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航空機は誰が飛ばしているのか 轟木一博

以前読んだ「電車の運転」のような本かと思ったら全く違う内容だった。本の前半は航空管制官がどのような仕事をしているのか、空港の運行というものはどうなっているのか、といったことが丁寧に解説されている。このあたりは普通の薀蓄物のようで、それはそれで大変面白い読み物になっている。しかし本書の真骨頂は、後半部分の羽田空港の国際化や日本の航空行政に関する章のところである。「羽田空港の国際化」といった航空行政の課題に関して我々はどう考えたら良いのか、それが前半部分の細かい解説と見事に1本の線でつながっているのだ。「羽田の国際化」の議論が、前半の管制官の仕事や空港の運行に関する知識がないと、如何に表層的なものになるかが良く判る。これこそ著者が本書で言いたかったことなのだろう。細かい技術的な問題を積み上げていった結論は「羽田をアジアとの窓口に」とか「成田の問題はアクセスの改善が最も大切」とか、ごく当たり前のように聞こえるが、そこに至るまでに様々な考察が必要であることが本書をよく読むと判る。技術的なことを判りやすく解説した上で社会問題にまで理路整然と解説してくれる本書は、技術者と行政の両方に明るい人でなければ絶対に書けない傑作だと感じた。(「航空機は誰が飛ばしているのか」轟木一博、日経プレミアシリーズ)
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