ひまわりの種

毎日の診療や暮しの中で感じたことを、思いつくまま書いていきます。
不定期更新、ご容赦下さい。

良薬は口に苦し

2011年02月08日 | 医療
「良薬は口に苦し」

昔から、日本の国で言われていることわざですね。
「苦し」は「くるし」でなく「にがし」と読みます。

小児科外来でよくある問い合わせというか要望のひとつに、
「美味しいおクスリにしてください」
というのがあります。
「いただいたおクスリを、こどもが飲んでくれません」
という訴えとともに、「美味しいお薬」リクエストは、
小児科診療での要望のトップかもしれません。

でも、ぶっちゃけ、この要望には、困ってしまうことがあります。(^^ゞ
なぜなら、クスリは本来、苦いものだからです。

各薬剤メーカーが、それこそ社運を賭ける情熱で、
子ども向けの「ドライシロップ(溶ける粉薬)」や「シロップ(水薬」を開発しています。
わたしが子どもの頃と比べれば、今のクスリははるかに美味しくなってますが、
でも、所詮、クスリはクスリ。
口の中で味わってみれば、やっぱり苦いのです。

今どきの世の中の風潮のせいか、子どもが嫌がることをさせることに、
罪悪感を持つ親御さんが増えているように感じています。
もちろん、「嫌がること」を無理強いしてはいけません。これは大前提です。
でも、その大前提はそれとして、
「やらねばならぬこと」を「させる」毅然とした姿勢も必要と考えています。
そして多くは、親・大人が子どもに対して「させねばならぬこと」は、
おおむね、子どもにとって「嫌なこと」です。
予防接種なんか、その最たるものでしょう。
家の手伝いや宿題だって、そうです。
(これ、わたしにだって、覚えがあります(^_^;) )

たかがクスリ。されどクスリ。

赤ちゃんの時から、美味しくないクスリを飲むことに馴れてしまえば、
つまり、いっとき我慢して、苦いクスリを「ごっくん」することを覚えてしまえば、
その後はなんてことはないんです。

赤ちゃんの頃からのおつきあいのお子さんに、初めて内服薬を処方する時、
できるだけ、飲ませ方のご説明をするように心がけています。
クスリの飲ませ方のプリントを渡して、読んでいただきます。
場合によっては、薬局で処方されたおクスリを持ってもう一度戻っていただき、
外来で実際にお子さんに飲ませてみるという実演をすることもあります。

手前味噌ですけど、赤ちゃんの頃からのお付き合いのわたしの患者さんで、
苦いおクスリだから飲めません、というお子さんは、ほとんどいません。
かなり苦いクスリでも、お母さんたちは頑張って、子どもたちも頑張って、
のんでくれます。
こぼしたり、吐き出したりの多少の失敗はオッケーです。
それで躊躇したり怖がる必要はないんです。
頑張って飲めたら、うんと賞めましょう。
ご褒美に、おいしいものあげたっていいです。ただしひとくち。(^_^)b

「嫌がってる子どもに苦いクスリをのませ」ても、
その後のフォローがちゃんとあれば、つまり、できたことをちゃんと評価してあげれば、
決してそんなことで子どもの心がねじれることはありません。
むしろ、子どもにとっては自信がつくことになると思っています。
ちいちゃいお子さんだって、ちゃんと人格があるんです。
赤ちゃんだって、ほめてもらったことは、きっとわかるはずです。

ちょっとした工夫とかかわり方で、子どもは大きくステップアップします。
お母さんだって、自信がつくと思います。

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