生活保護基準の引き下げが今年の8月から始まり、3年間で、最大10%カットされることになった。この議論の始まりが、「不正受給」問題だった。さらに、一部の政治家が年金生活者や最低賃金勤労者との「逆転現象」を、「不公平だ」と言い立てたのだった。
「逆転現象」が不公平なら、最低賃金をアップさせるということも考えられるのに、実施されたのは、「生活保護基準の引き下げ」だったのである。
昨日この問題について、弁護士さんの講演を伺う機会があった。それによると、生活保護基準の引き下げは、さまざまな波及効果をもたらすそうだ。重要なポイントは3つで、
①生活保護基準を目安にして、利用条件を設定している制度が利用できなくる。
例えば、就学援助
②住民税の非課税基準が下がり、今まで無税だった人が課税される。
③住民非課税だと安く済んでいた負担が増える。
例えば、保育料は、9000円から19500円に上昇(自治体によって上乗せ援助あり)
こうしたことを考えると、基準の引き下げにより、「正直者が、もっとバカを見る」社会になってしまうことになるそうだ。
講師の資料の資料にあった当事者(ある生活保護家庭の高校生)声を紹介する。
「私は、通学に1時間半かかる高校に通っていて、朝は4時半に起きて弁当を作り、学校帰りにそのままバイトに行き、帰宅するのは22時ごろ。(中略)私がおかしいと思うのは、バイト代が、保護費から差し引かれることと、扶養義務についてです。私は、専門学校への進学を考えてバイトを始めました。高校生のバイト代が生活費として差し引かれるのは当たり前のように、思われていますが、学校に通い成績上位をキープしながらバイトをするということがどんなに大変なことかわかっていただきたい。そしてバイトをするのは、決して私腹を肥やすためではないことを。(中略)
ただでさえ切り詰めた生活をしているのに、これ以上何を我慢すればいいのでしょうか。景気が上がれば、物価は上がるのに、保護費は減額?私がどうしても伝えたいことは、生活保護受給家庭の子どもは、自分の意志で受給しているわけではないということです。生活保護への偏見を子どもに向けるのは、おかしいです。不正受給ばかりが目につき、本当に苦しんでいる人のことが見えなくなっていませんか。」
実態をしっかりと調べ、当事者の声を聞き、どのような影響が出るのかを十分に考えて政策を決めなければならないはずだが、「決められる政治」の実態は、結局のところ「弱者の切り捨て」ではないのだろうか。 (ハツユキソウ)