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Xeroxを高値で売り損ねた四面楚歌のカール・アイカーンはどうする?

2021年02月13日 | 会社

今までの経緯

 

カール・アイカーンは、2018年の富士フイルムによる米Xeroxの買収計画に割って入り、米Xeroxの経営陣を刷新して、富士フイルムによる米Xeroxの買収を阻止した。2020年には、アイカーンはHPの買収を企てたが、新型コロナウイルスの影響で株価が下落し、あえなく頓挫した。

 

そして、2021年3月には、富士ゼロックスと米Xeroxは販売提携を解消することになる。富士ゼロックスは“Xerox”ブランドを使えなくなり、「富士フイルムビジネスイノベーション」に社名を変更する。ただし、現在富士ゼロックスが製造している米Xerox向けの複合機は、5年間だけ製造を継続する。米Xeroxの複合機は、全量?富士ゼロックスが製造しているらしい。

 

これらの経緯は

2018年5月22日のブログ「ペーパーレス その1 富士フイルムが米ゼロックスを買収するってすごい!

2020年1月18日のブログ「富士ゼロックスはゼロックスでなくなる

に書いている。

 

米Xeroxに関する今までの経緯

2018年1月

富士フイルムHDが米Xeroxを買収することで合意

2018年5月

米Xeroxの経営陣が交代、新経営陣が合意破棄を通告

2019年11月

富士フイルムHDは、米Xeroxを買収する案を撤回

2019年11月

Xeroxは米HPを買収することを提案

2020年3月初め

Xeroxは1株当たり24ドルで、HPへのTOBを発表(TOB発表当時HP株価は21ドル)

2020年3月末

XeroxはHPへのTOBを中止(HP株価は21ドル→17ドルに下落したので。Xerox株価も32ドル台→18ドルへ下落した)

2021年3月

富士ゼロックスと米Xeroxは販売提携を解消し、富士ゼロックスは「富士フイルムビジネスイノベーション」に社名を変更する。

 

HP買収計画とその頓挫

 

カール・アイカーンは、米Xeroxの価値を上げるために米HPとの合併を模索し、2020年3月初めにHPへのTOBを発表したが、新型コロナウイルスによるHP株価の下落で、約1か月後にTOBの中止を発表した。

 

新型コロナウイルスの影響で17ドルに下がったHPの株を、24ドルのTOB価格で買うといえばTOBは成功するけど、カール・アイカーンは大きな損を抱えることになるので、中止は当然。

 

その後、アメリカ株式市場の平均株価は回復し、米HPの株価も回復したが、米Xeroxの株価は低迷したままという残念な状態。

 

カール・アイカーンは米Xeroxと米HP両方の大株主だったので、米Xeroxの株価の大幅な下落で大損を抱えているはずだけど、カール・アイカーンが米Xeroxをどうするかという近況は流れて来ない。

 

アイカーンは金に困っている?

 

アイカーンが金に困っているのでは?と推測できる記事がある。

 

・「ハーツ」株で大損か?

2020年5月28日の朝日新聞デジタルには「米富豪アイカーン氏、破産申請のハーツ株すべて売却」という記事があった。新型コロナウイルスの影響で、レンタカーの「ハーツ」が破綻し、ハーツ株の39%近くを保有する筆頭株主のアイカーンは「ハーツ」株を1株当たり0.72ドルで5534万株すべてを売却したというもの。計算すると、アイカーンは約40億円を手にしたことになる。しかし、2019年末時点で、アイカーンのハーツ株保有分の価値は7億ドル近かった(700億円くらい)ので、660億円くらいは損しているはず。

 

・米ハーバライフの保有株の半数超を売却

2021年1月4日のThe Wall Street Journalに「アイカーン氏、米ハーバライフの保有株の半数超を売却」と言う記事が出ていた。栄養補助食品メーカーの米ハーバライフ・ニュートリションの保有株の半分超を売却し、約6億ドル(約600億円)を得た。米ハーバライフは経営でゴタゴタしているので、ここが潮時と見切ったのか、あるいは現金が欲しかったのかわからない。しかし600億円あれば、ハーツ株の損を埋め合わせることが出来る。

 

米Xeroxはこのままでは野垂れ死

 

前のブログにも書いたけど、米Xeroxとの販売提携を解消しても、富士フイルム/富士ゼロックスは困らない。ただし、富士フイルム/富士ゼロックスにしても、米Xeroxにしても、ペーパーレス化のさざ波が次々と押し寄せて来るので、複合機やその消耗財が減少を続けるという根本的な問題は残る。そこに新型コロナウイルスの影響が加わる。

 

富士フイルム/富士ゼロックスよりつらいのは、米Xerox。米Xeroxの根本の問題は、富士ゼロックスに複合機を作ってもらえるのが5年間と言うこと。5年間のうちに、米Xerox向けの複合機を作ってくれる富士ゼロックス以外のメーカーを探す必要がある。5年間と言っても、米Xerox側のいろいろな準備(販売戦略や、消耗品サービス、製品配送など)、そして新しいメーカー側の準備(製品設計、生産設備、部品の手配など)の期間が必要なので、1年くらいで代わりの会社を探す必要がある。

 

米Xerox向けの複合機を作れる会社は、日本のメーカーしかない。それも、1社で全量を作れるのは(たぶん)キヤノンとリコーだけだけど、(たぶん)キヤノンはやらないだろうな。リコーが断れば、米Xeroxは途方に暮れる。コニカミノルタや東芝テック、シャープ、京セラは規模が小さいので、1社では米Xeroxの要望に(たぶん)応えられない。

 

富士ゼロックスに代わって複合機を作ってくれるメーカーとここ1年で契約できないと、米Xeroxはアウト。富士フイルムに頭を下げて契約を継続してもらうか、買収してもらうしかない。

 

つらいのは、アイカーンも同じ。アイカーンは米Xerox株を高値で売り逃げるつもりだったけど、米Xerox株は塩漬けになってしまった。アイカーンがそう簡単に白旗を揚げないと思うが、新型コロナウイルスの影響は想定外だからね。

 

2021年2月13日

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