東京教組(東京都公立学校教職員組合)

教職員のセーフティーネット“東京教組”

民主主義を守る教育とは

2018年01月17日 | 日記

 
 新しい年、2018年がスタートしました。年の初めには希望を語りたいところですが、安部首相は1月4日に「戌年の今年こそ、新しい時代への希望を生み出すような、憲法のあるべき姿をしっかりと提示し、憲法改正に向けた国民的な議論をいっそう深めていく。自民党総裁として、そのような1年にしたい」と述べ、憲法の改悪に弾みをつけようとしています。                                                          

 先日、毎日新聞でドイツの政治教育を取り上げている記事を読みました。記事によるとドイツで政治教育を行う教師は「児童・生徒に特定の政治思想を植え付けてはいけない。自分の意見と違うからといって、言及しないのもいけない。教師が中立でなければならないという考えも否定する。人間が何らかの思想を持つのは当たり前という考えからだ。その上で、教わる側が教師の意図を理解し、批判もできるように、教師が自分の思想信条を明らかにすることを重んじる。また、政治教育がどのようなものであるべきかについて多様な考え方を認め、一人一人が判断すべき」だとしているそうです。そして、選挙中に授業に候補者を招き、候補者は生徒の質問を受け、主張を行います。参加する生徒に対し教師は「候補者の発言は本当なのか、と批判的に聞くように指導」しているのだそうです。

 「森友、加計疑惑」であれだけ支持率を落とした安部自民党を、昨年の衆議院選挙で圧勝させてしまう国民を育ててきたのは戦後民主主義教育です。度重なる組合への激しい攻撃と、教育現場の管理強化によって民主主義を担う主体の形成がとても難しくなっていることは事実ですが、教師が首をすくめたままでいいのでしょうか。

 ドイツと同じような政治教育を日本で行うことは難しいでしょう。なぜなら政治教育の中身は、時の政治体制によって変わる可能性が高いからです。記事の中で、ドイツの政治教育に詳しい早稲田大学教育学部の近藤孝弘教授(政治教育学)は、「ドイツでも第一次大戦中、連邦政治教育センターの前身は政府の宣伝機関だった。民主主義のための政治教育とは、さまざまな意見を許容する超党派的なもの。民主主義そのものが壊れやすく、守り続けるには国民の努力を必要とするが、その認識が一般的に共有されなければ、いくら公的機関を作っても機能しないだろう」と述べていました。

 私たちは学校教育の様々な場面で民主主義の大切さと「民主主義そのものが壊れやすく、守り続けるには国民の努力を必要とする」ということを子どもたちと共有化していく努力を私たち教師はしていかなければいけないのだなと思うのでした。


あけましておめでとうございます

2018年01月09日 | 日記

あけましておめでとうございます。組合員のみなさんに支えられ、東京教組もおかげさまで新たな年を迎えることが出来ました。ありがとうございます。

 

 安倍政権の長期化により、その新自由主義的な経済運営の下で、日本の社会に貧困と格差が大きく広がっています。子どもたちの貧困率はOECDによって警告されるまでに高まり、今や6人に1人の子どもが貧困に苦しんでいます。また、「戦後レジュームからの脱却」をめざすその政治路線は、平和と人権を脅かし、立憲主義の危機を招き、憲法の改悪さえも現実味を帯びてきました。未だに収拾の目処が立たない東京電力福島第一原子力発電所大事故と(にもかかわらず)再稼働する原発、暴力的にすすめられる沖縄の辺野古新基地建設の実態は、日本の民主主義の脆弱性を如実に表しています。

 しかし、安倍首相の「自己都合解散」による総選挙は、残念ながら自民党の圧勝で終わり、与党(自民党、公明党)が三分の二を超える議席を獲得しました。審議が進めば進むほど疑惑の深まる森友・加計問題は、いよいよ幕引きが図られようとしています。

 

 学校では、多忙化に有効な歯止めがかけられないまま、四月からは新学習指導要領の下で、小学校「英語」が始まり、ますます多忙化に拍車がかかる状況です。東京都教育委員会が公表した「職場実態調査」の結果では、中学校の約七割の教員が過労死ラインを超えた超過勤務の実態にあることが明らかになりました。さらに、「特別の教科 道徳」が始まり、国家の価値観を子どもたちに一方的に押しつける教育が推し進められることが危ぶまれます。

 

 なかなか新年らしい明るい話題がない中で、以前観た映画『世界の果ての通学路』をふと思い出しました。

 

『世界の果ての通学路』は、道なき道を何時間もかけて通学する子どもたちを追った、驚きと感動のドキュメンタリー映画です。野生のキリンや象が生息す

バンナを駈け抜けるケニアのジャクソン。山羊飼いの仕事を終えてから、愛馬で学校へ向かうアルゼンチンのカルロス。女子に教育は不要とする古い慣習が残る村から、寄宿学校に通うモロッコのザヒラ。生まれつき足が不自由で、弟たちに車椅子を押されて登校するインドのサミュエル。通学路は危険だらけで、大人の足でも過酷な道のりですが、それでも子どもたちは学校へ向かいます。

 

東京で暮らす私たちからすれば、正に「毎日が大冒険!?」の通学路、その想像を超える危険な通学路を学校を目指して通う子ども達は、しかし、喜びに溢れています。彼らの世界では学校へ行けず働いている子どもも多いのです。学校で学び、なりたい職業に就ける可能性がある未来が彼ら、彼女らにはあるからです。

私たちは、登場する4人の子どもを通して、女子教育の問題や貧困、そして児童労働など多くの問題を考えさせられます。また、スクリーンからは、お仕着せの感動ではなく、先生や親たちを含むそこで暮らす人々の生きる姿勢が鮮烈に私たちに迫ってきます。そして、何よりも、「夢をかなえたいから」と瞳を輝かせる子どもたちの笑顔に「学校とは何か」という問いかけを自分にすることになります。

 

 東京の子どもたちが喜びと希望に溢れ、笑顔で学校に通えるように、そして、子どもたちが目を輝かせて「夢」を語れる学校、教職員が子どもたちとともに未来を語れる学校を私たちも取り戻さなければなりません。

 

 今年も組合員の皆さんとともに、執行部・書記一同全力で頑張る決意を申し上げ、結びに組合員の皆さんとご家族のご健勝を心より祈念し、新年のご挨拶と致します。本年もどうぞよろしくお願いいたします。