東南アジア・ヴァーチャル・トラヴェル

空想旅行、つまり、旅行記や探検記、フィールド・ワーカーの本、歴史本、その他いろいろの感想・紹介・書評です。

鈴木政平,『日本占領下 バリ島からの報告』,草思社,1999.その2

2007-03-28 10:42:49 | 20世紀;日本からの人々
あっと、あまりにも当然の予備知識だが、わからない方があるかもしれないので、おせっかい付記。

師範学校というのは、教員つまり先生を養成するための学校。
高等学校や士官学校などのエリート・コースとはまったく別。

一般民衆に、政府の方針を植え付ける仲介者を養成する期間。
学問や科学や軍事を伝える機関ではない。

本書のように、教育政策を実施する場合、まず、改革するのが、師範学校(および、臨時促成機関として、教員養成所)である。
師範学校は、政府の政策を末端に伝える、かなめの教育機関である。

それから、マス・メディアがなく、新聞・書籍の流通のない地域では、学校が最大のメディア、近代化を運ぶ施設になる。
本書で描かれる、バリ島は、そんな前近代の状態であったと思われる。

そして、こんな前近代の初等教育では、算数・国語も大事だが、体操・音楽・図画などが、強烈なインパクト(破壊力といってもよい)を持つのだ。
本書でも書かれているでしょ。「インドネシア人は走ることを知らぬ人種だ」って。
明治以前の日本人も走れなかったのだよ。
そんな明治時代の日本人を改造したのが、体操や音楽なのだ。

そして、ノート、画用紙、クレヨン、筆、さらにスポーツ用具や理科実験器具など、消費グッズの魔力を伝えたのも学校なのだよ。


コメントを投稿