信濃毎日新聞:
「福島の子ども130人の甲状腺ホルモン検査を行った結果、10人の子どもに異常値が見られた」
・・・あぁ、またかよ、って思った。
どうしてこうも、新聞記事というのは、読み手に「ある印象」を受ける書き方するんかねぇ。
外来でも、不安になるお母さんたちが増えた。
きちんと報道記事を読めば、治療を必要とする値ではない、と書いてある。
なら、何も心配はいらない。このような数値の変動は、日常でもみられることだ。
子どもたちの検査を信州大学に依頼したのは、
なんとあの、「がんばらないけどあきらめない」の鎌田實先生の主催する、NGO団体だった。
鎌田先生は、内科医だったはずだ。
今ではどちらかというとメディアへの露出の方が多いのではないだろうか。
ならば、このような結果を新聞発表したらどのような事態になることかぐらい、想像がつかなかったのだろうか。
・・・と、悶々としていたら、ちゃんと出されましたよ。公式な見解が。
日本小児内分泌学会から、10月11日付け:
「長野県において福島県から避難している子どもの甲状腺検査に変化がみられたとする報道に関しての学会声明」
http://jspe.umin.jp/pdf/statement20111012.pdf
まずは新聞の報道から:
130人のうち、
1.1名の甲状腺ホルモンが基準値を下回り、
2.7名の甲状腺刺激ホルモンが基準値を上回り、
3.2名のサイログロブリンが基準値を上回った
声明文では、まずはじめに、結論が書かれている。(尚、行はわたしが読みやすく改変した)
検討の結果、今回の検診でえられた「検査値の基準範囲からの逸脱」はいずれもわずかな程度であり、
一般的な小児の検査値でもときにみられる範囲のものと判断しました。
なお、これらの検査結果を放射線被ばくと結びつけて考慮すべき積極的な理由はないものと考えます。
そして、そう結論づけるに至った根拠として、このデータの詳細が記されている。
1.甲状腺ホルモンが基準値を下回った1名: 0.9~1.0ng/dl(基準範囲:1.00~2.00ng/dl)
2.甲状腺刺激ホルモンが基準値を上回った7名: 4.25~6.2μIU/ml (基準範囲:0.2~4.0μIU/ml)
3.サイログロブリンが基準値を上回った2名: 110~200ng/ml (基準範囲0~78ng/ml)
(→ただしこの2名の甲状腺ホルモン・甲状腺刺激ホルモンは基準範囲内)
次に、そのデータの解説:
1.について:
基準範囲(1.00~2.00ng/dl とされる)をわずかに下回る程度0.9~1.0ng/dlの範囲であり、また、
甲状腺刺激ホルモンに異常をみとめないため、臨床的に問題にすべき逸脱として扱うことは適切でないと判断します。
2.について:
基準範囲が0.2~4.0μIU/mlとされるのに対し、数値は4.25~6.2μIU/mlであり、
臨床的経験上甲状腺に病気をもたないお子さんでもときにみられる程度の逸脱です。
このような場合は、再検査し、他の検査とも合わせて総合的に判断します。
3.について:
基準範囲が0~78ng/mlとされるところ、110~200ng/mlです。
この2名については甲状腺ホルモンと甲状腺刺激ホルモンの値は基準範囲内であり甲状腺機能異常とは言えません。
サイログロブリン値については、時間をあけて再検査をするなどをしないと病的なものかどうかの判断はできません。
この検査はもともと個人による検査値のばらつきが比較的多い検査でもあり、
この検査値のみが「はずれ値」をとることに意味がみいだせないことがしばしばあります。
この2名の家族に対して信州大学小児科が「1回の検査で異常とはいえないので、
地元の病院で再検査を受けてください」と説明した対応は適切と考えられます。
そして、最後にこう結んでいる。
なお、放射線被ばくと今回みられた甲状腺関係の検査結果との関連については、
それを否定できるほどの根拠はありません。
しかし、これまでに知られていることは、被ばく後数か月という短期間に甲状腺疾患が発症するには、
相当量の放射性ヨウ素の被ばくがなければ起きないということです。
一方、これまで比較的高線量の被ばくの恐れがあるお子さんを対象として行われた被ばく線量測定の中で、
ひとりも甲状腺機能に変化を起こすような高線量の被ばくは報告されていません。
そうしたことを考え合わせると、今回の場合は、
検査値のわずかな逸脱と放射線被ばくとを結びつけて考慮すべき積極的な理由は、ないものと考えます。
以上
_______________________________________________________
10月12日にここまで書いて、ずっと草稿のままにしていた。
今日は11月13日(実際はもう14日)。今更ですが、アップします。
ところでその鎌田先生、先日のNHKの「あさイチ」福島ロケに出演なさって、またおかしなコメントをしていた。
甲状腺ホルモンの検査は、また依頼があればするらしい。
でも、実は、甲状腺ホルモンの検査が、甲状腺がんの予測になる訳じゃない。
甲状腺がんの早期発見は、超音波診断(いわゆるエコーというやつ)でないと、わからない。
ホルモン検査するのは、まぁ、依頼があればしていけない訳じゃないけれど、
実は、年齢によってもかなりばらつきがあるし、同じ人でも、変動することだって、ある。
検査の数値だけで疾患の有無を判断することは、できないんだ。
そして、ひとりひとりに、そのデータの意味するところを、きちんと説明する必要がある。
新聞発表なんかじゃなくて、ね。
このことを、先生ならわかってらっしゃると思うのだけどなぁ・・・。
それともうひとつ、???な発言。
日本の食物の暫定基準について、ベラルーシの基準よりも高いから、いけない。
国は、もっと基準を厳しく設定すべきだ、とおっしゃっていた。
この方、チェルノブイリの支援もなさってるんですよね。
なら、事故当時の旧ソ連の基準のほうが、今の日本よりはるかに高いことも、ご存知のはず。
だから基準値を下げろとおっしゃってるのかも知れないけれど、
鎌田先生がおっしゃるベラルーシの基準値って、事故から10年も経過してからのものだ。
ちなみに、日本での現在の暫定基準は、
飲料水・乳製品が200Bq/kg、野菜・穀類・肉・魚・卵が500Bq/kg だ。
今の福島の食産品の放射性物質のデータから推測すれば、10年も待たずに1999年のベラルーシの基準以下になると、
わたしは思うのだけど・・・。
世間に対して影響力のある方が、このような発言をメディアでなさるから、
ますます、混乱を招いてしまうのにな・・・・。
「福島の子ども130人の甲状腺ホルモン検査を行った結果、10人の子どもに異常値が見られた」
・・・あぁ、またかよ、って思った。
どうしてこうも、新聞記事というのは、読み手に「ある印象」を受ける書き方するんかねぇ。
外来でも、不安になるお母さんたちが増えた。
きちんと報道記事を読めば、治療を必要とする値ではない、と書いてある。
なら、何も心配はいらない。このような数値の変動は、日常でもみられることだ。
子どもたちの検査を信州大学に依頼したのは、
なんとあの、「がんばらないけどあきらめない」の鎌田實先生の主催する、NGO団体だった。
鎌田先生は、内科医だったはずだ。
今ではどちらかというとメディアへの露出の方が多いのではないだろうか。
ならば、このような結果を新聞発表したらどのような事態になることかぐらい、想像がつかなかったのだろうか。
・・・と、悶々としていたら、ちゃんと出されましたよ。公式な見解が。
日本小児内分泌学会から、10月11日付け:
「長野県において福島県から避難している子どもの甲状腺検査に変化がみられたとする報道に関しての学会声明」
http://jspe.umin.jp/pdf/statement20111012.pdf
まずは新聞の報道から:
130人のうち、
1.1名の甲状腺ホルモンが基準値を下回り、
2.7名の甲状腺刺激ホルモンが基準値を上回り、
3.2名のサイログロブリンが基準値を上回った
声明文では、まずはじめに、結論が書かれている。(尚、行はわたしが読みやすく改変した)
検討の結果、今回の検診でえられた「検査値の基準範囲からの逸脱」はいずれもわずかな程度であり、
一般的な小児の検査値でもときにみられる範囲のものと判断しました。
なお、これらの検査結果を放射線被ばくと結びつけて考慮すべき積極的な理由はないものと考えます。
そして、そう結論づけるに至った根拠として、このデータの詳細が記されている。
1.甲状腺ホルモンが基準値を下回った1名: 0.9~1.0ng/dl(基準範囲:1.00~2.00ng/dl)
2.甲状腺刺激ホルモンが基準値を上回った7名: 4.25~6.2μIU/ml (基準範囲:0.2~4.0μIU/ml)
3.サイログロブリンが基準値を上回った2名: 110~200ng/ml (基準範囲0~78ng/ml)
(→ただしこの2名の甲状腺ホルモン・甲状腺刺激ホルモンは基準範囲内)
次に、そのデータの解説:
1.について:
基準範囲(1.00~2.00ng/dl とされる)をわずかに下回る程度0.9~1.0ng/dlの範囲であり、また、
甲状腺刺激ホルモンに異常をみとめないため、臨床的に問題にすべき逸脱として扱うことは適切でないと判断します。
2.について:
基準範囲が0.2~4.0μIU/mlとされるのに対し、数値は4.25~6.2μIU/mlであり、
臨床的経験上甲状腺に病気をもたないお子さんでもときにみられる程度の逸脱です。
このような場合は、再検査し、他の検査とも合わせて総合的に判断します。
3.について:
基準範囲が0~78ng/mlとされるところ、110~200ng/mlです。
この2名については甲状腺ホルモンと甲状腺刺激ホルモンの値は基準範囲内であり甲状腺機能異常とは言えません。
サイログロブリン値については、時間をあけて再検査をするなどをしないと病的なものかどうかの判断はできません。
この検査はもともと個人による検査値のばらつきが比較的多い検査でもあり、
この検査値のみが「はずれ値」をとることに意味がみいだせないことがしばしばあります。
この2名の家族に対して信州大学小児科が「1回の検査で異常とはいえないので、
地元の病院で再検査を受けてください」と説明した対応は適切と考えられます。
そして、最後にこう結んでいる。
なお、放射線被ばくと今回みられた甲状腺関係の検査結果との関連については、
それを否定できるほどの根拠はありません。
しかし、これまでに知られていることは、被ばく後数か月という短期間に甲状腺疾患が発症するには、
相当量の放射性ヨウ素の被ばくがなければ起きないということです。
一方、これまで比較的高線量の被ばくの恐れがあるお子さんを対象として行われた被ばく線量測定の中で、
ひとりも甲状腺機能に変化を起こすような高線量の被ばくは報告されていません。
そうしたことを考え合わせると、今回の場合は、
検査値のわずかな逸脱と放射線被ばくとを結びつけて考慮すべき積極的な理由は、ないものと考えます。
以上
_______________________________________________________
10月12日にここまで書いて、ずっと草稿のままにしていた。
今日は11月13日(実際はもう14日)。今更ですが、アップします。
ところでその鎌田先生、先日のNHKの「あさイチ」福島ロケに出演なさって、またおかしなコメントをしていた。
甲状腺ホルモンの検査は、また依頼があればするらしい。
でも、実は、甲状腺ホルモンの検査が、甲状腺がんの予測になる訳じゃない。
甲状腺がんの早期発見は、超音波診断(いわゆるエコーというやつ)でないと、わからない。
ホルモン検査するのは、まぁ、依頼があればしていけない訳じゃないけれど、
実は、年齢によってもかなりばらつきがあるし、同じ人でも、変動することだって、ある。
検査の数値だけで疾患の有無を判断することは、できないんだ。
そして、ひとりひとりに、そのデータの意味するところを、きちんと説明する必要がある。
新聞発表なんかじゃなくて、ね。
このことを、先生ならわかってらっしゃると思うのだけどなぁ・・・。
それともうひとつ、???な発言。
日本の食物の暫定基準について、ベラルーシの基準よりも高いから、いけない。
国は、もっと基準を厳しく設定すべきだ、とおっしゃっていた。
この方、チェルノブイリの支援もなさってるんですよね。
なら、事故当時の旧ソ連の基準のほうが、今の日本よりはるかに高いことも、ご存知のはず。
だから基準値を下げろとおっしゃってるのかも知れないけれど、
鎌田先生がおっしゃるベラルーシの基準値って、事故から10年も経過してからのものだ。
ちなみに、日本での現在の暫定基準は、
飲料水・乳製品が200Bq/kg、野菜・穀類・肉・魚・卵が500Bq/kg だ。
今の福島の食産品の放射性物質のデータから推測すれば、10年も待たずに1999年のベラルーシの基準以下になると、
わたしは思うのだけど・・・。
世間に対して影響力のある方が、このような発言をメディアでなさるから、
ますます、混乱を招いてしまうのにな・・・・。
甲状腺癌に関して、参考となる文献を見つけたので、お知らせがてら貼っておきます。
チェルノブイリ20年の真実
事故による放射線影響をめぐって
http://www.aesj.or.jp/atomos/popular/kaisetsu200701.pdf
私も甲状腺のエコーを長年していますが、ご存知のように、甲状腺癌の診断はそんなに簡単ではありません。
病理医でも手術の5年後が知りたい、と思うくらいだと聞いたことがあります。
また中年以上であれば、甲状腺内に何もない人の方が少ないくらい、腺腫様結節はありふれた病気です。
子供なら少ないと思われていますが、そうでもなくて、甲状腺のエコーをするとコロイド嚢胞や結節がある子もそんなに稀ではありません。
私が危惧するのは、これらの子達が、今後不要な検査や手術を受けることがあるのではないかということです。
書かれているように、福島で甲状腺癌の発癌率が高くなることはまずないだろうと思っています。
私も既に福島の方たちの甲状腺エコー検査をしたことが何回かあります。
癌を疑う結節はありませんが、それでも嚢胞やなんらかの結節がある方はいらっしゃいます。
お子さんが対象となる場合、親御さんも過剰に反応してしまうこともあるかと思います。
上の文献を読んで、今後、医療者側も冷静な正しい判断をするよう、注意していかなければと思いました。
前線に立たれる先生にも知っておいていただきたいと思いました。
既に読んでいらしたらごめんなさい。
何が正しいかは20年たたないとわからないかもしれませんが、少なくともチェルノブイリの経験はあります。
その場その場でできる限りの最善の判断をしていきたいです。
早速、職場でも話題になりました。
その番組では『甲状腺に変化』と言ってましたが、
変化もなにも、以前より定期的に検査してた訳でもないのに、
「そうゆう報道の仕方事態がおかしいと思うよ」と、私は言いました。
それまで鎌田先生は、好印象で見ていたのですが・・・
ちょっと見方が変わってしまいました。
その後、山下教授との対談の様子なども
ネットで見ました。
うろ覚えですが、山下教授の事故後の対応?
避難させなかったこと?をガッカリしたと言ってました。
山下教授は、『ああする必要があった・・・』
というようなことを言ってましたね。
あっち寄り(反原発)の方なのかな?と・・・。
この長野での検査にしても、NPOが絡んでいた気がします。(すみません・・・これもうろ覚え)
菅谷市長にしてもそう・・・
5月に福島で言った事とは違うことを、今は言ってます。
最近行われたのは、子ども福島主催の講演ですよね?
否定はしませんが、矢ケ崎克馬先生、野呂美加さん、
やや極端な表現をされる方が多く・・・
菅谷市長も踊らされてるのかな?とも思ったりします。
側溝の線量をそのまま提示したり、隠蔽だなんだと
刷り込まれてるのかな?なんて・・・。
いまだに野菜にヨウ素が・・・と言ってるくらいですからね。
菅谷市長に関しては、何をいいたいのか、
私には、今一伝わりませんでした。
話がそれてしまって、すみません(汗)