水持先生の顧問日誌

我が部の顧問、水持先生による日誌です。

タトゥー

2013年11月10日 | 日々のあれこれ

 じゃ、「タトゥーの方入店お断り」は大丈夫なのかな。
 たとえば銭湯では今や一般的な約束だ(そういえばその昔、故郷芦原温泉の実家にまだ家風呂がないころ、「惣湯」とよばれる銭湯に通っていたけど、土地柄もあってか立派な彫りものをまとった人も一緒に入っていたし、普通に会話してた。今はだめなのかな)。
 けど、これも先日、生活風習としてタトゥーをしている外国人が来日し、銭湯に入れなくて「差別だ」と訴え、議論になったはずだ。

 じゃ、人格によって大学に入れるかどうかが決まるのは、差別にはあたらないのだろうか。
 人物入試になれば、面接の比重も大きくなるだろう。
 面接では、受験生の見た目も大きく左右する。純粋な見た目以外でも、試験官の好みのタイプというのはあるもので、結果としてかなり恣意性の高い合否判定になるだろう。
 ただでさえ忙しい、入試業務などやってられないと嘆く大学の先生が多いなか、恣意性を低めて入試の精度を高めるための十分な時間やコストが割かれるとは考えにくい。
 かりにそれが成功し、きわめて正確な人間判断が可能になりました、ということになれば、今度は逆に救いようがなくなる。
 つまり、入試に落ちることは、学力の不足ではなく、人としてダメだしされたことになってしまうから。

 根本的に、有為な人材を育てるために入試を変えねばならないという発想自体に問題があるのだろう。
 けっこう前だけど、朝日新聞「声」欄に、こんな投書があった。


 ~ 東大は大学改革より入試改革を   無職 宇佐美勝利(横浜市青葉区 70)
 東京大学が、秋入学への全面移行を見送って4学期制を導入する方針を固めたという。浜田純一総長の主導で2011年に改革の大花火が打ち上げられたが、今回、秋入学を見送ったのは正しい判断だったと思う。
 ただし、4学期制にも疑問が残る。会社決算は四半期決算として3カ月、もしくは中間決算として半年で流れをつかむ。2カ月ごとでは落ち着いて学問に取り組むことは難しいのではないか。長い人生の中でじっくりと腰を落ち着けて勉強できる期間は、若い時では大学ぐらいだ。2カ月単位でひとつのことを学び、成果を出せと言われてもその期間に学んだことは身にはつかないのではないか。
 東京大がまず大学の先頭となって取り組むべきは入試改革だ。多額の金をかけて学校や塾へ通い、解答のコツを身につけた学生が合格できる大学が多くては、卒業生も金太郎あめのような、独自の思考力がない人ばかりになる。そうした卒業生が学閥をつくり、形成されるような日本ではますます国が成り下がる。
 思い切った入試改革をして、小手先だけではなく応用力のある学生を集める努力をしてほしい。そうすれば海外からも学生が集まる好環境ができるだろう。 ~


 現実を知らずに、観念だけでものを言うとこんな風になるという典型的な文章だ。
 たとえば「解答のコツを身につけた学生が合格できる大学」とあるが、そんな簡単に東大の問題は解けません。
 「入試改革をして、小手先だけではなく」と書かれているが、人物重視の入試が行われるなら、高校現場ではそれこそ面接の練習やら、とりあえずのボランティア体験やら、小手先対策を山ほどやるようになるのは目に見えている。
 一番の問題は、大学の教育力を考えてない点だ。
 かりに、「知識偏重、1点刻み入試」で、思考力の足りない生徒が入学してきたとする。
 それを、変えてあげるのが大学ではないか。
 それまでの価値観を疑わせ、物の見方をひっくりかえさせるのが、学問の力ではないか。
 今の入試では応用力のない学生しか入ってこないし、その学生は四年後もそのまま卒業することが普通だ、というのなら、大学っていらなくね?
 ま、実際現実としてそうなっている部分もあるから、問題なんだけどね。
 日本の若者をなんとかしなければならない、ではまず大学入試を変えてなんとかしよう。
 こんなんじゃ、若者の前に大人たちの頭の中をなんとかする方が先じゃないかと思ってしまうのだ。

 

コメント
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