宇野千代生誕120年、もみじ茶会
心配された冷たい雨も朝方には上がり、今シーズンのおしまいに近い紅葉・黄葉が、最後の力を振り絞って、訪れた行楽客を喜ばせていた。
ふるさとが生んだ文豪「宇野千代」の生家では、宇野千代顕彰会主催による、生誕120年という節目の「もみじ茶会」が華やかに催された。
明治期の建物を1974(昭和49)年に宇野千代自らが復元した生家と、300坪に及ぶ庭に手植えしたもみじはNPO法人によって手厚く守られ、もみじの本数は年々増えているという。もみじ茶会は、この季節を代表する地元の風物詩になっている。
小生自身かつて在籍したことのある宇野千代顕彰会。その顔ぶれは、今も大きく変わることなく、久しぶりの顔合わせに元会長さん他かつての仲間から笑顔の歓迎を受けた。お抹茶の味が一段と美味しかったような。
お茶席を預かるのは地元の諸流派による持ち回り制で、接待に当たる女性の和服姿もまたいい。紅いもみじに馴染んでいる。
しまいの紅葉、岩国もみじ谷公園
美味しいお抹茶としばしの談笑に続いて、岩国城のふもとにある紅葉谷公園に足を延ばした。
「岩国の隠れ紅葉名所」と自分で勝手に名付けているこの公園は、やはりひと味違う美しさがあり、郷愁をそそられる。
黄葉・紅葉そのものは、確かに絶頂期を過ぎた「しまいの紅葉」の感はあるが、それでも堪能するにふさわしい光景が広がる。
隠れ紅葉名所と自負していたこの場所も、観光シーズンの客足の増加は目を見張るほどで、無遠慮な中国語が飛び交う現実は、喜ぶべきか憂うべきか、思案投げ首ではある。
何はともあれ、雨上がりのしっとり紅葉もまたいい味を出し、薄日差す柔らかな紅葉谷もまた気持ちを穏やかにする。
ただし、ひとたび目線を落とすと、そこには「濡れ落ち葉」が靴の裏にまといつく。
見上げる紅葉の味わいと、枝から離れた葉が足もとで濡れ落ち葉という厄介者に変わっていくこの落差。ちょっとだけ身につまされる。