建築・環境計画研究室
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バリアフリー環境整備前後における利用者の環境評価の変化
東京都心近傍の鉄道駅の利用者評価からの考察
大村 薫、佐藤克志
日本建築学会計画系論文集 第75巻 第652号、1381-1387、2010年6月
1.はじめに
本研究では、バリアフリー法において生活関連施設として重要な位置にある鉄道駅施設を対象とし、移動・利用円滑化のための環境整備(以下、バリアフリー環境整備)の前後における駅利用者の環境評価の変化の傾向を明らかにすることを目的とする。
2.研究方法
調査は、2005年、2007年、2009年ともにMK駅を利用すると想定される周辺約1km範囲内に居住する各住民宅ポストへの無作為の投函、郵送回収によるアンケート調査として実施した。
3.調査対象駅のバリアフリー状況
1)2005年調査時:改修前
出入口から改札階まではEV未設置、駅舎内にはトイレ未設置であった。
2)2007年調査時:基本改修後
東口については出入口にEV(通り抜け型)、階段、ESC(上り下り2方向)が併設された。また改札側からホームには、新たにESC(上り下り2方向)とEV(通り抜け型)が設置された。駅舎内にはトイレは未設置であった。
3)2009年:全面改修後
基本構造は2007年調査時と同様であるが、新たに駅構内に多機能トイレが設置されたほか、簡易ベンチなどの休憩設備も整備されている。
4.調査結果
4.1回答者の概要
本調査結果は「年代に因らず歩行能力には大きな問題がなく、半数以上がMK駅を日常的に利用している」回答者によるものである。
4.2MK駅の利用しやすさ総合評価の変化
駅改修に伴う、バリアフリー等設備によって駅の利用しやすさ総合評価は、「大変利用しやすい」及び「利用しやすい」と回答した人が、2005年の改修前の23.7%から2007年の基本改修後には83.6%へ、さらに全面改修後の2009年には97.1%へと向上している。
4.3駅の施設要素別の利用しやすさ評価の変化
全般的に改修後に評価が向上する傾向が読み取れるが、ホーム柵など、一部に物的な状況は同じであっても評価が低下しているものも見受けられる。
4.4駅施設利用者の評価構造と総合評価の関係
全面改修後の関係モデルでは「ホームの安全性」「情報のわかりやすさ」「移動の円滑性」など、駅施設に求められる機能・性能によって駅施設の「利用しやすさ」が評価される傾向が表されているが、改修前の関係モデルでは「改札外空間の移動性・利用性」「改札内空間の移動性」といった性格の異なる空間評価に関わる潜在的因子が選択された。
5.まとめと今後の課題
バリアフリー法に基づくバリアフリー環境設備によって駅利用のしやすさは確実に向上している。但し、移動・利用円滑化のための環境整備によって一度「使いやすい」と評価されたものが、時間経過と共に「ふつう」評価に低下する場合があることも明らかになった。
6.感想
バリアフリー環境整備の前後の評価ということで大変興味深い内容だった。
09FA045 正田博之
2012年 2月25日(土)10:00より 足立区立東綾瀬中学校にて
「こどもの防犯まちづくりワークショップ」を開催いたします!
内容は
①危ない場所の見分け方
②論文発表(こどもと大人の認識差に着目した犯罪不安箇所と危険箇所の環境要因に関する研究)
③考えよう.ひとりひとりに出来ること(こどもの防犯まちづくりのために何が出来るのかを考える)
の3部構成になっております.
ぜひお誘いあわせの上ご参加ください.
参加希望の方は,
yuki.u.step421☆gmail.com まで,ご連絡ください.
(☆を@に変えてください)
こんばんは.M1の井上です.
更新が遅くなってしまいました.申し訳ないです.
さて,2月19日は山田先生のお誕生日でした!
おめでとうございます!!
ということで…じゃーん!
2月20日にお祝いをしました.
おいしそうなフルーツタルトですね♪
おいしかったです.
ほら,こんなにいい笑顔♪
新4年生も加わってますます活気づいてきた山田研です.
新キャンパスでの新しい生活も楽しみですね.
引っ越しの準備も進めなければ><
(いのうえ)
次の日誌担当はみなみさんです!
都市における児童に居場所づくりの多様化と安全安心
-豊かな空間確保 両立についての考察
-こども達の放課後の居場所づくりに関する研究-
斎尾直子、長谷夏哉
日本建築学会計画系論文集 第614号,33-39,2007年4月
1. 研究背景と目的
こどもたちの居場所造りに関する研究の一環として、主に近年、都市部において模索されている「放課後の居場所づくり」の動向と実態を分析したうえで、安心安全と豊かな空間確保、両者の両立の可能性という視点から研究を進める。
研究対象は、まだ充分な保育も必要とする小学校1-3年生の低学年児童のための「放課後の居場所づくり」に絞り、その計画課題と今後の方向性を求めることを目的としている。
2. 研究方法と調査概要
A・学童保育、小学校に併設、
B・学童保育、複数の小学校を対象、商店街空き店舗を利用
C・全児童、小学校に併設
D・学童保育、複数の小学校を対象、都市農村隣接型なため広大な屋外空間を確保
の4事例を対象に保護者へのアンケート調査、児童の空間活用観察調査
3. 安心安全な空間と豊かな空間との両立の可能性
児童の自主性を重んじた活動を重視し、豊かで多様な空間の提供と安全重視の見張り・管理ではなく自然な見守り体制が理想である。
しかし現状としては、防犯・けがや事故の危険を回避、安全と安心を確保するため児童人数当たりのスタッフを増やそうとしているが、スタッフ数確保が難しい状況であり安全を重視するあまり複数空間の利用をさせずに空間に制限を掛けてしまい児童が自主的に空間選択できない状況である。
保護者のアンケートによると、安全安心の強化と、空間を最大限活用した活動展開との両立を望んでいるが、「こどもの自主性の尊重・問題解決能力向上」に関しては保護者個人差あり、「周囲地域との連携」に関しては、地域差がある。
4. まとめ
近年児童をとりまく社会背景から、放課後の居場所づくりが急務となっている。空間活用の限界がある状況下においては、地域特性と地域人材を最大限に活用した空間活用・運営の工夫が今後の重要な計画要件となる。
各地域においても、地域住民のサポートを得ながら居場所のスタッフ数を増やすなどの方法が、けがなどの危険性防止や充実した活動展開の側面からも模索されている。今後も見守り体制が手厚い居場所づくりは増えていくと考察される。
「安心安全」、特に防犯という側面からは、今後も増加傾向にある留守宅児にとっては、居場所で過ごすことは非常に有効な手段となっている。しかし学校敷地内の居場所の場合、子供たちを1日中敷地内に閉じ込め、活動範囲を制限する結果となっている。
5. 感想
子ども時の体験によって感受性が磨かれていくのだと思っているので、居場所を限定してしまうのはもったいないと思うと同時に、安心安全と豊かな空間の両立は非常に難しい問題であると思った。
(鈴木志歩)
戸建住宅地における住宅配置と庭の変容過程
-西宮市上甲東園の計画的住宅地を対象に-
山口秀文、上野浩一
日本建築学会計画系論文集 第75巻 第654号,1807-1814,2010年8月
1. 調査目的
住環境マネジメントや空間計画によるコントロールを有効にするのに有益だと考え、上甲東園を例に敷地形状の変化と住宅の増改築・建て替えに着目し、個々の住宅配置と庭の変容過程をそれぞれ「家族の変化」と「住宅とその庭の変化」に合わせて明らかにする。
2. 調査方法
調査方法は現状の目視調査、開発から10年間隔で降雨腔写真と地図を収集
→配置図の作成
→「長期居住者」「敷地形状を維持している」住宅16事例を中心にヒアリングによる図面採取
3. 住宅配置と庭の変容
[全16事例共通]
・広縁と水まわりの増築
・南側の大きな庭を中心にそれ以外の2つ以上の庭をもつ。
・小さな庭は、玄関付近の前庭や水回りにつくられた庭であることが多い。
[建て替えのあった11事例]
・庭の維持がなされていたのは4事例。
[配置を変化した7事例]
・5事例で駐車スペースが新設及び移動されている→駐車スペースが住宅配置に影響を与えている
・南側を中心に2面以上の庭を維持している。
・前庭の位置は保ったまま建て替えを行っている。
4. まとめ
・住宅地全体は、①増改築が多い時期(開発直後~20年)②建て替えと増改築が同数になる時期(20~30年)③変化が少ない時期(30~40年)④建て替えの多い時期(40年~50年)の4時期を経て変容している。
・住宅の増改築・建て替えは家族の変化(家族の人数・子供の成長・2世帯住宅化)と大きく関係している
・西南北様々な方向に増改築が行われつつ、居室の増築方向と合わせて敷地内に南面の大きな庭と小さな庭の2つ以上の庭が造られている。敷地の四隅に倉庫などの付属屋、駐車スペースが造られている。
郊外のニュータウンのような一定の大きさの敷地規模や条件、計画時に造り込まれた建築条件、周辺環境がそろいうる戸建の住宅地においては、応用・発展可能である。
5. 感想
周囲に十分な庭をもち、住民に増改築・建て替えを行う意思があることが条件で、このような結果が現れたが、私はこの論文を読んで人が長く住まうには家族の変化に対応できるある程度の余剰空間としての庭が必要なのではないかと考える。
現社会のニーズとして新築より増改築、長期住宅がはやり始めているので、この内容を掘り下げることにより、長く住むことが出来る住宅が作れると感じた。
(鈴木 志歩)
自閉症児の障害特性に配慮した教育空間の構造化に関する現状
—熊本県内の情緒障害学級における教育空間の構造化に関する調査—
日本建築学会学術講演梗概集 2007年8月 西島衛治
1 はじめに
特殊学級では少人数の学級で心理的にも安定した個別指導である。児童生徒の特性に合わせた環境での教育が行われているが、教育に当たっては自閉症の特性と指導法について十分な理解の元に行われるべきか、必ずしもそうではない事がある。
今回の報告では自閉症児教育とそのための教育空間の動向を把握し、今後の特別支援教育を含めた小中学校の生活に困難性を抱えた児童生徒を支援する環境整備の方向性を提示する事を目的とする。
2 調査概要
調査期間は、2006年8月から9月である。熊本県内にある情緒障害学級を設置した小中学校の175校を対象とし、78校から回答を得た。
3 分析方法
・アンケートにより、�療育分類の把握 �教育空間の明確化(構造化) を調査した。
・平面プランから、机、衝立、収納などからどのような構造化をしているか、もしくはしていないかを調査した。
4 まとめ
TEACCH(自閉症および近縁のコミュニケーション障害の子供のための治療と教育)プログラムを療養に用いる学級のある学校において、様々な構造化が検討されているが、費用のかかる固定壁による構造化までは至っていない。しかし、掲示物、机の配置、収納の他に児童生徒が「環境や状況を理解しやすい」構造化が導入されてきている。
今回の構造化の取り組みは、特別支援教育の環境設定にも応用できるものと思われる。
特別支援教育は軽度の発達障碍児を主な対象にしているが、児童の学習や生活をスムーズにするためには、構造化は非常に重要であると考えられる。
5 感想
自閉症児の通う教育空間において、TEACCHプログラムを取り入れている学級と、そうでない学級とでは、環境に大きく差が出ているように感じた。
自閉症児に必要な事は、なによりも理解しやすい環境づくりであると感じた。
09fa055 副島眸
商店街における高齢者のたまり場に関する研究
—豊四季台団地内の商店街を対象として—
日本建築学会大会学術講演梗概集(北陸) 2010年9月 李潤貞 西出和彦
1 はじめに
孤独死が社会問題の一つとして懸念される日本において、地域の文化、コミュニティーの中心だった、商店街本来の姿を取り戻そうという動きが出ている。
本研究では、地域の公共空間の一つである商店街が人々の居場所となるための計画的要件を得ることを目的とする。その手法として豊四季台団地内の商店街のパブリックスペースが高齢者のたまり場になっている事に注目し、そこでの行動観察を主とした実態調査を行った。
2 概要
この研究は、商店街における公共空間での空間状況、および人の利用活動の実態を調べ、商店街での公共空間の利用のされ方を把握し、行動と空間の関係性を探る事を目的とした。
3 調査方法
2009年11月3日~11月5日の3日間、9時~5時までの間、豊四季台団地内の商店街を対象に、その中でも地域住民の利用が多い団地内商店街のパブリックスペースで現地調査を行った。利用する人の性別、年齢を推測して記録し、5分ごとにその利用行動を記録した。
4 調査の結果
商店街のたまり行為は、6か所のベンチで多くみられた。また、3日間の利用状況は時間の流れによって大きく変わった。また、たまり場ではおしゃべり、タバコ、寝るなど、様々な行動が観察された。
5 まとめ
(1) たまり場の形成に、ベンチや椅子等の座る器具が重要な働きをする。
(2) たまり場の選択場所や利用時間等、男女の性別により利用実態の相違が大きい。
(3) たまり場では人間同士の交流が生まれやすい。
今後、アンケートやヒアリング調査などによる具体的な調査を進めて、仮説を検証する必要があると考えられる。
6 感想
たまり場に集まる男女の利用時間の違いなど、さらに詳しく調べてみるのもおもしろそうだと思った。
なぜ集まるのか、実態たまり場にいる人に直接調査することが必要だと感じた。
09fa055 副島眸
「駅舎内における飲食店利用者のトイレ利用行動に関する研究」レビュー
仲川ゆり、越川康夫、村川三郎、堀敏之、高津靖夫
日本建築学会計画系論文集 第614号 2007年4月 09FA030小林志乃
目的
「駅舎内のトイレ適正規模算定法」の算定基準となるトイレ到着率算定条件設定のため、この算定法に影響を及ぼす要因のひとつとして駅舎内の飲食店に着目し、飲食店利用者の特性とトイレ利用との関連性を検討する。
調査概要
調査対象駅
・改札内にトイレと複数の飲食店が所在する(飲食店利用とトイレ利用の関連付けが煩雑にならないようにするため、複数のトイレの選択肢が距離的に考えられるものは除外)
・飲食店からトイレへの追跡が可能(飲食店間近にトイレがある)
・東京都内にあり、1日の乗降者数が50万人から110万人
各駅の特徴
A駅 付近に教育施設や住宅地が多い
B駅 ターミナル駅で、長距離列車の利用者も多い
C駅 周辺に事務所ビルやホテルが多く、新幹線が停車する
各駅のトイレの数・飲食店の数・店内にトイレがある店の数
A駅 1・3・0
B駅 2・6・3
C駅 1・7・0
調査内容
・駅トイレの利用者数
・飲食店利用者と飲食店内トイレ利用者状況
飲食店利用
飲食店利用→駅トイレ利用
飲食店利用→店内トイレ利用
・飲食店における利用者行動
着席時刻、退席時刻、性別、年齢、飲食内容
結果
トイレ利用率に関係に大きく関わる要因は、男女ともに飲食店での滞留時間、グループ人数、酒類の提供であった。
男女比と年代はあまり関係しないと考えられる。
飲食店数と駅トイレ利用者数に対する飲食店利用者数は比例関係になる。また、3駅ともに女性の割合のほうが男性よりも高くなっている。
店舗の増加によりトイレの適正規模を検討する際には、男女別に利用者数の増加を検討する必要があると考えられる。
感想
女性の方がトイレを多く利用しているイメージがあったので、トイレ利用率に男女比があまり関係しないという結果におどろいた。また、飲食店での滞留時間と酒類の提供がトイレ利用率に関わるのは納得できるが、グループ人数が関係するのは一人よりもグループでいる方が店舗に長居してしまうから、ということなのだろうか。
この調査では、店舗に間近のトイレが対象であったが、休憩スペースなど店舗ではないが飲食をする可能性のある場所付近のトイレでも似たような結果が出るのではないかと思った。