皆様、こんばんは。東北行脚の続編です。
東北行脚・4日目
実質的に梅雨明け直後である。
一里一匹、であるとか夏ヤマメの難しさは昔から釣り人の間で様々に言い慣わされてきた。
事実その通りで、この時期、梅雨の明ける頃からは降雨不足や取水による減水、照りつける日差しによるプレッシャー、高水温と共に落ちる活性、食性の変化などによりそうは簡単にミノーを追ってはくれなくなる。
流芯にも付くが、ボサや岩陰などによりタイトに潜り込み、捕食活動はもっぱら朝夕を中心とし、その対象もこの時期はより捕食しやすい昆虫類、毛虫の類が多くなると思われる。
流れに出るまでもなく、ボサ周りやシェードに身を潜めてこれらの水面落下を待てばよい訳だから、彼らはよりミノーを追い難くなるのだろう。
しかしもちろん、この難しい梅雨明け後の夏、しかも日が高く昇った後でも流芯に身を潜め、やる気を見せる個体は確実にいる。しかも往々にしてこういう個体にはボサに身を潜め、背尻をチョロチョロする個体に比べ、平均して良いサイズが多いと感じるし、それを追いかけたくなるのは釣り人の性なのではないかと思うのだが。
・すっかり日が出、汗が滲む頃、高速トゥイッチに流芯から凄い勢いでミノーにアタックした夏ヤマメ。
夏の釣りでは朝一番にヤマメを狙い、日が上ってからはイワナの沢に潜り込むのが僕の常套である。
しかしこの日は少々寝坊したために6時頃から動き始めたこともあり、朝からイワナ狙いでいくつかの沢を目指すが、入渓を考えていたどの林道も工事中などで立ち入り禁止の憂き目にあう。
仕方なく一旦山を降り、ヤマメのいそうな里川を目指したのだ。
・散ったレッドバンドがアマゴの朱点に見えなくも無い、少しサビたような体色。
周囲の環境に合わせたのか、背は深目のモスグリーンだ。黒点の一部も朱点に変わりつつあり、早くも秋を感じさせる。そんなヤマメを目前にし、併せて残された今シーズンを思う。
流芯に残る夏ヤマメはこの時期、驚くような速さと勢いでルアーに襲いかかる。そのルアーを引っ手繰る激しさは一度味あうと何物にも代え難く感じられ、喜びもひとしおだ。
誰に何と言われようと、自分勝手に一匹の価値を上げていくのが僕の釣りなのだから。
一匹目も、十匹目も、同じように心震わされ、出来ることなら何時までも記憶していたいのだ。
小堰堤の落ち込み、ボサに潜むヤマメも含め、時折混じるイワナにも存分に遊んでもらい、この日は昼過ぎに川を上がる。
連日して朝から夕暮れまで川を歩き、ヤブを漕ぎ、少々疲労が溜まったようだ。
午後は大好きな温泉にでもゆっくり浸かり、名所巡りも良いな。
平泉・中尊寺はまだ見たことが無い。少々足を延ばしてみたくなる。
東北行脚・5日目
前日午後はのんびりと過ごし、お陰で今朝は早朝4時には爽快に目覚める。当初は昨日で東北を後にする予定だったが、どうにも後ろ髪を引かれ、あともう一日だけ遊び呆けることにした。
ここは岩手。太平洋に注ぐ素晴らしい単独河川がいくつも存在する。
・以前にも訪れたことのあるヤマメの川だ。
一日は始まったばかり、まだ穢れの無い、生まれたばかりのこの空気を胸一杯に吸い込む。
山間部、夏の早朝はいつでも僕に特別な感傷を呼び起こす。
今この時、急速に育ちつつある稲に山水が混在したこの匂いにクワガタを追い、川遊びを覚えたあの頃の記憶が瞬時に呼び起こされるからか。
まだ薄暗い中にいくらか残るモヤ。今日も暑く、良い一日の気配に満ち満ちたこの瞬間を僕は何よりも愛す。
この気持ちを伝えたいと思えど、残念ながら相手は女性でなく魚であり、山水なので今日もこうして胸まで川にどっぷりと浸かり、少しでも一体となる事でそれらとお近づきになりたいと願うのである。
願いは聞き届けられ、流芯を探る僕のお気に入りのミノーに電撃が走る。美しいヤマメが目を大きく見開き、全身を晒す。
・午前のうちに別の水系に入る。この水系も経験があるが、未体験の支流をいくつか探ってみた。
40MDS・ヤマメ。50MDに負けず劣らず、40MDも大活躍。
・これも40MDS。
・これは50MDS・アユ。アユを追ってはいないが本当によく釣れたカラー。
・黒石と背黒ヤマメ。
東北行脚、最終日は欲張った。
午後も良い時間からもう一つ山を越え、別水系へ。
石に苔や垢が付きやすい川とそうでない川があるのは何故だろう。水質、水温、石の質。どれも正解だろうが、釈然としないことも経験上、多い。
水量の多少、日差しが差し込んでいる、いないに関わらずこの付近の川はどれも黒い。もともとが黒っぽい石が苔むし、さらに黒ずむから川そのものが黒く映るのだ。
よくよく気をつけないと足元をすくわれる。
ヤマメの方が多い川だったが、やはり背は黒味の強い固体が多かった。
そしてこの川は手強かった。
走る影から、かなりの数のヤマメが棲息していることがわかる。が、なかなか口を使ってくれず、難儀する。
汗をかきかき、気難しいヤマメに翻弄される。それでも東北の渓は今日も二桁以上の釣果をもたらせてくれ、ふと暮れつつある夏の青空を見上げながら、満足ともため息ともつかぬ一息をつく。
日も陰り始めたが、まだまだ歩けるぞ。
・今釣行を締めくくるヤマメ。
一日の釣りを終え、林道や農道をひとり車までトボトボと帰る道程も、僕は大好きだ。
満足したような、そうでないような今日一日の自分の釣りを振り返りつつ、幾ばくかの後悔を引きずり、後ろ髪を引かれながらの道程。
時に長い帰り道。
あいつ、どうすれば食わせられたのだろう。
あいつをバラシてさえいなければ・・
いつの日にかと、再訪を誓う。
今日の苦楽を噛みしめながら、トボトボとひとり帰る道程が大好きだから。
*後日追記です。
きょう未明、岩手を中心に大きな地震がありました。被害に遭われました方々にお見舞いを申し上げると共に、早期の復興を祈っております。