●10月20日(火)13-00 外苑前<GAGA試写室>
M-134『黄金のアデーレ・名画の帰還』" Woman in Gold " (2015) The Weinstein Company / BBC / Origin Pictures 英
監督・サイモン・カーティス 主演・ヘレン・ミレン <109分> 提供・ギャガ、カルチャー・パブリシャーズ
別にこの傾向は悪い訳ではないが、この作品もまた、<真実をもとにした・・・>という保証ブランド実話映画化作品で、その意外性は創作によるものではない。
最近は、ヒトラーやチャップリンやジョン・レノンなどなどの、有名人の秘話という発掘美談やら、極秘事実が掘り起こされて映画化されて、ヒットする傾向が顕著。
たしかにオリジナルを発想する苦労よりも、往年の名作リメイクや、このような隠れていた真相を見つけ出して映画化した方が、制作的にも興行的にもリスクは少ない。
この映画のテーマも信じられないような実話だが、あのマリリン・モンローの晩年のエピソードを映画化した「マリリン、7日間の恋」のサイモン監督だから手際がよろしい。
という、今回の珍しい事件もまた「ミケランジェロ・プロジェクト」同様に、戦争の勝利品として没収していたクリムトの肖像画が、その本来の所持者が裁判で奪還するという美談なのだ。
もともとはクリムトが伯母のアデーレをモデルにして1907年に描いたという肖像画が、戦争中にナチスによって奪われて、戦後はオーストリアの美術館に保管展示されていた。
「黄金のアデーレ」と題されたそのキャンバスは、純金をちりばめたクリムトとしても最高の名画として高い評価をされて、世界の名画としても高い人気のあった超高価もの。
ところが、その名画のモデルが、実は亡くなった叔母であり、その作品は戦前にウィーンの自宅にあったものだから、当然、本来の家族が所有すべきものだと訴えたのが老嬢のヘレンなのだ。
現在ロサンゼルスに住む彼女は、亡くなった姉の生前の意思を継いで、以前は記憶のある伯母の肖像画を、当然の私財として自宅に戻すべきだ、という訴訟をオーストリアに訴えた。
こんなリスクの高いバカみたいな訴訟を引き受ける弁護士もいないのは当然で、友人の紹介で新人の駆け出しロイアーに協力を依頼することにしたのだが、話は難題が山積み。
ま、そこは老嬢のヘレン・ミレンの達者でユーモラスなボケ演技で、若いライアン・レイノルズも、これはキャリアの足かせになるだろうという軽い気持ちで引き受けたのだが、さあ大変。
映画は、あの傑作「ガーディング・テス」でのシャーリー・マクレーンと、若いボディガードのニコラス・ケイジのコンビのような軽妙な味わいで、意外や国を相手にして大転回となる。
まさか、と思うような裁判なども意外な逆転勝利で、結局はハッピーエンドで、とうとう老嬢は世紀の名画を家族のものとして奪還するから、めでたし、めでたし、なのだ。
■サインを無視して痛打したライナーが左中間を転々のツーベース。 ★★★☆☆
●11月27日より、シャンテシネなどでロードショー