
東京の友人でKさんが久しぶりに我が家を訪れた。彼とは東京の施設からの友人で、30年以上の家族づきあいをしている。年齢も私と同じで、カミサン同士が同じ大学で、職場も同期ということもお互いをつないでいる。次男のM君は我が施設が無認可から法人化される前に3ヶ月ほど我が家にお預かりして、手伝ってもらったという経緯もある。
Kさんは昨年12月まで日本では社会福祉・知的障害者施設では歴史のある滝野川学園の総合施設長を勤めた。最近上映された「筆子その愛」の舞台になった施設である。引退するような年齢ではないのだろうが、車でのツーリングで今回は北海道利尻島や大雪山を巡った途中で、立ち寄ってくれたという次第。
昨日は快晴でもあり、二人で八甲田山のハイキングと蔦温泉7沼めぐりをした後で蔦温泉を堪能しようということになった。弘前を9時に出発して、黒石市から城が倉大橋経由で八甲田ロープウエイ着。八甲田山は通年では紅葉が見ごろのはずだったが、まだ三部程度であった。あと10日ほどで紅葉がもう少し進むのではないかということであった。ロープウエイで山頂駅往復料金が1,800円。ロープウエイから一望するパノラマは津軽富士(岩木山)陸奥湾、青森市などのほか、嶽樺、青森椴松、ナナカマド、ブナなどの広葉樹が広がる一帯を観察することが出来る。私は以前二度ほど春スキーを体験したことがあった。
山頂駅に降り立つと、八甲田山田茂萢岳(1300m)ゴードラインというハイキングコース(30分コースと1時間コース)があり、ボランティアガイドが無料ということで利用することにした。横浜から来たというご夫婦と一緒にガイドさんに案内をしていただきながら、ゆっくりとコースを歩き始めた。
八甲田山は大岳(1538メートル)を代表する北八甲田と櫛ケ峰を代表する南八甲田に分けられるという。ロープウエイで山頂を目指すと直ぐに左手前方に見えるのが前岳という青森第五連隊が真冬の二月に遭難した山が目に入ってくる。190人が遭難死したというあの新田次郎原作の「八甲田山死の彷徨」でも有名になった後藤伍長が吹雪の中で立ち尽くしていた姿があったので、10名はなんとか命だけは助かったという厳しい山でもある。今は紅葉が3割程度進む美しい山容である。コースハイキング道には「チゴユリ」が今は小さな赤くかわいい実をつけていたり、ナナカマドが赤い実をつけ、青森トドマツが松ボックリを枝に乗せて立っている姿が印象的だった。しばらく歩くといよいよ大岳の山が前方にそびえ、その真下に池沼がひょうたん型(ゴード)になって見えてきた。
最初の池では中国からやって来た家族が、温かな日差しの中で楽しそうに休憩をしていた。スケッチを楽しむハイカーがいて水彩画を仕上げていてとてものどかな風景だ。前方の大岳にはたくさんのハイカーが山頂を賑わせている姿が小さく見えた。このゴードラインから右手西側に下降するルートを取れば、約2時間で酸ケ湯温泉に出るのだという。いつか又訪れて見たいと思う素敵なコースに見えた。
1時間でまた山頂に戻り、ガイドに礼を述べ、またロープウエイで下山することにした。時計は午後1時を指し、空腹をようやく感じていた我々は酸ケ湯温泉で昼食をとるために向かった。