東京教組(東京都公立学校教職員組合)

教職員のセーフティーネット“東京教組”

少子化とワークライフバランス

2014年09月24日 | インポート
Img_7712 日本の少子化は進む一方だが、その原因は子どもを産み、育てるリスクが大きい社会であることが大きな原因である。先進国と言われる国々で同様の問題を抱えている国は多いが、その中でフランスは出生率が上昇し、少子化に歯止めをかけている。
 それは、2005年に嫡出概念を完全撤廃し、避妊や中絶が女性の権利として認められ「産む、産まない」が女性の決定権に任されているというバックグランドもありるからだ。そのうえ、出産費用は基本的に無料、託児システムも充実し、女性の雇用もパートやアルバイトのような不安定雇用はほとんどなく、労働者の9割が正規労働者。もしくは、非正規労働者であっても、給与や社会保険について正規労働者と差別してはならないと法律で定めているからだ。手厚い「家族手当」や「児童手当」があり、働く親が育児と仕事をてんびんにかけないですむよう、有給休暇や育児休業手当の制度も改善されてきた結果だ。つまり、ワークライフバランスを政策の中心に据えた結果と言える。「女性の活躍」をキャッチフレーズにしながら、非正規雇用を増やし、残業代をゼロにするなど労働法制を改悪してますます格差を拡大しようとする日本とは大きく違う。


蟻の家(アリヤ)

2014年09月19日 | インポート
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 本でも雑誌でも、編集者の思いが込められ、丁寧につくったものに出会うと幸せな気分になる。
 メディアが氾濫し、売らんかなの粗雑な雑誌が多い中で、ariya(アリヤ)という福岡の藤野幸子さんが発行・編集をしている季刊誌に出会った。
 アリヤは蟻家。一人ひとりの存在は小さいけれど、みんなで助け合い、支えあえば、誰もがきっと幸せに生きていけるはず。地に足をつけ、蟻の目線でゆっくり歩いていきたい。そんな思いを込めて、『蟻の家=アリヤ』と名付けました。

 とある。
 今号の特集(写真)は、「愛、一葉。」「紙漉きを行っている障がい者施設を訪ねました。」で、4つの作業所が紹介されている。レイアウトから写真の一枚一枚、文章の隅々に編集者の心が行き渡っている。紙漉きの行程が丁寧に説明されていて、学校でもやってみようと思ったりする。
 末尾に、「アリヤが考えていること。」として、①アリヤは毎号、福祉施設で作られる製品や、福祉活動を中心に紹介します。②アリヤの印刷は、福祉工場のコロニー印刷で行っています。③アリヤは読者が支える本でありたいと願っています。とあるとおり、このポリシーが、美しい本を作り出すんだろう。
 教育も、思いを込め、丁寧に、ポリシーを大切にしていきたいと思う一冊だ。
 ホームページから購読の申込みができる。年3回、春・夏・冬の発行で送料込み1746円。http//www.arinoie.com/



騙されない

2014年09月17日 | インポート

Img_7660  「見破れ!!オレオレ。電話でお金を要求する息子はサギ!?」という神奈川県警の標語を最近よく見かける。なかなかインパクトがあるが息子も信用できない哀しさがつきまとう。
 そこで「見破れ!!オレオレ。テレビで集団的自衛権を要求する首相はサギ!?」という標語はどうだろう。
 安倍首相は「海外で紛争が起き、逃げようとする日本人を米軍が救助、輸送しているとき、日本人が乗っている米国の船を自衛隊は守ることができない」と米軍艦船に乗る母子のイラストを示して訴え、人々を「もっともだ、守ってやれ」という気にさせようとした。
 しかし、紛争の際、米軍が海外の民間人を救出する優先順位は、
①米国旅券保持者
②米国永住許可書保持者
③イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド国民
④その他、と明らかにしている。日本人は「その他」である。
 朝鮮半島有事の際は、むしろ十数万人以上の①~③の避難者を日本が受け入れ、入国管理、宿泊、輸送、医療で協力することが「日米防衛協力の指針」(ガイドライン・1997年)で取り決められている。
 そのガイドラインで「日米両国政府は、自国の国民の退避及び現地当局との関係については各々責任を有する」と定めている。
 つまり、朝鮮半島で紛争が起きたら、日本人は日本政府が救助しなくてはならず、外国の避難民十数万人をを原発が林立する日本海側の港で受け入れてお世話するのである。
 日本人の母子が乗っている米軍の艦船を自衛隊が守る設定そのものがあり得ない。
「国民を守るのはオレオレ詐欺」に騙されてはいけない。
ゴーヤ


煽られない、個人の自由を蔑ろにすることを許さない

2014年09月12日 | インポート

1210  私が密かに2000年代最高の物語だと思っていた伊藤計劃のSF小説「虐殺器官」「ハーモニー」が来年アニメ映画になるらしい。これでメジャーになってしまうのはちょっと残念である。せっかくとっておきだったのに。
 
特に「ハーモニー」はSFを超えた文学的作品で、繊細な表現は「ライ麦畑」を彷彿とさせる傑作だ。
 1作目虐殺器官で描かれるのは人類はなぜジェノサイドを行えるのか、という疑問。ここで物語の着想の基になっているのはルワンダ虐殺だと思われる。活字メディアやラジオが「ツチ族は敵だ」「やられる前に殺れ」というヘイトスピーチでフツ族を煽った結果がルワンダの大虐殺だ。ルワンダに限らず過去の大量殺戮はプロパガンダと一体だった。
 更に2作目「ハーモニー」では個人の健康状態・行動が全て監視・管理された超福祉社会が描かれる。メディアに操られヘイトスピーチに煽られる人々。全体の安全を追い求めるあまり個人の自由を奪う社会。SFが現代社会の問題を描きその延長を予測し警告するのは定番だが、この夭折作家の伊藤計劃の描く未来は今の日本に当てはまり過ぎて怖い。
 、絶対に子ども達に育てていきたい態度の1つだ。
(有楽町の空)


賢い不服従

2014年09月10日 | インポート
9月4日夜、東京・日比谷野外音楽堂において、戦争させない1000人委員会・解釈で憲法9条を壊すな!実行委員会の主催で、「戦争させない・9条壊すな! 9.4総がかり行動」が開催されました。会場には5500人を超える組合員や市民が集まり、熱気に満ちた集会となりました。

Img_3907さて、この集会で作家の落合恵子さんがご挨拶の中で「賢い不服従」について語っていました。「賢い不服従」(intelligent disobedience)とは、盲導犬の世界のことで「本来、飼い主に絶対服従すべきとトレーニングを受けた盲導犬が、その道を行くと大きな危険があるとき、飼い主に『行け』と言われても知らん顔をして不服従を貫くこと」を言うのだそうです。不勉強な私は、初めて聞くことばでした。

安倍政権によって、日本が戦争への危険な道を歩み始めたいま、この「賢い不服従」は、確かに市民のとるべき一つヒントとなりますね。

落合恵子さんは、「彼ら(安倍政権)がやっていることこそ、民主主義に対するテロリズム」「私たちは、賢い不服従をきっちり握って自分のものにしましょう」と挨拶を締め括りました。


東京都の国家戦略特区

2014年09月05日 | インポート
Img_7637 日経新聞(2014/4/25 )によると、東京の国家戦略特区の指定について、竹中平蔵などの国家戦略特区諮問会議の有識者委員が、東京都が特区指定を千代田区や中央区など9区に限定したことに苦言を呈する異例のコメントを発表し、「都全域の指定を目指すべきだ」と、政府に調整を促した。
 特区は、2020年のオリンピックにむけ大胆な規制緩和をして経済成長を促す狙いをもっているが、教育の民営化や残業代なしの労働規制緩和も含まれている。
 舛添都知事は、有識者委員の指摘に「(区域を)やたらと広げればいいものではない。具体的にできることをやっていくべきだ。特区は打ち出の小づちではない」と反発。「机上の空論をやっている人が政策決定をしていることが理解できない」と不快感を示したが、成長戦略の起爆剤と考える有識者と、規制緩和を慎重にとらえる都との溝が浮き彫りになった。
 教職員の人事考課、学区自由化、学校への私塾導入など東京から始まって全国に波及してしまったが、これもそうならないとも限らない。子どもの貧困が問題になっている折、公教育を解体し、教育格差を拡大することで経済成長を狙うことは、教育を喰い物にすることに他ならない。
 英語で暮らせる東京、多国籍企業が最もビジネスをしやすい東京など都民は望んでいない。
(世田谷区砧公園)





尊厳のある働き方教育

2014年09月03日 | インポート

Photo  毎日新聞の東海林智記者は、自署「15歳からの労働組合入門」の対談で、

「僕はやはり、いつか労働者の共同性が一気に戻ってくる日が来るような気がしています。このままでいくと、労働組合がなくては生きていけないという状況が近い将来来るであろうことは、容易に想像がつきます。労働組合なんて苦手だとか、嫌いだとか、もはやそういう段階ではない。ないと生きていけない状況がすぐそこまで来ている気がするので、そのために備えていかなくてはいけないと思っています。」

 と語る。その備えが一番必要なのは、二重の意味で教職員組合だろう。
 というのは、教育現場のブラック化と将来働く人となる子どもたちの労働教育を担うからである。首都圏青年ユニオン事務局次長の神部紅さんは、同書の対談で

 「ある高校で講演した時にびっくりしたのは、私がさんざん話したあとに進路指導の先生が出てきて、何を言うかと思ったら、『今、講師の神部さんが権利の話をされました。でも、君たち、権利権利と言ってはダメだ。権利の前に義務がある。とくに君たちは遅刻や欠席が多い』。それはいわゆる底辺校といわれる学校です。学校側は、生徒に対して締めつけをするというか、生徒に社会の厳しさを叩きこまなくてはいけない、という考え方です。さらにびっくりしたのは、その後の言葉で「学年の目標をおまえら覚えているか。『自己責任』だ」。腰が抜けるほど驚きました。」「ええっ、自己責任!? と驚愕したんですけど。私は、もう二度とこの学校に呼ばれなくてもいいと思い、権利と義務との関係性についてお話しさせてもらいました。さっき先生がおっしやっていたことは間違いだと。」

 いかにもありそうだと思うが、これではブラック企業に死ぬほどこき使われてお払い箱になる子どもを育ててしまう。尊厳のある働き方、理不尽な企業との対処の仕方など、憲法や労働法とともにカリキュラムとして確立する必要が求められている。
 東京教組の授業事例集「未来の私-よりかからない生き方を求めてー」なども学校で活用してほしい。
(カモ)


国連人種差別撤廃委員会から日本政府に厳しい「最終見解」

2014年09月02日 | インポート
国連人種差別撤廃委員会から日本政府に厳しい「最終見解」が出されました。

Photo人種差別撤廃委員会は、国連総会で全会一致で採択された「人種差別撤廃条約」(あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約)をもとに、1970年に設立された組織です。ジュネーブにある国連人権高等弁務官事務所が事務局を担っています。この事務所のあるのが日本審査の行われたパレ・ウィルソン(旧国際連盟)です。2010年の「子どもの権利条約」の日本審査の際には、私も3日間この建物の中で傍聴やロビー活動を行いました。ロマン湖のほとりにある趣のある建物です。

国連人種差別撤廃委員会は8月29日、日本政府に対して、ヘイトスピーチ(憎悪表現)問題に「毅然と対処」し、法律で規制するよう勧告するとともに、慰安婦問題についても、慰安婦に対する人権侵害を調査し、責任者の責任を追及することなどを勧告する「最終見解」を公表した。最終見解では、アジア女性基金による「償い金」支給など日本側の取り組みを「留意する」とする一方、「真摯な謝罪表明と適切な補償」を含む包括的な解決を目指し、慰安婦への中傷や問題を否定する試みを非難するよう求めました。

東京や大阪を中心に在日韓国・朝鮮人を中傷するデモが活発になっていることを受け、今回、「ヘイトスピーチ」問題についても初めて勧告しました。委員会はまず、ヘイトスピーチについて「デモの際に公然と行われる人種差別などに対して、毅然と対処すること」を求め、異なる人種や少数民族に対する差別をあおるヘイトスピーチ(憎悪表現)を行った個人や団体に対して「捜査を行い、必要な場合には起訴すべきだ」と日本政府に勧告しました。また、ネットなどのメディアやデモを通じてヘイトスピーチが拡散している状況に懸念を表明し、「ネットを含めたメディア上でのヘイトスピーチをなくすために適切な措置をとること」などを求めました。さらに、ヘイトスピーチにかかわる官僚や政治家への適切な制裁も促しました。ヘイトスピーチを巡っては、7月の基本的人権の状況について調べる国連人権規約委員会でも、国として禁止するよう求める勧告が出されています。

ヘイトスピーチの法規制や、人種差別撤廃法の制定も勧告し、 「表現の自由」を「口実にすべきではない」ともくぎを刺しました。日本は人種差別撤廃条約に加盟していますが、ヘイトスピーチの法規制を求める4条は「表現の自由」を理由に留保しています。委員会はこの留保の撤回も求めました。ドイツなど欧州ではヘイトスピーチを法律で規制している国が多いのです。

安倍内閣が昨年6月18日、旧日本軍の「慰安婦」問題に関する国連の拷問禁止委員会の勧告について、「法的拘束力を持つものではなく、締約国に従うことを義務づけているものではない」とする答弁書を閣議決定しました。高校無償化制度から朝鮮高校を除外していることを「差別」だと断定した国連社会権規約委員会の勧告(6月17日)に対しても、日本政府は無視を決め込んだどころか、下村博文文部科学大臣が「民族差別にはあたらない」とまで言っています。

もとより、勧告ですから、形式的な法的拘束力の有無の問題だけでいえば「無い」とすることは、間違っているわけではありません。しかし、それを「締約国には従う義務が無い」と言ってしまうのは、明らかに大きな誤りでしょう。日本国憲法の第98条第2項は、日本が締結した条約について、「誠実に遵守する」ことを国に対して義務づけています。感情的な反発を交えつつ、「聞く耳持たず」的な一切の国際的な批判を受け入れないという強硬な姿勢を続けていけば、日本が国際的に孤立することは間違いないでしょう。


99歳と102歳

2014年09月01日 | インポート

Photo  99歳のむのたけじさんと102歳の日野原重明さんは、ともに安倍政権の集団的自衛権容認の解釈改憲に腹を立てている。
 むのさんは、先日日本ジャーナリスト会議特別賞を受賞した。「まずやらなければならないのは、近隣諸国と仲良くすること。なのに今の政権は『逆ばかりやっている』。戦争を生きたジャーナリストとして、『命のある限り第3次世界大戦を防ぐ仕事をしていく』と受賞を機に決意を新たにしている。」と朝日新聞の「ひと」欄に紹介されている。
 日野原重明さんは、「十代のきみたちへ-ぜひ読んでほしい憲法の本」(冨山房インターナショナル)を発刊した。そのなかで「いのちを守るためにはなにより平和が必要」「憲法は『いのちの泉』のようなもの」「いのちを守る憲法をいつまでもだいじにしてほしい」と憲法の内容をわかりやすく説き、若者に平和(いのち)を守るためにお願いしたいことを書き綴っている。ぜひ子どもたちに読んでほしい一冊だ。
(雀の蛇口・箱根公園)