今日12月9日は文豪、開高健の命日。
32年前のこの日、夕方玄関で靴を履いていたらうちのお袋が`開高さん亡くなったってニュースで流れてる`と。よく覚えている。
残念ながら開高さんにお目に掛かったことは一度も無いが、親父の学生時代の釣り仲間が開高さんが作家デビュー前に勤めていた寿屋(現サントリー)で開高さんとともに働いていて、サハリンでの釣りを一緒させてもらった際、毎晩のように聞いた開高さんの素顔。
釣り人にはオーパ!があまりにも有名だけど、文豪が書いた小説はどれも、特に「夏の闇」が好きだった。ドイツの湖でパイク釣りにうつつを抜かす開高さん自身の影。暮れてゆく北国の湖、パイクの跳躍。
そういえば開高さんが釣り歩いた世界の中で、偶然にも二度、私もまったく同じ場所で釣りをする機会があった。最初はアラスカ・キーナイ川でのキングサーモン。二度目はモンゴル・チュロート川でのタイメン。
オーパ!で散々見た同じ風景に自分が立っていることにハッと気が付く瞬間があった、タイムスリップってああいう感覚を言うのかな。モンゴルではなかなかよいタイメンが釣れなくて、いよいよ明日が最後っていう夜、ゲルの中でヒゲを剃って験担ぎしてみたら、翌日110cmが釣れたっけ。
「夏の闇」のことは鱒の森さんに。「モンゴル紀行」はGijieさんに連載をもらい、開高さんに少しだけ関われた、近づけた気がしたもの。
書き始めるとキリが無いな。そうだそうだ、久し振りに記念館に行こう。会ったことが無い開高さんに会いに。合掌。
チュロート川。文豪もこの崖を下ってタイメンに挑んだ。
ヒゲを剃って験を担いだら釣れた110cm。大物が釣れず最後まで苦労して、ようやくのメーターオーバーだった。
遊牧民の少年が自分たちのやり方で釣る。ひとりで釣っていた私に興味津々、近くに寄ってきたのでしばし一緒に釣った。別れ際にルアーを一個ずつ進呈したら凄く嬉しそうにしていたのを思い出す。
友の会に入るともらえた講演集と、好きだった夏の闇。