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みつばの郵便屋さん 小野寺史宜

若い主人公が郵便配達という仕事を通じて地域の住民や同僚と交流する様を描いたお仕事小説。肩肘張った矜持とか使命感のようなものとは無関係にごく自然に自分の仕事の意義を考えあるべき姿を全うしていこうとする姿が心を打つ。著者の本はこれで3冊目だが、全てに共通するのはこのごく自然に正しくあろうとする登場人物の清々しさだ。既に続編も出ているようなので、これから読むのが楽しみだ。(「みつばの郵便屋さん」  小野寺史宜、ポプラ文庫)

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写真展 戦争と戦後の掲示板

昔駅などに貼ってあるのを見かけた「写真ニュース」。日本が戦争に突入しようとしていた時期から戦後の混乱期までの古い「写真ニュース」を展示した写真展。これを企画したという日本新聞博物館の担当の方からの説明を受けながらじっくり鑑賞した。新聞と同様、写真ニュースも人々に今を伝えるという役割を終えると大半が廃棄されてしまったようだが、それでもマメに取っておくコレクターが存在、博物館ではそういう人から購入して収集保存しているという。写真の質、写真の添えられたコメント、色々なところに時代を感じさせる要素が散りばめられていてとても面白かった。

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おなかがすいたハラペコだ 椎名誠

著者の食に関するエッセイ。東海林さだおの「まるかじり」シリーズに良く似た著者独自の食に対する思い入れを吐露する内容だが、こちらの方がキワモノ感が強く文章もやや過激。「海苔三段重ね弁当」には思わず笑ってしまったし、「本場と本格には気をつけよう」には心から賛同した。また、随所に登場する独自のレシピは一度食べてみたくなるほど魅力的だし、お一人様になった時のために近所の店を開拓しておくという発想も為になる。著者の本については、やや粗製乱造というイメージがあったが、本書を読んでその考えを改めようと思った。(「おなかがすいたハラペコだ」 椎名誠、集英社文庫)

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乗客ナンバー23の消失 セバスチャン・フィツェック

豪華客船の中で相次いで起こる失踪事件と殺人事件。船上で不可解な形で妻と息子を失ったFBIおとり捜査官が、大きなビジネスが故に隠蔽体質が蔓延る大型客船の上で孤軍奮闘する。真相に近づいていくサスペンスとどんどん深まる謎は超一級のエンターテイメントだ。最後に事件解決と思ったらまだ先があり、それで終わりかと思ったら著者のあとがきの後に更にビックリの展開が残っていた。著者のサービス精神に脱帽だ。(「乗客ナンバー23の消失」 セバスチャン・フィツェック、文藝春秋)

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香港の甘い豆腐 大島真寿美

父親が誰なのか知らされないまま育った高校生の主人公が、突然母親から「父親に会わせる」と言われて香港に連れて行かれる。唐突な出来事に戸惑いつつも香港で夏休みを過ごし、色々な人と交流しながら明るく成長していく。主人公の素直な心情の吐露が良いなぁと感じる作品だった。(「香港の甘い豆腐」 大島真寿美、小学館文庫)

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演劇 後家安とその妹

古典落語を題材にした演劇で「芝居噺」という初めてのジャンルを鑑賞。舞台装置、音響、照明の作り、全てが非常にきめ細かくなされていることが私のような素人の観客にもひしひしと伝わってきた。登場する役者さんの言葉もマシンガンのような速さでいてちゃんと情感豊かに伝わってくる。真摯な舞台と緻密な作りに脱帽の2時間を満喫した。

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奥様はクレージーフルーツ 柚木麻子

新婚3年目でセックスレスに悩む30歳の女性の内面を克明に描いた本書。こうした本を読むのは初めてだし立場もまるで違うが、何となく気持ちは分からないでもない気がして新鮮だった。(「奥様はクレージーフルーツ」 柚木麻子、文春文庫)

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