橋爪 功、吉行和子・・<113分・シネマスコープ> 配給・松竹株式会社

昨年公開された「家族はつらいよ」は、ごく平均的にありがちな、東京郊外の沿線住宅地区の家族の3世代トラブルを、実に面白おかしく描いていたホームドラマで、好感を持った。

ひとつ間違えると、とんでもない家庭争議のもとになるような家内トラブルを、さすが「男はつらいよ」で驚異的なヒットシリーズを放った山田洋次監督は、さすがの人情手腕を発揮。

むかしなら同じ松竹映画の、あの小津安二郎作品にもよく見られた、ごく些細な夫婦や、その家族のそれぞれの感情のモツれを、暖かい視線で見つめた演出は、大ヒットとなったのだった。

で、まったく同じメンバーの家族構成による<パート・2>は、あの老夫婦の離婚騒動から、どうにか逃れて、ひとまずは家庭の平和を取り戻したかに見えた、また別のトラブルを描くのだ。

だから、あの前作を見ていないひとには、連続テレビ・ドラマのように、すぐにはフォローしきれないであろう<ボタンのかけ違い>はあるかもしれないが、ま、そこは勝手知ったる家庭の事情。

つまりは、もうみなさんご存知の前提で、この家庭内トラブルは発生し、海外旅行に出ている老夫人は別として、同居している長男夫婦とその子供達や、長女の婿養子のような関係は持続していく。

だからこそ、第一作を見ていると、見ていないでは、残念ながら、この作品の面白さと愉しさと、哀しみの度合いは、当然ながら、かなり違ってくるであろう・・・というのが老婆心。

後期高齢者の主人の橋爪は、傷だらけの自家用車の買い替えと、運転免許証の更新時期を迎えて、この最寄り駅からは遠い新興住宅地の地理的な命題で、どうしても愛車のトラブルは避けられない。

しかし家族は、その更新には怪訝な気持ちなのだが、たまたまドライブ中に、大昔の学生時代の同級生を見かけて、食事に誘い、昔話に花を咲かせるものの、その男は過去を語ろうとしないのだ。

よくある同窓生のクラス会というのは、自分に不利な事情の少ないメンバーが集まるわけで、人生行路を踏み外した同級生というのは、学生時代の後の話には、もう触れたくないもの。

そのもどかしさが、このパート・2のテーマでは敢えて持ち出して、その人生のギャップに苦笑するのだが、小津作品などでは、その<気まずさ>には、あまり触れなかった。

しかし残酷にも、山田洋次監督は、あの車寅次郎の毒舌と皮肉を、あえて<笑点>にしてしまうことで、ちょっとブラックなホームドラマとしてのおかしさと残酷さを見せつけるのだ。

 

■またしてもレフトオーバーの飛球だが、野手が返球で暴投してツーベース。 ★★★☆☆+

●5月27日より、全国松竹系で公開。


●『ある決闘*セントへレナの掟』の壮絶ライフル銃激戦のウェスターン魂。

2017年04月20日 | Weblog

4月12日(水)13-00 六本木<アスミック・エース試写室>

M-045『ある決闘・セントへレナの掟』" By Way of Helena " (2016) Mississippix Studios LLC / Atomic Entertainment / Mandeville Films

監督・キーラン・ダーシー=スミス 主演・ウディ・ハレルソン、リアム・ヘムズワース <110分・シネマスコープ> 配給・クロックワークス

ちょうど2年前に「悪党に粛清を」というデンマーク製の西部劇を公開した、クロックワークス社が、また今どき・・の本格西部劇を輸入公開するのは、実に嬉しい快挙!!!。

ま、ハリウッド西部劇で育ったわれわれは、逢坂剛さんと同様に、あの西部の荒野が故郷だったし、ジョン・ウェインやランドルフ・スコットの勇姿が恩師であり憧れだった。

マカロニ・ウェスターンというのは、どこかメキシカンなタコスの味わいで、異国メイドのウェスターンとして奇妙だった感じで、どうも輸入品の味わいがして<本気>では見れなかった。

というこだわりで言うと、「悪党に粛清を」も異色だったが、とにかくアメリカ西部の荒野を舞台にしていたので嬉しかったし、この新作も異色だが、<マジ・西部劇>と言っていい。

つい先日見た「ノー・エスケープ」は、メキシコの国境から違法入国した移民たちを制裁しようとする現代異色ウェスターンだったが、この作品は1886年の国境事件だから、まさに西部劇。

面白いのは、当時、この国境の密入国トラブルで、手を焼いていたテキサス州が、自警団のような<テキサス・レンジャーズ>を結成して、そのアウトローたちを制裁していたが、ここでも復活だ。

そのテキサス・レンジャーズに関しては「テキサス決死隊」という名作があって、再三、リメイク映画化されたが、そのレンジャースとして登場するのがリアム・ヘムズワース、というワケだ。

国境に近いリオ・グランデ河の上流のマウント・ハーモンという町では不可解な殺人事件が続いていて、多くのメキシコ人らしい死体が河に浮いていたので、秘かに捜査官は調査を始めたのだ。

町の治安を仕切っている謎めいた説教師ウディ・ハレルソンは、狂信的な白人優位主義者で説教で町の住人を先導して、あのKKK団のように、異国人や異教徒たちを排除して殺害し、国境の河に流していた。

その実態をリアム捜査官が突き止めて行く・・という、一種のディテクティブ・サスペンスのスタイルが作品のベースになっていて、ラストでは壮絶な決闘となる、久しぶりの本格ウェスターン。

このところ「スウィート17モンスター」などでは、善良なおじさんを好演していたウディは、ここでは本来の冷血な殺人鬼に扮していて、久しぶりにクレイジーな悪役を好演。

オーストラリア出身で「ハンガー・ゲーム」でブレイクしたリアムも、無精髭のテキサス・レンジャーズを演じているが、ま、一応は西部男のサマになっているので、あまり文句は言えない。

とくにライフル銃を乱射して、岸壁で展開する決闘は壮絶で、とくにキーラン監督の視覚的なアイデアが活かされた演出が、これまでの一発決着型の決闘ものと違って、大いに見応えがあった。

 

■サードのグラブを弾く強烈なライナーがレフト線に転々のツーベース。 ★★★☆☆+

●6月10日より、新宿バルト9他でロードショー 


●『22年目の告白〜私が殺人犯です〜』というマスコミ報道騒動のキミョウな顛末。

2017年04月18日 | Weblog

4月12日(水)10-00 内幸町<ワーナー・ブラザース映画試写室>

M-044『22年目の告白ー私が殺人犯ですー』(2017)ワーナー・ブラザース、日本テレビ放送網、ROBOT、ホリプロ、WOWOW

監督・脚本・入江 悠 主演・藤原竜也、伊藤英明 <117分・シネマスコープ> 配給・ワーナー・ブラザース・ジャパン

このところ、やたら和製ミステリー映画を積極的に製作しているワーナー映画日本支社は、「愚行録」に次いで、今回は監督が平田研也との共同脚本の新作を公開する。

試写室に入る前に、やたら厳重な<ネタばれ規制>の書面が手渡されて、それについては、肝心の犯人や、その人間関係を口外しないことになっていて、ああ、またも口止め試写。

だから、要点だけを説明すると、かつて勃発した連続殺人事件が、ことしで22年目となり、法令によって事件の追求は時効となるので、犯人の検挙は中止となる、という矢先のこと。

その真犯人と名乗る男が、何と告白本<私が犯人です>という、書き下し本を出版して、発売記念のサイン会を開いて、マスコミの注目を集め、警視庁は捜査班を解散したのだ。

著者で殺人犯人を名乗ったのが、藤原竜也で、あの甘いマスクで、もし22年前に殺人事件を起こしていたのなら、当時二十歳だとしても、いまは45歳すぎのオジンの筈?

でも、それを言ったら、捜査主任の伊藤英明だって、ここでは50歳くらいでないと年齢的に妙なのだが、ま、それは<ミステリーの創作世界>だから、・・・ま、いいか。

要するに、<わたしが真犯人です>と、マスコミで明言したものだから、これが真犯人のあぶり出し作戦だとしたら、あれ?・・・その告白本というのは、嘘が書かれていること?

というワケでストーリーは混乱する警察側と、テレビ局などの報道陣になるわけで、昨年の傑作「64<ロクヨン>」を思わせるが、こちらは、まったくお気軽なエンタメ演出。

ホラ話から真実を引き出しても、もう22年の時効なのだから、あの<三億円強奪事件>のように風化してしまうが、このストーリーでは、この騒動で意外な真相が出て来るのだ。

ま、そりゃないでしょー・・・と思う展開なのだが、特例としては、このケースでは時効時間キレでも、法的には逮捕が成立するらしく、ドタバタと意外な真犯人が逮捕される。

それはいいにしても、どうもテンポが曖昧で、映画的な映像のリアリティも深みもなく、ミステリー映画というよりは、お手軽な連続テレビ・ドラマのような顛末で、おつかれさま。

 

■平凡なレフトフライを野手がジャッグルしたが、セカンドで封殺。 ★★☆

●6月10日より、全国ロードショー 


●『ノー・エスケープ*自由への国境』のストレートなマンハントは上質ウェスターンの度数だ。

2017年04月16日 | Weblog

4月7日(金)13-00 六本木<アスミック・エース3F試写室>

M-043『ノー・エスケープ*自由への国境』" Desierto " (2015) STX Financing,LLC. / Itaca Films / C G Cinemas / Lava Bear Studio メキシコ・仏

製作・アルフォンソ・キュアロン 監督・脚本・ホナス・キュアロン 主演・ガエル・ガルシア・ベルナル <88分・ビスタサイズ> 配給・アスミック・エース

あの秀作SF「ゼロ・グラビティ」でアカデミー賞を総ナメしたメキシコの巨匠アルフォンソ・キュアロンの息子の、これは親父直伝のプロデュースによる、実に素晴らしい逃亡サスペンス。 

とかくアメリカとメキシコの国境をめぐっては「赤い河」「リオ・コンチョス」「黒い罠」の時代から、多くの確執トラブルのテーマが多く、「ノー・カントリー」という秀作もあった。

いまや、トランプ大統領までが、この砂漠の国境に<万里の長城>のような壁を作ろうと暴言を吐いているが、「トラフィック」のように麻薬の密売にからむ巨大カルテルの問題など、たしかに頭痛のタネだろう。

隣国と地続きのないわれわれ日本人には実害はない領土隣国感覚が、とにかく一方的なメキシコからの不法密入国のトラブルは、かつて多くの映画で描かれたが、この作品は政治色のないのがいい。

実にストレートでシンプルなストーリーで、数人で密入国した若いメキシコ人の男女グループが、まるで<椅子取りゲーム>のように、ひとり、またひとり、と殺されて行くサスペンス。

しかも狙い撃ちするのが、あの「ボーダー」のジャック・ニコルソン国境警備員のようなプロではなく、ただの酔っぱらいガンクレイジーの無頼漢射撃魔、というのが超おっかない。

とにかく政治的な思想もなく、ただ<ヒューマン・ハンター>として、執拗に密入国者を狙い撃ちして殺害していくというのは、違法ではないにしても、ただのシリアルキラーなのだ。

映画はメキシコから密入国した若者たちの、ただただ逃げ回るアクション映画で、オール荒野のロケだから、ジョン・フォードの名作「三人の名付親」みたいに、単純な逃亡アクションとなる。

この理屈抜きの映画的なセンスが、いかにもキュアロンの家伝の映画感覚で、よけいな政治思想や、過去の理屈がなくて、まさにビッグ・スクリーンで見るスポーツ・ゲームのような痛快な印象。

ラストは密入国青年ガエルと、クレイジーにマンハントを展開するハンター、ジェフリー・ディーン・モーガンと、その狂犬シェパードの一騎打ちとなり、まさに息つく間のない追っかけだ。

灼熱の太陽の荒原だけを、ただ追いかける男と犬、そして逃げる青年の映画的なストレートなダイナミズムは、ふとグレゴリー・ペックの「レッド・ムーン」の素晴らしさを思い出してしまった。

 

■ライト前のゴロのヒットを野手がもたつく間に、あっという間のスリーベース。 ★★★★

●5月5日より、TOHOシネマズ、シャンテ他でロードショー 


●『ビニー/信じる男』の奇跡的リベンジには、コーチの尽力が欠かせない。

2017年04月14日 | Weblog

4月7日(金)10-00 六本木<アスミック・エース試写室>

M-042『ビニー/ 信じる男』" Bleed for This"(2016)   The Solution Entertainment Group / Magna with Sikelia Productions. Verdi Productions

監督・脚本・ベン・ヤンガー 主演・マイルズ・テラー、アーロン・エッカート <117分・シネマスコープ> 配給・ファントム・フィルムズ

たしかに「レイジング・ブル」や「傷だらけの栄光」「殴られる男」「ロッキー」など、ハリウッド映画には、ボクシング映画が多いが、これまたリングに復帰しようとしたボクサーの奇跡的実話。

野球やサッカーのようなチーム・プレイのスポーツでないボクシングは、多人種のるつぼのアメリカ都市で生き抜く若い男にとっては、とにかく腕力と根性で栄光を手に出来る手段だ。

レスリングのようにルールも厳しくなく、体重のレベルで相手と殴り合うだけのフットワークと腕力と根性のスポーツで、あの「天国から来たチャンピオン」などはリメイク前の話はボクサーだった。

この主役の<ビニー・パジェンサ>は、世界ジュニア・ミドル級のチャンピオンで、ロードアイランド州のプロビデンスを拠点にして王座を死守していたが、ある日、交通事故で重傷を負った。

首の骨を折る重傷で入院したが、奇跡的に命はとりとめたが、当然、スポーツ選手としては絶望的で、首は動かせないので、アタマと肩には鉄骨の機具が固定されて、致命的に身動きはできない。

しかしビニーは持ち前の根性で退院し、肩とアタマに固定した機具はそのままにして奇跡的に生活に復帰はしたものの、まさに<首の回らない生活>の状況で、彼にとってはボクシング以外に手段はない。

トレーナーのアーロン・エッカートは、「ハドソン川の奇跡」でのコパイロットのように、誠実に大けがのボクサーの話を聞き、人生のパートナーとしてビニーの悩みを聞くが、とても復帰は無謀だ。

最近、「沈黙」を発表したマーティン・スコセッシは、いまは「ビートルズ」の復刻映画などの製作の手助けをしているが、あの名作「レイジング・ブル」を監督してからの熱血ボクシング・マニア。

ここでは作品のプロデューサーとして企画に参画しているが、やはり貧しいアメリカ底辺の人間達のエネルギーをテーマにすると、あの早口のおしゃべりのように、この企画にも口と金を出してバックアップ。

だからスポーツ選手の奇跡的なカムバック実話だが、さすがの映画根性で人情味とパワーに溢れたリベンジ映画としての男気は熱く、ほとんどマイルズ・テラーの怒りの情熱で押し切る迫力だ。 

監督のベンはプロのオートバイレーサーという異色の才人だが、やはり男の一本気を前面にだして、ひとりの男の復活のドラマとして押切り、あの「セッション」で好演したマイルズを熱く撮る。

意外や、あれれ、禿げ頭のコーチに変装したアーロン・エッカートは相変わらずの好サポートだが、エンド・クレジットで、実際のコーチと同じ扮装だったのには、役者根性の凄みを感じさせた。

 

■強いゴロがサードのグラブを弾き、好走のセカンド。 ★★★☆ 

●5月、ロードショー