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毒薬の輪舞 泡坂妻夫

著者の本には毎回驚かされるが、今回も完全にやられたという感じだ。警視庁の刑事コンビがある病院の精神科病棟に病気を偽って入院するのだが、どうやら通常の潜入捜査ではないらしい。では何なのかと言うと、かなり読み進めてもそれがよくわからない。よくわからないまま、大きな事件もなく話は終盤になってしまう。登場人物は全て不審者ばかりでその行動も変だし、色々気になることはあるのだが、それが何を意味しているのかが判然としない。最後に全ての謎が明かされた段階で、本書がミステリーの常識である事件発生、推理、謎の解明という手順に挑戦した作品だと分かり、著者の意図の奔放さ、物語の構築力の凄まじさに驚いた。(「毒薬の輪舞」 泡坂妻夫、河出文庫)
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