東南アジア・ヴァーチャル・トラヴェル

空想旅行、つまり、旅行記や探検記、フィールド・ワーカーの本、歴史本、その他いろいろの感想・紹介・書評です。

久生十蘭,『従軍日記』,その4

2007-10-27 19:44:38 | 20世紀;日本からの人々
さていよいよ前線へ。
十蘭はチモール島クパン(クーパン)へ。

ここで、はじめての空襲を体験し、対空防御戦も経験する。
このへんの描写は、客観的というか、自分をみはなして、うろたえる姿を第三者の立場でみる書きかたである。小説家十欄の筆力をかんじる場面である。
もっとも、最初からこの従軍日記は、自分を外から見て書いているような部分が多いのだが。
文体がときどき筒井康隆調になるのは、一人称を「おれ」にして、客観的にうろたえる姿を描くと、あの文体になるのかもしれない。

さて、十蘭は、前線の部隊にはいっても報道班員の特権かどうかしらないが、まったくペースをくずさず、昼寝をし、行軍訓練に参加するのもいいかげん。まあ、40歳すぎているから、からだがいうことをきかない、ということもあろう。
暇な夜には、クーパンの町へ女を買いにでかける。
ここでは「半島組」「台湾組」という言い方をしている。これが十蘭個人の言い方なのか、一般的な言い方なのか、わたしはよくわからんが。「日本人」の場合は、こう区別していたのか?

あと、日記を読んでいてわからないのは、軍隊内外の金銭の流れ。
適切な本を二三冊読めばわかるとおもうのだが、その適切な本がみつからない。シロウトの悲しさ、こんな基本的なことがわからないのだ、とほほ。
給与や経費がどのような形で支払われるのか?兵士への給与は軍票だろうが、経費はどうなっていたのか?内地への個人的な送金は可能か?どういう手続きか?伝票はどうなっているのか。ぜんぜんわからんのだよ。
クーパンの部隊では、十蘭は食事代などを支払っている。別の部隊に所属するものがやっかいになった場合、経費を精算するようだが、どういう規則や規定があったのか、わからん。知っている人にとっては常識以前なんでしょうが。


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