梅雨入り宣言直前のちょうど一週間前、石川の渓でイワナたちに遊んでもらった。
実は石川で竿を出すのは今回が初めてなのだ。海でも、渓でも、湖でも経験がない。隣の福井や富山には時折り釣行するのだけれど、少し奥まっているからなのかな、石川にはこれまで不思議と縁がなかった。
そこで今回の遠征ではまずこの地の渓魚に遊んではもらえまいかと、真っ先に石川へと車を走らせたのである。
ガイド役をお願いしたのは、ここのブログでも何度か登場したことがある、地元アングラーの前田さん。
七時間半のドライブののち彼を拾い、さらに一時間半をかけてよく通っているという、オススメのイワナの渓へと向かう。道すがら、この地の渓事情などをロコアングラーからつらつら聞くのもまた楽しい時間だ。
腱鞘炎が治りきらない右肘をサポーターでカバーし、いざ入渓。真っ先にオススメしてくれただけあって、実に愛らしい渓だね。
見上げれば一点の曇りもない青空が広がる。朝から強い日差しが差し込み、もう真夏じゃないかと錯覚させられるほどだ。最高に気持ちいいじゃないか、ビールが飲みたいな。
それはさておき。ところがところが。遠路やってきたゲストになんとか釣らせたいという彼の意に反して、イワナはどちらにもまったく釣れない。彼はミノーを諦め、小さなスピナーで様子を見たりするものの、やる気のないチェイスはあってもやっぱり釣れない。
聞くと、地元の彼でも初めて見るほどの渇水だとのこと。
まったく大丈夫、よくあることだよ。なかなか釣れないなんて地元、神奈川の渓ではちっとも珍しくないから安心して。
二時間ほど釣り上がったがやはり芳しくないので、ここで退渓とする。
わずかに顔を曇らせた彼がふたたび提案してくれる。入渓までちょっと・・いやそこそこ厳しい山道を歩くけれど、もう一本のお勧めの川へ行こう。閉ざされた渓だから、行ってダメだったらもう逃げ場がないんだけれど、と。
行こう行こう。聞くと一時間ほど傾斜のある山道を歩くらしい、そこでウェーダーを脱ぎ、ウェットゲーターにチェンジ。
ここも素晴らしい渓だね。思っていたより特に登り始めの傾斜がキツく、休憩しつつ山を一つ越えての再入渓となった。
いったん畳んだ竿を取り出しセットしていると、ぴゅーと口笛が鳴る。顔を上げると前田さんさっそくのキャッチ。あはは、いるね。
私にも釣れた。初めて見る石川のイワナだ。ここも水は少ないようだけれど、要所要所でどちらかにはヒットやチェイスなどの反応を得られることが多かった。
前田さんがキャッチした、尺には届かなかったものの今日イチのイワナ。なかなかイイ顔つきのイワナだった。
ソリスト50MD2にもヒット
スリムで頭が大きく、沢に潜むイワナそのものだった。でもちょっと痩せすぎだよね。
ソリストシャッドにも。有望なポイントではトレースコースを変えて、交代でイワナをキャッチしたり。
前田さんも40DD FSで。この直前、前田さんのこのFSにヒットしたイワナは大きかったみたい。喰ったのはいいけれど、しっかりフッキングせずアワセと同時にすっぽ抜け。この日はこういうアタリが多かったな。
これを獲っていればと、悔しそうな彼。これも釣りだね。
少し日が陰ってきた。名残惜しいぐらいよい渓だったけれど、山越えもあるし、そろそろ退渓の時間だ。
最後のポイントでも二人揃ってキャッチ。こういうの嬉しいよね。
同じポイントを上手くシェアできるって、一緒に川を歩く上では大切なことのひとつ。
初めて一緒に竿を出した彼と、特に口頭で何かを確認しあったわけじゃなけれど、普段のお互いの蓄積だったり、様々があってこその暗黙と感じたな。
虫が多く飛ぶ、豊かな渓で遊ばせてもらう幸福な時間。
おかげで帰りの山越えの足取りはずいぶんと軽かった。
初めての石川はイワナも山も、そして人も大らかに私を包んでくれた。ありがとう。
今度はさ、テントを持ってあの先まで行ってみようよ。
タックル
ロッド:レヴェルトラウト50MT
ステラc2000+ナイロン4lb
ミノー:ソリスト40DD、同FS、50MD2、ソリストシャッド50、50㎜ミノーetc
photo by 前田さん、小平
report by 小平