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謎の1セント硬貨 向井万起夫

著者は宇宙飛行士・向井千秋さんの夫。宇宙飛行士の向井さんは、もちろん日本の誇りとも言うべき存在で知名度も高いが、読書界では「夫」の方もかなり知られた存在のようだ。本書に関する書評もそんな書きぶりだったので本書を読んでみた。
 内容は、アメリカの社会や文化に関する小さな疑問をみつけ、それをいろいろなところにEメールで質問し、真相に迫るまでのプロセスを紹介するというもの。この「小さな疑問」というのが実に雑多で面白い。特に面白かったのが「キルロイ伝説」の章。トイレの落書きにこんな奥深い歴史やアメリカ人の思いがあったとは本当に驚いた。トヨタの星条旗の話、マクドナルドのトイレの話、ハンク・アーロン球場の話など、どれもはずれのない面白い話ばかりだ。軽く読めるのにしっかり心に残る内容に感服した。それから全編に色濃く表れているのは、奥さんへの愛情だ。本書では、アメリカ人全般、日本人全般、取り上げられたテーマの関係者、Eメールで意見をくれた人等、様々な方面への気遣いがとても行き届いているという印象を受ける。これは奥さんの名声を損ねたくないという夫の気遣いの現れだろう。(「謎の1セント硬貨」向井万起夫、講談社)
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