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ルポ貧困大国アメリカⅡ 堤未果

以前ベストセラーになった同じ著者による「ルポ貧困大国アメリカ」の続編。前作は、「日本社会にも忍び寄る貧困社会の恐怖」という状況下で、大いに話題になったが、内容自体はそれほど珍しい話が書かれている訳でもなかった。そのため前作を読んだ時は、面白いは面白いにしても、何故こんなに話題になっているのだろうかとやや不思議な感じがした。日本のワーキングプア・ネットカフェ難民の問題との連想で、日本人の心に響いた面があったのだろうと思った。本書は、そうした前作に比べて、文章の緊張感や切迫度がさらに増しており、アメリカで本当に大変なことが起きているということが、前作以上に伝わってくる内容だ。前作以上に「アメリカのようにならないためには何をしたらよいのか」ということを考えさせられた。臨場感のある文章は前作の特徴でもあったが、本書では文章の巧みさにさらに磨きがかかっているように思われるし、語られている対象もさらにアメリカ社会に深くメスを入れたようなものになっている。第1章の「サリーメイ」の話などは、日本ではあまり取り上げられていないアメリカの悲惨な実態が伝わってくるし、次章の年金破綻の話も表面的な解説ではない切迫感がある。また、第4章の「刑務所ビジネス」の話はまさに驚きの連続だ。「世界の囚人の25%はアメリカの刑務所」などさりげなく出てくる数字も面白い。良く考えると、本書の方が前作よりも切迫感があるのは、著者の文章力が向上したからだけではなく、リーマンショック以降の世界の経済・金融危機を経て現実の切迫度が高まっていることの現れなのかもしれないと思った。(「ルポ貧困大国アメリカⅡ」堤未果、岩波新書)
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