燃えるフィジカルアセスメント

総合診療医Dr徳田安春の最新医学情報集

この患者は脱水なの?4 連載 その62

2014-07-15 | 症例集

 前回に引き続き臨床研修プラクティスから今回はJVPを評価するためのステップとしてまとめていきましょう。 では

1)患者をリラックスさせ、胸鎖乳突筋の緊張を解く、軽く頭を持ち上げ枕を挟む。

2)ベッドの角度を調節する。 診察する側の反対側に少し顔を向かせる。

3)接続方向にペンライトで光を当て、内頸静脈拍動(皮膚の動揺)を見つける。

4)必要に応じて、内頸静脈拍動が頸部の下半分で観察できるようにベッドの角度を再度調節する。

5)内頸静脈拍動と頸動脈拍動を区別する。 頸動脈拍動は触知可能で、呼吸や体位で変化しない。 内頸静脈拍動は鎖骨直上を軽く圧迫すると消えるが、頸動脈拍動は消えない。

6)右内頸静脈拍動の最高点を特定する。

7)この点から定規を水平に延ばし、胸骨角から垂直に立てた物差しとで直角をつくる。

8)胸骨角からこの交点までの垂直距離を計測する。

9)胸骨角や右房からcmで計測したこの垂直距離がJVPである。

10)静脈圧が胸骨角の上方3~4cm、または右心房の上方8~9cmが正常上限である。

11)静脈拍動の最高点が胸骨角より下にある場合には、静脈圧の上昇はない。

12)内頸静脈の拍動が見つけられなければ、外頸静脈の拍動を探す。 外頸静脈が虚脱する頂上を拍動点とすればよい。

 以上ですが、ここで新人研修医へひとこと

 Sapira先生の理論に”ショパンの法則(rule of Chopin)”というのがある。 一般の人がショパンのレベルまでのピアノ演奏をすることは無理であるが、だからといって、ショパンの曲はだれにも演奏できないということはない、というものである。 事実、ショパンの曲を演奏することができる人は多数いる。 つまり、身体診察法は医師個人の能力差が大きく、一般の医師ができないからといって、特定の身体診察法(JVPの測定など)の重要性を否定することにはならない。 繊細かつきらびやかなショパンの曲のように、内頸静脈を使用したJVPの測定には美しさがある、というものである。

 今回のシリーズは以上です、では、次回に。

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