こんな美しい秋の一日に
野山に出て
自分も自然の一員だったと
思い出す者は幸いだ
思い出したぼくは幸いだ
…と、高尾から城山に続く尾根道で手帳に書きつけて、数歩あるいて、八木重吉をふと思い出した。
ぼくのメモには、そういう気持ちになったという以上には、ぜんぜん価値がない(この頃のどちらかといえば鬱屈した日々の中で、そういう気持ちになったというだけで、良いことではあるが)。
八木重吉はこう書いている:
素朴な琴
この明るさの中へ
ひとつの素朴な琴をおけば
秋の美しさに耐えかねて
琴はしずかに鳴りいだすだろう
・・・晴れた秋の一日は、人の心を美しくする。リルケの「秋」(主よ 時が来ました 夏はまことにさかんでした/あなたの影を日時計の上に横たえたまえ・・・)もそうだ。