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北野武監督が撮る映画が好きだ。
これまで、彼が監督したすべての映画を観て来たけれど、どれもみな一定の水準を超えた力作ばかりだ。
そして昨日は「首」を見た。
実はこの作品、去年の時点で原作を既に読んでいた。そのことはブログでも以前に書いたけれど、小説自体それほど面白いとは思えなかった。
小説は、貧しい農民の茂助が豊臣秀吉の軍勢を目撃したことから、戦で出世しようと雑兵に紛れ込み、そこで羽柴秀吉と千利休に雇われている曾呂利新左衛門と遭遇したことで、信長、秀吉、光秀、家康を巻き込む熾烈な覇権闘争に巻き込まれてゆく様を描いていた。
つまり主役は茂助という人物で、そこに「噺家」の元祖のように語られる、曾呂利新左衛門が絡むストーリー展開だった。
ところが、文体が軽いというか、あっちに行ったりこっちに行ったりするので焦点が合わず、散漫な歴史小説に終始していたように思えた。
それが映画になった途端ら、俄然面白くなる。
北野武節が大炸裂!
人間という生き物がいかに強欲で狡賢く、身勝手なんだということを、これでもかというくらい徹底的に描写する。
日本の歴史上、最も有名な、信長、秀吉、家康という偉人? たちを、丸裸にしてこきおろす。これこそが人間の本性なんだと!
醜く、弱く、そして残酷な人間の最低最悪な部分を、どこまでも暴いてゆくのだ。
さすが、北野武!
こういうところがいいんだなあ。
これは面白かったです、北野監督の「首」。
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でも北野武といったら、処女作「その男、凶暴につき」のようなバイオレンス系、そして「アキレスと亀」とか「監督・ばんざい!」とかのユーモア・コメディ・タッチ系、それから「あの夏、いちばん静かな海。」や「キッズ・リターン」などの抒情系というかセンチメンタルな路線、これに大きく分かれると思う。あとは「Dolls」というようなちょっと異質な映画もあったけど・・・。
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個人的には、「アウトレイジ」、「キッズ・リターン」、「座頭市」、「3-4X10月」、「その男、凶暴につき」あたりが大好きだ。
なかでも、やはり「あの夏、いちばん静かな海。」が素晴らしかった。この映画は当時、青森県庁の西側にあった「みゆき座」という映画館で観た記憶がある。
映画には北野武自身出演しておらず、とにかく静謐で、透明感に溢れる素晴らしい青春映画だった。まさしく、「キタノ・ブルー」だ。
そんな北野武監督が作り出す映画は、いつも期待を裏切らない。
まだまだ映画を撮り続けて欲しい。心からそう願う。