「笑点」の新司会者が春風亭昇太師匠になると、けっこうテレビやら新聞で報道されていた。ここ何年も「笑点」を見た記憶はないが、メンバーの中から新しい司会者を選ぶなら、昇太師匠しかないと普通は考えるだろうから、ま、ふつうかな。
落語界にとって最近の一番大きなニュースは、喜多八師匠の訃報だ。
66歳。いまを生きる現役の噺家さんで「名人」と言えるのは誰ですかと聞かれたら、多少寄席に行ったりする人なら、喜多八師匠の名をあげる人は多いにちがいない。
やる気なさそうに高座に登場し、ほんとはもう帰りたいんだけどね、とほんとに具合悪いのかなと一瞬思わせておいて、噺に入るとぐいぐい引っ張っていく。端正な語り口ゆえにうまれるお殿様や若旦那のおかしさは天下一品。
これでやる気に満ちあふれていたら、非の打ち所がなさすぎて、逆にお客さんの息がつまるんじゃないかと思ううまさだった。だから、あんな韜晦(とうかい:自分の本心や才能を隠しておくこと)をしていたのではないかと、個人的には思っていた。
ラジオのアナウンサーが「メリハリの利いた芸で親しまれた … 」と話していたが、こいつ絶対聞いたことないよなと思う。
今月号の「東京かわら版」に、喜多八師匠の上がる落語会情報はいくつも出ている。お身体の具合が悪いのは承知しながら、まだまだ高座に上がられるつもりだったのだろう。残念だ。
昇太兄さんは56歳。笑点メンバーに入ると若手扱いされる。
「笑点」から離れても扱いは中堅だろうか。落語芸術協会では一番お客を呼べる存在で、協会の理事でもあるが、お身体さえ大丈夫なら、ずっと第一線で活躍し続けるだろう。
いいなあ、落語界は定年がなくて … 。