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惣十郎浮世始末 木内昇

書評誌激推しの一冊。著者は芥川賞の時代小説作家だが読むのは初めて。読んだ感想としては、これまでに読んだ時代小説の中で一番面白かったと思えるほど面白かった。幕末の江戸を舞台に、手柄よりも犯罪の未然防止に努めたいとする北町奉行所の同心服部惣十郎がいくつかの事件の謎を追いかけていく。基本的には江戸で起こった不可解な火事騒動とそこで見つかって正体不明の遺体の謎という事件だが、それに、当時の漢方医と蘭学医の軋轢、主人公の上役、部下、家族などとの人間関係などが織り込まれ、更には江戸の行事や風物、幕府内での政争など、実に様々な要素が絡み合って話は進む。その全てが結びついたびっくりするような結末はお見事の一言だ。著者の本はまだ沢山あるし、本作の続編も期待したいし、これからが本当に楽しみだ。(「惣十郎浮世始末」 木内昇、中央公論新社)
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