東京教組(東京都公立学校教職員組合)

教職員のセーフティーネット“東京教組”

まず、教育を。

2014年06月27日 | インポート

Photo  イラク・アフガニスタン・パキスタン・シリア・・・世界には日常生活と隣り合わせに家族や友人・知人の死が横たわる国々がある。女性の教育を保障することを訴え、タリバンに銃撃され奇跡的に助かったパキスタンの少女マララ・ユサフザイさんの著書「わたしはマララ: 教育のために立ち上がり、タリバンに撃たれた少女」(GAKKEN)には、パキスタンやアフガニスタンの状況とそこに暮らす人々、イスラム教徒たちの抗争や葛藤がリアルに描かれている。例えば、彼女が生まれ育った美しい故郷、スワート渓谷の様子を次のように書いている。

ファズルラーの本拠地であるイマームーデリを政府軍が占領すると、タリバンは森に逃げていった。十二月のはじめ頃までに、スワートのほぼ全域からタリバンがいなくなった、と軍は発表した。ファズルラーは山に身を隠した。
 でも、タリバンが一掃されたわけではなかった。「平穏はそう長く続かないだろう」と父はいった。
 パキスタンを混乱させているのは、ファズルラーたちだけではない。パキスタン北西部にはいくつもの武装グループが蜂起していた。さまざまな部族グループによって作られたものだ。第一次スワートの戦いから約一週間後、四〇人のタリバン指導者が南ワジリスタッに集結し、パキスタン政府に対して宣戦布告した。彼らはテリクーイ・タリバン・パキスタン(TTP)、すなわち“ハキスタン・タリバン運動”の旗のもとに一致団結することで合意した。それらのグループがひとつにまとまれば、兵士の数は四万になる。全体のリーダーとして選ばれたのは、バイトウラー・メフスードという名の三十代後半の男だった。アフガニスタンでの戦闘経験があるという。ファズルラーはスワート地区隊長になった。政府軍が来たとき、わたしたちは紛争はすぐに終わるだろうと思っていた。でもそうはならなかった。むしろ、紛争はそれから本格化したのだ。タリバンが狙うのは、政治家や国会議員や警官だけではない。プルダを守らず外出する女や、あごひげの長さが足りない男や、ちゃんとしたシャルフールカミズを着ていない市民も攻撃の対象にした。

 このような状況下で学校を経営する父親と女性の教育保障を訴え続けるマララは、タリバンに脅迫され、命をねらわれた。そして、2012年10月19日、マララは銃撃された。16歳の誕生日に国連で演説したマララはこの時のことを次のように述べている。

わたしは左の側頭部をタリバンに撃たれました。わたしの友だちも撃たれました。タリバンは、ピストルでわたしたちを撃てば、わたしたちを黙らせることができると考えたのでしょう。でも、そうはいきませんでした。わたしたちが声をあげられなくなったとき、何千人もの人々が声をあげたのです。
 テロリストたちは、わたしの目的を変えさせてやろう、目標をあきらめさせてやろう、と考えたのでしょう。でも、わたしのなかで変わったことなど、なにひとつありません。あるとすれば、ひとつだけ。弱さと恐怖と絶望が消え、強さと力と勇気が生まれたのです。わたしはそれまでと同じマララです。目標に向かっていく気持ちも変わっていません。希望も、夢も、前と同じです。
 親愛なる兄弟姉妹のみなさん、わたしはだれと争う気持ちもありません。タリバンやその他のテロ集団に復讐してやろうという気持ちもありません。わたしがここにいるのは、すべての子どもには教育を受ける権利があると訴えるためです。タリバンを含め、すべてのテロリストや過激派の子どもたちにも、教育を受けてほしいと思っています。
 わたしは、わたしを撃った犯人のことも、憎んでいません。もしわたしが銃を持っていて、目の前に犯人が立っていたとしても、わたしは撃ちません。この思いやりの心を教えてくれたのは、慈悲深い預言者ムハンマドであり、イエス・キリストであり、仏陀です。意識を変革することを教えてくれたのは、マーティン・ルーサー・キング、ネルソン・マンデラ、ムハンマド・アリー・ジンナーです。非暴力の哲学を教えてくれたのは、ガンディー、バシャ・カーン、マザー・テレサ。そして、人を許す心を教えてくれたのは、わたしの父と母です。わたし自身の魂も、こういっています。「平和を大切にしなさい、すべての人を愛しなさい」

この感動的な演説の最後は、次のように締めくくられている。

 そのために、世界の無学、貧困、テロに立ち向かいましょう。本とペンを持って闘いましょう。それこそが、わたしたちのもっとも強力な武器なのです。ひとりの子ども、ひとりの教師、一冊の本、そして一本のペンが、世界を変えるのです。
 教育こそ、唯一の解決策です。まず、教育を。

 どんな国々でも、教育が世界を変え、平和をつくることに確信の持てる演説だと感じませんか。ぜひ、一読をお薦めする。


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