ヒマローグ

毎日の新聞記事からわが国の教育にまつわる思いを綴る。

クビも辞任も無責任

2018-05-23 07:59:13 | 我が国の教育行政と学校の抱える問題

「日本式」5月20日
 『日大監督辞意 「これが区切りではない」』という見出しの記事が掲載されました。『アメリカンフットボールの名門、日本大フェニックスの内田正人監督(62)が19日に辞意を表明した』ことを報じる記事です。記事によると『悪質タックルを呼んだ指示の有無は明言していない』とのことです。
 こうした対応について、早稲田大教授友添秀則氏は、『何も説明せずに全て自分が悪かったというのは日本的な責任の取り方で残念だ』と述べていらっしゃいます。私は、教委勤務時代に教員の処分に関わる職務を担当していたことがあります。その経験からして、友添氏の指摘には共感できます。それと同時に、日大側の対応の拙さに驚かされます。
 教員が不祥事を起こしたとき、事実関係を明らかにしないまま、辞職するということはあり得ません。教委側がそれを認めないからです。教員の処分には、本人を罰するという意味以外に、再発防止に生かす、被害者やその保護者に対する説明責任を果たす、処分の透明性・公平性を明らかにし教育行政への信頼を確保する、などの意味があります。いずれも、事実を明らかにすることなしには成立しないのです。そして、事実を明らかにするには、きちんとした調査が必要であり、きちんとした調査を行うためには、「処分される者」に調査への協力を命ずる必要があります。警察など強制捜査権をもつ組織と違い(大学も同じ)教委には、自分の管轄外にある個人に協力を強制する力はありません。だからこそ、「処分される者」を辞職させず、管轄下に置き、調査を行うのです。
 もちろん、いくら取り調べをしても、当事者が何も語ろうとしないケースもあります。そのように、当事者にとって不利だと思われる疑問に対して何ら語らない場合は罪状を認めていると解釈し、その旨を告げ、それでもなおかつ話す意思がないことが確認できれば事実認定をするのです。
 今回の日大の対応について、被害を受けた関学の選手の関係者は納得していないようですし、アメフト界全体の体質を問われるという危機感も高まっているということです。それは前述した、再発防止、説明責任、信頼の維持いずれの視点から見ても当然なことです。
 教委在職時、体罰やわいせつ行為をした教員について聞き取り調査をしている最中に、「早くクビにしろ」「教員をかばっているのか」「隠蔽に時間をかけているんだろう」などという非難に曝されることがじばしばありました。そうではないのです。さっさとクビにするというのは、実は最も無責任な対応なのです。

 

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