2学年だより「雨に文句を言わない」
終業式のときに学校長が紹介されていた本を、みなさんは当然に目にしているだろう。
山中伸弥博士と藤井聡太棋士――。ジャンルも年齢も(おそらく)生活圏も全く異なる二人。
しかし、ものすごい頭脳をもっている人というくくりでは、まさに同じ土俵のうえを、そして我々からすれば遙か遠い雲の上にいらっしゃるようなお二人だが、発せられる言葉はシンプルだ。
~ 山中 パンデミックなんて、もう人間一人の力で、どうこうできる状態ではないですからね。社会全体、みんなで努力しても一日二日じゃ改善しなくて、長期間の努力をしてようやく抑え込んだとしても、こちらが緩んでしまうと、必ずウイルスが元気を取り戻します。これからもそれなりの努力はみんなで続けないとだめで、そうなってくると自分だけじゃないわけですからね。僕が尊敬する作家の村上春樹さんが、「村上RADIO」でいろいろメッセージを話された中で「雨に文句を言っても仕方ない」とおっしゃっていたのが印象的でした。「いくら文句を言っても雨はやまない」と。そうだと思うんですね。この新型コロナウイルスは、あの国のせいだとかいろいろ言う人がいますが、誰のせいか文句を言っても、ウイルスはどこにも行かない。もうなるようにしかならないというか、ジタバタしても仕方ないので、今できるベストを尽くすしかないですよね。ワクチンが普及したとしても簡単には終わらないので、こういう不自由というか、制限のある状態は当分の間、続くだろうと思って、それはそれで受け入れていくしかない。じゃあ何ができるかというと、前向きに行くしかないというふうに僕は考えています。できないことをやろうと思ってもできないので、こういう状況でできることがないかな、ということを考えて過ごしています。 ~
第七波ともよばれる感染拡大は、今のところ落ち着く気配がないが、山中先生がこうおっしゃるならば、じたばたしてもしょうがないと思える。
~ 山中 ただ五年後とか十年後、振り返れば、「あの時があったから今の私がある」と思える時が来ると思うんですね。自分の人生を振り返ると、そういうことがよくあったので。その時はつらくて大変でも、後から振り返れば「あの時のあのつらい経験があったから、今こうしてやれているんだ。むしろあの時の経験がなかったなら、どうなっていたかわからない」と思うことがありますから。 (山中伸弥・藤井聡太『挑戦』講談社)~
雨に文句を言ってもし仕方がないのだ。
自分がもってうまれたものに、環境に文句を言ってもしょうがない。
たとえ予想もしない困難に見舞われたとしても。
そもそも思ったとおりにならない人生だからこそ、面白い。
思わぬ出来事、壁にぶつかった時に、ワクワクが顔に出てしまい、ついにんまりしてたというメンタルで生きていこうではないか。