見上げればゴツゴツした石段の坂道 振り返れば真下に見えるような急坂
孫三兄弟の次男坊カー君が小学校を卒業した。
卒業記念は何にしようか、と持ちかけたら「オレ、宮島の弥山に登りたいんよ」と、彼らしい欲のない答えが返ってくる。
本当は、高価なラジコンカーが欲しい、と顔に書いてある。メーカーも品名もジジに打ち明けている。
が、いきなりそこまで話を持っていかずに、先ずはジジババと一緒の行動を優先し、折を見ておねだりするつもりなのであろう。
そんな腹を見透かしてはいない振りで、「じいちゃんばんちゃんも弥山に登りたかったんよ」ということで、実行に移すことにした。
もともと、宮島のもみじ谷公園を散策するたびに、「一度はここから弥山に登ってみたい」と話し合ってはいた。
そんなシニア夫婦にとってカー君の提案は渡りに船。ましてやエネルギーあふれる介添え人が一緒なら鬼に金棒。安心して出かけた。
望みが叶った彼は予想通り跳ぶように登る。私自身は、標高535m、大したことはないと高をくくっていた。が、実際の登山道長さは2.5km。つまり標高の約5倍の距離となっている。途中から徐々に膝の油が切れ始める。「じいちゃん、休もうか」と気遣うカー君に弱みを見せんように、後れを取るまいと頑張って登ることかれこれ2時間。360度見渡せる頂上を極めた。
頂上に立つカー君 消えずの火を守る 「不消霊火堂」
大喜びの彼を中心に記念撮影。360度の視界が広がる展望台でゆっくりの休息。
頂上に広がる大岩の景色や、自然の力の偉大さを満喫していよいよ下山の途に。「膝に来るからロープウエーにしたら?」という山の神の声を無視して、「彼の卒業記念登山だ」と見栄を張って歩いて降りることにした。
下り坂は膝への負担も大きく、疲れもあって心身共にきつい。急な坂道が容赦なく膝を襲う。痛みに負けて何度休憩したことか。
それに比べると、汗こそ流れるが頂上の弥山堂や眺望などを夢見る登り坂は楽なものだ、などと登った後だから思う。
そしてこれまでの人生道と似ていることを改めて思い知る。「人生下り坂最高・・・」などと叫ぶ人もいるが、下り坂だって心身ともに大いなる苦痛を味わうものではある。やはり、夢に向かって流す汗は心地いもののようだ。
彼の卒業記念の弥山登山であったはずが、負うた子に教えられるように、カー君が発するジジババに対する優しさや思いやりをもらう、心安らぐ楽しい一日なった。こちらが記念日の楽しい一日をもらった気分。
下山してから宮島桟橋まで足を引きずってようやく戻ってきた。家に帰ってからの湿布薬によるケアーも忘れなかった。
それにしても、あの厳島神社おわす宮島の弥山道で出会った人は7割方が外国人であった。
ほとんどがアメリカ系の人とお見受けした。家族連れ・夫婦・男同士、メンバーは様々だがなんとまあ、ここは宮島?と思いたくなるほど外人さんラッシュ。
日本の観光地はどっこもそうであるようだ。日本人が日本の良さにもっと気づくべきかな~などと、つい思いたくなる。
膝よ早く治っておくれ。まだまだ予定は詰まっている。