東南アジア・ヴァーチャル・トラヴェル

空想旅行、つまり、旅行記や探検記、フィールド・ワーカーの本、歴史本、その他いろいろの感想・紹介・書評です。

蜂須賀正氏,『南の探険』,平凡社,2006.

2006-04-15 23:11:36 | 20世紀;日本からの人々
ぜんぜん知らないぞ、こんな人。

巻末の略年譜によれば、戦国大名蜂須賀家十六代、母方の祖父は徳川慶喜、1903年生。1920年から英国留学、ケンブリッジ大学モードリアン・カレッジ入学。BOU(英国鳥学会)会員。この間、エジプト・アイスランドなど旅行。1928年(昭和3年)昭和天皇即位の大礼使典儀官。この年、本書のフィリピン諸島旅行に出発(翌年まで約4ヶ月)。
この後、ベルギー領アフリカ、東アフリカ、北アフリカ旅行、1933年父の死亡により貴族院議員を襲爵。外遊、日本鳥学会の活動、なにか不明の家庭内トラブル、結婚は1939年。1943年に本書の親本出版、しかしこれ以外戦時中なにをやっていたか不明。
戦後はGHQ天然資源局生物科長オースチンの通訳など、(東京三田の屋敷はオーストラリアに売却、オーストラリア大使館になる)、1953年50歳で死去。

ウェブの情報ほとんどなし。大半は日本野鳥の会か生物学史研究会、この本自体の販売・書誌情報だけ。
荒俣宏の『大東亜科学奇譚』にとりあげられているようだ。その線で平凡社からでたのか。ほか青木澄夫『日本人のアフリカ発見』,山川出版社にも記載があるらしい。

内容は、本ブログのテーマのどまんなか。
アメリカ合衆国領のフィリピン、ミンダナオ島南部、アポ山登頂を中心にした、探検・鳥類の観察と標本採集、「土俗学」的見聞、社会事情、統治事情、日本人の移民の社会などなどについて。
旅行・探検がおこなわれてから15年後に出版されたのは、占領政策の資料にするためなのだろうか?

ともかくすごい(当時の事情と著者の探検のやりかた両方)内容で、こんな本が戦前戦中にたくさんあったとは考えられない。やはり、そうとう例外的な記録だろう。

(とりあえずここまで、時間がなくて中断、今日2006/04/15買ったばかりなのだ)


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