小中学校の教育現場に、ナショナリズムの思想が注ぎ込まれつつある。この
ことを産経新聞の社説で知った。
このほど公表された小中学校の新学習指導要領の解説書では、日本の領土に
関する記述が増えたほか、自衛隊の役割が明記されるなど、国の守りについ
て理解を深める学習が強化されたという。
領土については、今年3月に告示された新指導要領で、北方領土に加え、竹
島や尖閣諸島について「我が国固有の領土」と明記されたが、この解説書で
は、小5の社会科で、竹島は韓国に不法占拠されていることなどを明記して
いる。
また、中学社会の公民分野では、渡航制限や船舶拿捕(だほ)の事例や、日
本側に死傷者が出た事件のほか、北朝鮮による日本人拉致問題についても取
り上げるなどして、国の安全が脅かされている国際社会の厳しい現実を教え
ようとしている。
ご多分に洩れず、タカ派の傾向がある産経新聞は、「子供のころから自国に
ついて理解を深める意義は大きい」として、教育現場のこうした動向を肯定
的にとらえ、次のように述べている。
北朝鮮が弾道ミサイル発射など暴挙を繰り返す中、武力攻撃やテロなどから
国民自らが身を守る避難などについても周知が欠かせない。学校の防災教育
などを通じて適切に取り上げるべきだ。
自衛隊については、災害時の救助活動だけではなく、解説書で「我が国の平
和と安全を守ることを任務とする」と役割を明記したのも当然である。
(産経新聞 6月29日付《小中学「解説書」 国の守りに理解深めよう》)
だが、どうなのだろう。「国の安全が脅かされている国際社会の厳しい現実」
を小中学生に教えるのは、はたして良いことなのかどうか。ナショナリズム
によって培われた排外主義は、グローバリズムの傾向を強める国際社会の
なかで、どういう結果を招くのだろうか。
卑近な例で考えてみよう。近年は不良アダルトによって、子どもの安全が脅
かされる事例が増えている。つい最近も、小学生の女児が乱暴された上、殺
害される事件があったばかりだ。犯人として逮捕されたのは、同じ小学校の
保護者会副会長をしていた男だというから、何を信じたらいいのかが分から
なくなる。
女児の父母は「大人を見たら鬼だと思いなさい。声を掛けられたら、すぐに
逃げるんですよ」と教えて育てるだろう。
その結果、他人を敵と見なし、だれも信じられなくなった女児が大半を占め
るようになったら、この社会は一体どういうことになるのか。
そうなった社会を私は考えたくないが、とはいえ、「他人は皆、敵」と教え
込まないほうが良いのかというと、その考えにも首肯できない自分がいるこ
とも否定できない。
さて、「国の安全が脅かされている国際社会の厳しい現実」を小中学生に教
えることの是非であるが、この問題についても、私のスタンスは定まってい
ない。だからこそ言うのだが、こういう問題に関しては、文科省は有識者に
よる諮問委員会を編成し、そこに検討を委ねたらどうだろうか。
小中学校の解説書の、その基本方針を定めるのは、いかなる部署なのか、寡
聞にして私は知らない。まさかそこにまで「総理のご意向」が及んでいるわ
けではないだろう。文科省のお役人が揃ってバリバリのナショナリストだと
も考えにくい。こういうときにこそ文科省のお役人は、「忖度」の気遣いな
どは排し、良識に従って教育行政を進めて欲しいものだ。
ことを産経新聞の社説で知った。
このほど公表された小中学校の新学習指導要領の解説書では、日本の領土に
関する記述が増えたほか、自衛隊の役割が明記されるなど、国の守りについ
て理解を深める学習が強化されたという。
領土については、今年3月に告示された新指導要領で、北方領土に加え、竹
島や尖閣諸島について「我が国固有の領土」と明記されたが、この解説書で
は、小5の社会科で、竹島は韓国に不法占拠されていることなどを明記して
いる。
また、中学社会の公民分野では、渡航制限や船舶拿捕(だほ)の事例や、日
本側に死傷者が出た事件のほか、北朝鮮による日本人拉致問題についても取
り上げるなどして、国の安全が脅かされている国際社会の厳しい現実を教え
ようとしている。
ご多分に洩れず、タカ派の傾向がある産経新聞は、「子供のころから自国に
ついて理解を深める意義は大きい」として、教育現場のこうした動向を肯定
的にとらえ、次のように述べている。
北朝鮮が弾道ミサイル発射など暴挙を繰り返す中、武力攻撃やテロなどから
国民自らが身を守る避難などについても周知が欠かせない。学校の防災教育
などを通じて適切に取り上げるべきだ。
自衛隊については、災害時の救助活動だけではなく、解説書で「我が国の平
和と安全を守ることを任務とする」と役割を明記したのも当然である。
(産経新聞 6月29日付《小中学「解説書」 国の守りに理解深めよう》)
だが、どうなのだろう。「国の安全が脅かされている国際社会の厳しい現実」
を小中学生に教えるのは、はたして良いことなのかどうか。ナショナリズム
によって培われた排外主義は、グローバリズムの傾向を強める国際社会の
なかで、どういう結果を招くのだろうか。
卑近な例で考えてみよう。近年は不良アダルトによって、子どもの安全が脅
かされる事例が増えている。つい最近も、小学生の女児が乱暴された上、殺
害される事件があったばかりだ。犯人として逮捕されたのは、同じ小学校の
保護者会副会長をしていた男だというから、何を信じたらいいのかが分から
なくなる。
女児の父母は「大人を見たら鬼だと思いなさい。声を掛けられたら、すぐに
逃げるんですよ」と教えて育てるだろう。
その結果、他人を敵と見なし、だれも信じられなくなった女児が大半を占め
るようになったら、この社会は一体どういうことになるのか。
そうなった社会を私は考えたくないが、とはいえ、「他人は皆、敵」と教え
込まないほうが良いのかというと、その考えにも首肯できない自分がいるこ
とも否定できない。
さて、「国の安全が脅かされている国際社会の厳しい現実」を小中学生に教
えることの是非であるが、この問題についても、私のスタンスは定まってい
ない。だからこそ言うのだが、こういう問題に関しては、文科省は有識者に
よる諮問委員会を編成し、そこに検討を委ねたらどうだろうか。
小中学校の解説書の、その基本方針を定めるのは、いかなる部署なのか、寡
聞にして私は知らない。まさかそこにまで「総理のご意向」が及んでいるわ
けではないだろう。文科省のお役人が揃ってバリバリのナショナリストだと
も考えにくい。こういうときにこそ文科省のお役人は、「忖度」の気遣いな
どは排し、良識に従って教育行政を進めて欲しいものだ。
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