待望の文庫化である。新居浜出張の往復の車中で一気に読破した。
私もこれまで輪王寺宮(のちの北白川能久親王)の足跡を追って、浅草東光院、市ヶ谷の自證院、仙台の仙岳院、更に白石城などを訪ねたが、今回「彰義隊」を読んで、これまで点でしかなかった輪王寺宮の潜伏地が、見事に全て線で繋がった。いつもながら吉村氏の緻密な追跡取材には感心するばかりである。
「逃避行」の描写は、吉村氏の得意とするところである。「長英逃亡」「桜田門外の変」も「逃避行」を主題とした小説といえるかもしれない。輪王寺宮は、皇族でありながら、泥水に浸かり、医者に変装し、夜陰に紛れて必死の思いで江戸から脱出したのである。
更には、板倉勝静、小笠原長行、松平定敬らが、奥羽の地に追われ、遂には榎本軍が抗戦する五稜郭まで逃避する姿も描く。老中や京都所司代といった幕府の重職を務めた大名たちが、五稜郭では何の役に立たず、厄介者扱いされていた。維新後の悲哀に満ちた人生は、決して表の歴史では語られることのない隠れた史実である。
戊辰戦争で朝敵となった輪王寺宮は、生涯その不名誉に悩まされる。ようやく巡ってきた雪辱の機会が、台湾征討であった。しかし、宮はマラリヤに侵され、台南で不帰の人となる。この小説を完成させた吉村氏も、その後1年余りで帰らぬ人となった。
私もこれまで輪王寺宮(のちの北白川能久親王)の足跡を追って、浅草東光院、市ヶ谷の自證院、仙台の仙岳院、更に白石城などを訪ねたが、今回「彰義隊」を読んで、これまで点でしかなかった輪王寺宮の潜伏地が、見事に全て線で繋がった。いつもながら吉村氏の緻密な追跡取材には感心するばかりである。
「逃避行」の描写は、吉村氏の得意とするところである。「長英逃亡」「桜田門外の変」も「逃避行」を主題とした小説といえるかもしれない。輪王寺宮は、皇族でありながら、泥水に浸かり、医者に変装し、夜陰に紛れて必死の思いで江戸から脱出したのである。
更には、板倉勝静、小笠原長行、松平定敬らが、奥羽の地に追われ、遂には榎本軍が抗戦する五稜郭まで逃避する姿も描く。老中や京都所司代といった幕府の重職を務めた大名たちが、五稜郭では何の役に立たず、厄介者扱いされていた。維新後の悲哀に満ちた人生は、決して表の歴史では語られることのない隠れた史実である。
戊辰戦争で朝敵となった輪王寺宮は、生涯その不名誉に悩まされる。ようやく巡ってきた雪辱の機会が、台湾征討であった。しかし、宮はマラリヤに侵され、台南で不帰の人となる。この小説を完成させた吉村氏も、その後1年余りで帰らぬ人となった。
作家がたくさんいますね。
吉村昭先生もその一人ですね。
私は少ないですが、本棚を見ると、「海の祭礼」
「天狗争乱」の二冊は読みました。
「海の祭礼」は通詞の森山栄之助に関心があったので、読んだのですがその緻密な歴史認識、描写に
驚きました。
今、検索して生涯を見直しましたが、奥様も
有名な小説家。
そして、思い出しました、亡くなる時は、自分で
命の綱の管を引き抜いた事を。
改めて,合掌です。
偉大な人生でした。