ひまわりの種

毎日の診療や暮しの中で感じたことを、思いつくまま書いていきます。
不定期更新、ご容赦下さい。

親の覚悟

2011年02月12日 | 日々のつぶやき
知人に、小さい会社の社長さんがいます。
その方は30代で会社を起こし、初めは奥さんと二人でのスタートでしたが、
従業員も7~8人に増え、この不景気の中、まずまずの業績でした。
社長さんの真面目な人柄ゆえのことだと思います。

数年前、都会の大学に行っていた息子さんがお嫁さんを連れて戻りました。
いずれ会社を継ぐまでの修行として、地元の企業に就職も決まり、
若夫婦の間には珠のようなお子さんも授かり、万々歳の日々でした。

ところが、その後まもなく、長年勤めていた主力の従業員が数人、相次いでで辞め、
社長さんは残った見習いの若い社員と奥さんとで頑張っていましたが、
仕事の能率が上がらないのはいかんともしがたく、
息子さんも勤務先に時間の都合をつけてもらって手伝ったりしたものの、
それでもどうにもならず、2年ほど前に、息子さんは修行を中途に就職先を退社し、
実家の会社を当分の間手伝うことになったのです。
小さい子どものいるお嫁さんも、時々手伝っていました。

最近になってその息子さんが、
一旦実家を離れ、やはりもう一度外の会社で修行したいと父親に申し出たのだそうです。
年度末で、会社はとても忙しい時期でした。
息子さんにしても、よくよく考えてのことだったのでしょう。

息子さんの思いは、修行途中で就職先を中途退社したことが心の中で悔いだったのでしょう、
親父さんから教わることはたくさんあるけれども、
このままずるずると実家にいたのでは、どうしたって「あそこの息子」と人は見る、
やはりもう一度この立場をリセットして、自分を知らないところで修行したい、
ということなのだそうです。

社長さんは、困りました。
息子さんの気持ちは、痛いほど分かる。自分はたったひとりで一から始めたのですから。
でも、今、息子さんとお嫁さんがいなくなれば、実質的な業務は社長さんしかできません。
それでは、会社が立ち行かなくなってしまいます。
不景気のはずなのに、求人に応える人はまだ見つからないそうです。

社長さんは、悩んでいます。
小さな会社ではあるけれども、自分のところが業務を縮小すれば、
大きな打撃をこうむる取引先もあります。
義理堅い人ですから、余計に心が痛むのでしょう。
でもこのまま一人で頑張ったら、自分が倒れてしまいます。

我が子を大事に思わない親はいません。
息子の将来を第一に考え、もう一度修行に戻ることに賛成はしたものの、
もし息子さんが実家に戻って来るとしても、それは何年も先のことになるでしょう。
今現在の会社の運営をどうたらいいのかという思いの狭間で、眠れぬ夜が続いているそうです。

この話をきいて、わたしも人ごとではないなぁと思いました。

うちの子どもたちはまだ学生ですが、もしわたしの息子や娘が同じ状況だったら、
その時わたしたちは、どんな風に行動できるか、はたと考えてしまいました。

子どもの人生は、子どものもの。
それは当たり前のことなのだけれど、親はいつまでも、つい舵を取ってしまいたくなる。

わたしなんてまだまだ、「親の覚悟」にも、修行が必要だなぁ・・・・・・。

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