ささやんの天邪鬼 座右の迷言

世にはばかる名言をまな板にのせて、迷言を吐くエッセイ風のブログです。

高浜原発の闇を推理する

2019-10-04 14:01:04 | 日記
実に複雑怪奇、奇々怪々。福井県高浜町の闇には、ますます深い霧が立ち込め、さながら推理小説の様相を呈してきた。この推理小説の主人公は、もちろん高浜町の元助役、故・森山栄治氏である。関西電力の経営陣に総額3億2000万円もの金品を贈ったとされる人物であるが、彼はなぜそんな大金を関電に貢ぐ必要があったのか。

そんな疑問がわき上がるのは、森山氏と関電側との関係性がイマイチ不透明だからである。興味深い記事を読んだ。「ダイヤモンド・オンライン」に10月3日付で掲載された記事《関電がパワハラ被害者面する一方で言及を避ける「不都合な真実」》(筆者はノンフィクションライターの窪田順生氏)である。

この記事は、関電が記者会見の資料として公表した社内調査委員会の「報告書」を丹念に読み解き、次のように書いている。

「その(森山氏のいう)『世間に明かしたら大変なこと』を握っているということが、森山氏に対する関電側の『恐怖』の正体になっている可能性がある。
例えば、原発行政の信頼を粉々にするような癒着や不正。あるいは、原発の安全性を根底から覆すような問題の隠蔽や、当時の常識的にも完全にアウトという裏仕事の可能性もある。
そんな小説やドラマみたいなことがあるものかと笑うかもしれないが、事実として森山氏が役場にいた時代、関電の原発はかなり深刻な『危機』に陥っていた。
(中略)
当時、アメリカのスリーマイル島の事故もあって、原発の危険性が国際的にも指摘されていた。事故が続く高浜原発にも反対派が集結し、森山氏と関電が二人三脚で進めていた3号機、4号機の安全審査をやめさせようと、公開ヒアリングには全国から反対派市民団体が500人押し寄せたこともあった。
が、こんな『逆風』の中でも3号機と4号機は稼働した。今の感覚からすれば、あまりにも強引な原発推進に、『誘致や地域の取りまとめ等に深い関わりをもった』(報告書)森山氏が大きく寄与したことは間違いない。」

記事によれば、関電は「原発の危険性」という〈弱み〉をかかえ、森山氏は関電側のその〈弱み〉を握っていた。通例であれば、〈弱み〉を握られた側が、〈弱み〉を握った側に(〈弱み〉をバラされないよう)金品を貢ぐものだが、このケースでは、〈弱み〉を握った森山氏が、逆に、〈弱み〉を握られた関電側に3億円もの金品を貢いでいた。「受け取らなければ、お前の家にダンプを突っ込ませるぞ!」などと、ヤクザまがいの脅し文句を並べたててまで、関電の幹部に金品を握らせていた。それは一体なぜだったのか。森山氏と、関電と。両者の関係性は、完全に私の理解を超えている。

松本清張の推理小説には、貧しい寒村で生まれ育った主人公が、社会の混乱に乗じ、悪に悪を重ねながら、社会的な地位を獲得していく有様が描かれている。森山氏も高浜町という若狭湾の一寒村で生まれ育ち、高浜町の助役となって「影の町長」、「神様」、「天皇」などと呼ばれる地位に登りつめるまでには、関電の原発誘致工作にからんで、さまざまな〈悪〉に手を染めたに違いない。

その過程で、森山氏は自分が「世間に知られたら大変なこと」を関電側に握られたと思い込んだのかも知れない。そう思わせた誰かーーXーーがいたのかも知れない。この「大変なこと」を隠蔽するには、無理にでも関電側に「汚いカネ」を握らせ、相手を共犯者に仕立てるしかない、ーー森山氏にそう思わせ、自ら多額の「汚いカネ」をせしめた裏社会のワルーーXーーがいたのかも知れない。

こうして素人の妄想は限りなく広がるが、小説作品ともなれば、主人公を苦しめるそのあたりの心理的葛藤が、推理の山場になるはずだ。だが残念なことに、私にはそれが書けない。ああ、自分に作家の才能があればなあ、と、非現実的な願望をいだく天邪鬼爺のこの頃である。
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