安倍首相が米ノーベル経済学者を招いて消費税について意見を伺ったニュースは耳に新しい。「消費税引き上げる時期ではない」と安倍首相に直言したのはジョセフ・スティグリッツ教授。どうもこの話、安倍首相が消費税引き上げは無理と感じてお墨付きをもらったとの見方が強い。
このスティグリッツ教授が「彼は最も大切な先生です。研究だけでなく個人的にも教えられました。1日中、数学や経済学について語りあったものです。世の中を変えたいと経済学の世界に入った私には、刺激的でした。」と述べた経済学の師匠が宇沢弘文さんだ。
その宇沢さんの論敵が新自由主義の旗手ミルトン・フリードマン、竹中平蔵の師匠筋だ。スティグリッツ教授は宇沢さんについて「教授の研究の大きな特徴は、格差の問題に注目したことです。 一方シカゴ大学には、格差は取り上げる問題ではないという人さえいました。
格差問題を全くかえりみない市場原理主義の考えと、教授は相いれなかったのです。」とも述べている。
その宇沢弘文さんの著書が表題の「経済学は人々を幸福にできるか」(東洋経済新報社)だ。経済学に詳しくない人でも宇野経済学の神髄がわかる本になっている。その中の一説に憲法9条は幣原首相がマッカーサーに提言したものという一節がある。すでに定説であるが、その部分を紹介する。
マッカーサーがトルーマンに最高司令官を解任されて本国に戻ったときに、上・下院合同の委員会が開かれて、マッカーサーが証人として二日ほど証言したことがあります。
マッカーサーの証言は次のようなものでした。
幣原首相があるとき、総司令部を訪ねてきてこう言った。日本が平和国家として国際社会の中でこれからも存続するためには、軍隊をもってはいけない。あなたは軍人なので、こういうことを言うのは失礼だと思うけれども、日本の新法に日本は軍備をいっさいもたないという条項を入れてほしいと。そこでマッカーサーは幣原をエンカレッジ(激励)した。だから日本の憲法に第九条を入れたことは自分の力だ。マッカーサーは自分の功績をオーバーに言う人なんですね。
あの好戦的なマッカーサーが日本の平和憲法を作るうえでのいちばんの功労者であるということで、マッカーサーに対するアメリカの世論が一変したのです。それでマッカーサーを大統領候補に、という大きな運動が起こりました。ところが、事務局とうまくいかなくて、結局、事務局のほとんどの人が辞めてしまって選挙ができなくなったという。いかにもマッカーサーらしいエピソードが残っています。