東京教組(東京都公立学校教職員組合)

教職員のセーフティーネット“東京教組”

障害者の権利に関する条約

2014年04月30日 | インポート
Photo 日本もやっと「障害者の権利に関する条約」を批准し、2月19日から効力が生じるようになった。
 この条約の特徴は、「われわれのことを我々抜きで勝手に決めるな」(Nothing about us without us !)と言うスローガンを掲げ、「障害」は個人ではなく社会にあるという視点に立ったことだ。
 第24条の教育には、「障害のある人が成人教育や生涯学習も含めて、インクルージョン教育制度の下に良質な教育を受けられる公平な機会を与えられること。個人に必要とされる合理的配慮が提供されること。さらに障害のある人も教員に採用し、点字や手話の学習やそれらの利用できる機会を確保する。」と明記している。
 しかし、日本の学校教育法及び同法施行令は未だに、障がいのない子もある子も分け隔てなく共に学ぶことを原則としておらず、あらゆる段階において共生社会を形成するための教育(インクルーシブ教育)を保障するために更に法整備と意識や制度の改革を必要としている。
 条約には、「合理的配慮」と言う言葉がたびたび出てくる。その定義は、「障害者が他の者と平等にすべての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるものであり、かつ、均衡を失した又は過度の負担を課さないものをいう。」と定義されている。
 さて、4月22日に実施した文科省の全国学力・学習調査で合理的配慮はされたのだろうか?例えば、問題文の拡大や読み上げ、ルビふりなどはされたのだろうか。文部科学省は、「ふだんの配慮と同様の配慮をしてよい」と言う見解。入試と同様、普段していないのにこの時だけ、というのは無理だとのこと。国も「個々の状況に合わせて配慮を行って実施してほしい」と応答している。
 あなたの学校では、どうでしたか?コメント欄を利用して、実例を教えていただけるとありがたい。
(春雨に咲く葉桜)


メーデー・アベ・オバマ

2014年04月28日 | インポート

Img_0265  メーデーの中央大会(代々木公園)が4月26日に開催された。例年、明治公園から代々木公園まで結集デモをしていた東京地公労は、オリンピックの工事で明治公園が使用できないため千駄ヶ谷区民会館での集会・デモになった。
 中央集会では、来賓として安倍首相をはじめ9党が参列し挨拶を行った。
 集会の冒頭、古賀連合会長は、安倍政権の労働者保護ルールの改悪(無期限派遣社員、残業代ゼロ制度、クビ切り自由化制度など)について批判し、たたかう決意を述べた。
 一方、そのあと演壇に立った安倍首相は、そのことに一切触れず成長戦略(アベノミクス)で賃上げ、雇用を守ると、まったくすれ違った挨拶。会場からはブーイングの声が上がった。公明党の山口代表も労働者保護ルールには全く触れなかった。他の野党からは、労働者保護ルール改悪反対や最低賃金の引き上げの発言もあっただけに、議論をすり替えた与党の対応に失望した。
Img_0298  すり替えと言えば、先日来日したオバマ大統領が共同記者会見(4/24)で発言した内容の報道が誤訳ではないかと、乗松聡子さんが指摘し、琉球新報もこれを取り上げている。
 誤訳を指摘されている部分は、日中関係についてオバマが「私は首相に直接言いました。この問題で、日中間で対話や信頼関係を築くような方法ではなく、エスカレーションを許し続けることは深刻な過ちであると。」という部分。オバマは、「I’ve said directly to the Prime Minister that it would be a profound mistake to continue to see escalation around this issue rather than dialogue and confidence-building measures between Japan and China.」と言ったが、新聞各紙は、「事態がエスカレートを続けるのは(正しくない)望ましくない。日中は信頼関係を醸成すべきだと要求。」と書いた。
 「正しくない」と「 深刻な、甚大な(profound)過ち(mistake)」では、確かにニュアンスに相当な違いがある。
 「尖閣防衛は安保5条の範囲」をオバマの満額回答とトップで報じた新聞が、日中の信頼関係醸成を厳しく要求したことを過少に報道した疑いが残る。
 この会見では、安倍首相が大統領を「バラク」と呼び、オバマ大統領が「 総理大臣(the Prime Minister )」と呼ぶ「すれ違い」も物議を醸している。


脱原発テント

2014年04月25日 | インポート
Pa130153 東日本大震災から半年後の9月11日、経済産業省前の角地に脱原発テントが設置された。
 10月27日には、福島の女たちが経産省と交渉、この日から3日間100人近くが座り込みをはじめ、その後、全国の女たちも一週間の座り込み。のべ4250人。
 2013年3月29日、国は1000万円以上の使用料と「土地明け渡し請求」のスラップ訴訟を起こす。これまで、6回の口頭弁論が行われているが、裁判は予断を許さない。6月には、鎌田慧さん、澤地久枝さん、瀬戸内寂聴さんらを呼びかけ人にテント応援団を結成。
 今年6月6日で、テントは1000日目を迎える。そこで、「STOP再稼働!テント1000日!6・8集会」が開催される。
 集会は、神田香織さんの講談「福島の祈り-ある母子避難の声-」にはじまり、渕上太郎さん(経産省前テントひろば)、中嶌哲演さん(僧侶・テント応援団呼びかけ人)、武藤類子さん(原発いらない福島の女たち)、河合弘之さん(テント裁判弁護団団長)、ミサオ・レッドウルフさん(首都圏反原発連合)などが発言をする。
日時:6月8日(日)14:00~16:30
場所:明治大学リバティーホール
資料代:1000円




村山談話

2014年04月23日 | インポート
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 わが国は、遠くない過去の一時期、国策を誤り、戦争への道を歩んで国民を存亡の危機に陥れ、植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えました。私は、未来に誤ち無からしめんとするが故に、疑うべくもないこの歴史の事実を謙虚に受け止め、ここにあらためて痛切な反省の意を表し、心からのお詫びの気持ちを表明いたします。また、この歴史がもたらした内外すべての犠牲者に深い哀悼の念を捧げます。
 敗戦の日から50周年を迎えた今日、わが国は、深い反省に立ち、独善的なナショナリズムを排し、責任ある国際社会の一員として国際協調を促進し、それを通じて、平和の理念と民主主義とを押し広めていかなければなりません。同時に、わが国は、唯一の被爆国としての体験を踏まえて、核兵器の究極の廃絶を目指し、核不拡散体制の強化など、国際的な軍縮を積極的に推進していくことが肝要であります。これこそ、過去に対するつぐないとなり、犠牲となられた方々の御霊を鎮めるゆえんとなると、私は信じております。


 いわゆる村山談話、1995年8月15日に閣議決定された「戦後50周年の終戦記念日にあたって」と題する総理大臣談話の一節である。
 ところが、下村博文文科大臣は、今年2月と3月に「村山内閣総理大臣談話、河野官房長官談話自体は、これは閣議決定されたものではありません。教科書検定基準における『政府の統一的な見解』には当たりません」と国会で誤った答弁をした。あたかも村山談話を教科書から排除するような発言だ。
 しかし、その誤りを指摘され、下村文科大臣は4月9日の衆議院文部科学委員会の冒頭で誤りを認め謝罪の発言をした。なんと恥ずかしいことか。
 村山談話は、「『杖るは信に如くは莫し』と申します。この記念すべき時に当たり、信義を施政の根幹とすることを内外に表明し、私の誓いの言葉といたします。」という言葉で締めくくられている。信義の欠片もない大臣は即刻辞任すべきだろう。
ボケ


「男のくせに」「女のくせに」

2014年04月21日 | インポート

Photo_2   トラウマを文化精神医学、医療人類学の分野から詳細かつ多様に読み解く、「トラウマ(岩波新書、宮地尚子)」を紹介する。宮地さんは、東日本大震災の被災者と支援者の関係を「環状島モデル」として提示して、眼から鱗だった記憶があるが、その考察の深さと拡がりに本書でも感心した。耕す(cultivate)は文化(culture)の語源でありトラウマを耕すことを提唱していることも、自分が受け持つ子どもたちと共有したいと思った。人間存在の脆弱性、不完全性を認識しつつ「人は皆、人生の初心者」と言い切っている。Artについても鋭い造詣を示してくれて刺激された一冊だった。その中に、ステレオタイプにすぎないが、まだあるジェンダー規範が次のように示されていた。
男性性(masculinity)
 公的領域、論理・理性、統率・支配・管理、戦闘や防衛、強く大きい、能動的・攻撃的、勇敢、性的攻撃性・活発さ、知的紳士とマッチョ・マン。
 なんだか安倍首相の描く国家像のようだ。
女性性(femininity)
 私的領域、感情・感性、従順、ケアや共感、弱く小さい、受動的・平和的、臆病、「貞操」、聖母と娼婦(良妻賢母とファム・ファタール)
 これも、安倍首相の描く福祉政策のようだ。
 そこから外れてしまったときあびせられる言葉が「男のくせに」「女のくせに」だ。
「男のくせに」
 弱虫・臆病者、泣くな、怖がるな、神経が細かい、繊細すぎる.・傷つきやすい、甲斐性なし、女のひとりもいうことを聞かせられないのか
「女のくせに」
 優しくない、子どもがかわいくないのか、神経がずぶとい、気がきかない、なまいき、男にたてつくな、でしゃばり、淫乱 
(出典)宮地尚子編著「トラウマとジェンダー」
 あまり口に出して言わなくなったようだが、職員室でも教室でも陥りやすいジェンダーに注意したい。
(ヤエマメザクラ)


働きすぎ、疲れすぎ、数量化しすぎに、ご注意!

2014年04月18日 | インポート
Photo 慌ただしい新年度も一息つき、ホッとしたところで体調を崩される方が多い時期になりました。三楽病院の精神科の医師として教職員のメンタルヘルスに尽力された中島一憲さんがお書きになった「現役医師が見ている『教師のこころ』」「少しだけ、こころが壊れていませんか?」を紹介します。中島さんは、これをお書きになった8ヶ月後(2007年11月6日)にお亡くなりになりました。
 いま、先生方も年度をまたぐ忙しい時期をすごされていることでしょう。体調はなんとかもちこたえていますか? 気力がどうしても出なくて、毎日が過ごしづらくありませんか?とかく、いまの時期のように、大きな仕事を終えてやれやれと一息ついたときに思わぬ体調の崩れを起こすことがあるものです。あるいはようやくここで一息つけると期待したはずなのに、それを周りが許してくれないハプニングが起きてしまうなどといったことがあると、やはり変調に陥ることがあるものですね。

 実は、ついにわたしもたおれてしまいました。いま、病院の病室のベッドのなかから最後のエッセイを書いています。「最期」とならなければよいのですが・・・。同じ病院でも診察室のなかの医師としてでなくて、病室のなかのひとりの患者としてですから、またその感慨はずいぶん違うものですね。

 これまで短期間の連載でしたが、進路指導に関わる先生方の日頃お考えになったり、悩まれたりされていることについてちょっぴりヒントをお示しできたかなと思っていました。

 そのなかでも何度かヒントとして挙げたのが、「働きすぎ、疲れすぎ、数量化しすぎ」など「すぎること」でした。これに気づいた段階で自分でも周りでもストップをかける、ということの大切さでしたね。

 わたしも今回、あ、これはまずいなと気づいていました。周りも声をかけてくれました。が、このくらいは実際のところ、しばしばあるものです。このくらいの激務はなんとか乗り越えながらやってきたものです。しかし今回は実にタイミング悪く、いかんとも避けられない業務が重なったという不運に出会ったというところでしょう。人生まったく計算どおりにはいきませんね。まさに坂本龍馬前のめりにたおれる、の図で救急車搬送される始末となったわけです。しかも既に身体疾患は進行していました。

 さて最終回の今回、先生方に申し上げるとすれば、もはや「すぎることに注意してくださいね」というわけにもいきませんね。「とにかく人生計算どおりにはいきませんから、後悔しないように。絶えず軌道修正をしながら生きてください」ということでしょうか。なんだか、冴えない最後のヒントの言葉となりましたが、筆者自身の近況がこの有様だけに、こんなもので勘弁していただきたいと思います。

 今後、先生方の進路指導がさらに充実し、しかもご自身が健康にお仕事に向かわれることを期待しています。

 参考までに、教職についてのメンタルヘルスのお話は、拙著(ネットで容易に検索できます)をご覧いただければと存じます。


 教職員メンタルヘルスチェックは、東京教組のホムページでご覧ください。
(小彼岸桜)


みつばちをまもること=畑とごはんをまもること

2014年04月16日 | インポート
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 ミツバチは、私たちの食べる農作物にとってなくてはならないもの。ミツバチが花粉を運び、農作物の生産を世界中で支えていることは周知のとおりだ。
 農業の大事なパートナーであるのミツバチが、今世紀に入ってから、大量に姿を消しはじめている。2007年には、北半球のミツバチの1/4がいなくなったといわれる。その原因の一つが「ネオニコチノイド系農薬」。植物に浸み込む特徴を持つ毒性の強い農薬で、ミツバチにもヒトにも猛毒だが日本ではいまも大量に使われている。ヨーロッパでは、すでにミツバチを保護するため、2013年の12月からネオニコチノイド系農薬の暫定的に規制が始まった。
 日本もミツバチによる受粉に頼る農産物が多いので、このままハチたちがいなくなってしまったら大変。
 グリーンピースがつくったミツバチを守るリーフレットは、とても分かりやすく授業などでも活用できそうだ。是非一度見てはいかがでしょうか。
リーフレット「みつばちをまもること=畑とごはんをまもること」PDF版



消費税!便乗値上げ?

2014年04月14日 | インポート

 Photo 消費税が8%になり、便乗値上げ(値下げ)に気づいた。
 例えば、郵便料金。葉書も封書も2円の値上げ。どう考えてもおかしい。本体価格+消費税として考えれば、葉書は、本体価格47.6円、消費税8%だと51.4円。60銭の便乗値上げだ。封書は、逆に82.3円で30銭の値下げになる。(小数点第2位以下四捨五入)
 もっと、奇怪なのが電車賃。190円区間の運賃が、切符を買うと200円、スイカだと195円だ。切符の場合だけ5円の便乗値上げになる。
 なぜ、こんなに細かいことにこだわるか?それは、消費税は、事業者が払うものであって、消費者が払うものではないという原則があるからである。事業者は増税分を支払わなければならないので商品価格を値上げして損失を防ぐ。従って、値上げしたら売れなくなってつぶれてしまう中小零細は増税分を自分でかぶってしまうことになる。
 経団連のような大企業が、消費税の増税に賛成するのは増税分を商品価格に転嫁したり、便乗値上げが出来るだけでなく、もっと驚くべきからくりがある。
 それは、消費税増税と法人税減税がセットになっていることと、輸出品には消費税がかからない(輸出免税)ということだ。
 例えば、200万円の自動車の場合、国内で販売すれば16万円の消費税を会社は払わなければならないが、輸出の場合、部品などの原材料などに払ってきた消費税が還付される。消費税が5%だった2003年の資料でも、トヨタは1,710億円。ソニーは1,047億円、経団連会長のキャノンも642億円も還付されているのである。10%になったら、どんだけ儲かるのだろう・・・
    (河津桜)


戦争をさせない1000人委員会

2014年04月11日 | インポート
Photo 3月20日、東京・日比谷野外音楽堂で、「憲法を破壊する集団的自衛権行使反対! 戦争をさせない1000人委員会出発集会」が開催された。冷たい雨の降る中でしたが、熱気あふれる集会だった。安倍内閣は、5月連休明けにも提出される首相の私的諮問機関「安保法制懇」の「報告書」を口実に、集団的自衛権を容認する解釈改憲を行おうとしている。これは立憲主義に反する独裁政治に他なりません。そうした危機感を持って、集会でアピールされた方々の声の一部を紹介する。
大江健三郎さん(作家)
 あなた方は、生き方をかえることができる。あなた方とともに、年老いた私も、自分の生き方をかえることができるという希望を持つことができる。そして、平和憲法を持ち堪えて、明日の生き方をつくりだそうというのが私の希望です。
山内敏弘さん(憲法研究者・一橋大学名誉教授)、
 集団的自衛権の行使は、国際的に見ても、大国の小国に対する侵略戦争の意味合いを持ってきました。そのようなものを認めることは、日本がふたたび侵略国家になるということを意味します。
池田頼将さん(元イラク派遣航空自衛隊員)、
 僕みたいに、負傷しても補償もない、集団的自衛権が行使されれば、さらにこういった問題が増えると思います。自衛隊でのいじめ、僕も何度も自殺を考えましたが、それでは国の思う壺だと思って、裁判に踏み切りました。
小山内美江子さん(脚本家)、
 次の世代、さらに次の世代のために、ここはがんばらなくてはいけない。日本の次の世代、ではありません。世界全体の次の世代のために、私たちはがんばらなくてはならないのです。どうか皆さん、今日から私と仲間だと思ってください。
落合恵子さん(作家)、
 国際オリンピックの会議で、「アンダー・コントロール」と原発について仰った、この国のトップに、私たちはその言葉を返しましょう。「あんたの支配下には、絶対入らない」と。
佐高信さん(評論家)
 いまの安倍は、まさにヤクザ、暴力団以下の頭しか持っていない。「集団的自衛権」というのは、他の組のカチコミ(ケンカ)に、自分たちも出かけてゆく。ヤクザだってそんなことはしません。

Photo_2 「戦争をさせない1000人委員会」は、これからも集会などの行動提起をするとともに、署名、賛同の拡大、学習会を計画しています。

賛同はこちら
 口座記号番号 00190-1-513413
 口座名称 戦争をさせない1000人委員会
 上記の口座あてにお振込みをお願いします。
 通信欄に①お名前(あれば肩書き・団体名)、②お名前の公開の可否、③ご連絡先(メールアドレスまたはfax)についてお書き添えください。

署名は、こちら
 戦争をさせない全国署名
(小田原城跡の桜)


冤罪は犯罪

2014年04月09日 | インポート

Brochure  無実の人を罪に陥れれば犯罪であるが、検察や裁判所など国家権力が無実の人を有罪とした場合、賠償請求はできるが検察官や裁判官が罰せられた話は聞いたことがない。
 3月27日、「袴田事件」の再審を静岡地裁(村山浩昭裁判長)が決定した。元プロボクサー袴田巌さんは、死刑囚として48年間も獄中にいた。村山裁判長は「捜査機関が重要な証拠を捏造した疑いがあり、犯人と認めるには合理的疑いが残る」と判断。「拘置の続行は耐え難いほど正義に反する」と刑の執行停止も決め、袴田さんは釈放された。日本プロボクシング協会も袴田さんを支援し続け、世界ボクシング評議会(WBC)は4月6日、袴田さんに「名誉チャンピオンベルト」を贈呈した。
 さて、もう一つの冤罪事件である狭山差別事件の再審も、事件から50年を迎え重大な局面を迎えている。74歳の石川一雄の夢は、「無実を証明して中学校に行きたい!」。
 袴田事件と同様、証拠の捏造が明らかになっていて、一刻も早い裁判所の再審決定が求められている。
 その石川さんの「冤罪を憎み、冤罪を笑い飛ばす、行ったり来たりの夫婦の人生・獄友との絆」を描くドキュメンタリー映画「SAYAMA見えない手錠をはずすまで」が上映される。
ぜひ、観てほしい作品だ。
4月18日(金)18:30上映開始
田町交通ビル6階大ホール
(JR田町駅東口下車、徒歩5分)


温度差

2014年04月07日 | インポート

Photo  春の嵐や急激な温度差に身体がついていかない日々が続くが、温度差と言えば震災被災地や沖縄の人々と東京(中央)の温度差も深刻だ。
 復興は進まず、原発事故にいたっては収束のめどすら立っていないが、「安全」な東京でオリンピックとはしゃいでいる。被災地や沖縄の人々は、東京(中央)に差別され、棄てられたと感じるほどだ。
 安倍政権の脅しと金権で辺野古新基地を受け容れた仲井眞沖縄県知事に対して、沖縄では「地殻変動」が起きている。
 名護市長選挙では、自民党を離党した元県議会議長や保守県政の副知事などが公然と稲嶺さんを応援して安倍政権の圧力を跳ね返した。
 沖縄自民党の重鎮で県議会議長も務めた仲里利信さんは、「知事の承認で、菅官房長官は『日米同盟は向こう50年安泰だ』と述べた。沖縄は米軍の軍事植民地として放置された。主権もない、民主主義もない。今回の基地建設は何としても止めないといけない」と語り、
 沖縄平和運動センター議長の山城博治さんは、「この国はまた沖縄を戦争に差し出そうとしている。1945年の沖縄戦のように、『沖縄さん、お願いだからもう一回祖国防衛のために戦ってくれんかね、玉砕の島になってくれんかね』。こういうことだと思うわけですよ」と語っている。
 沖縄の人々の「本土防衛」の地上戦を強いられ、今また対中国の最前線に立たされている危機感を東京(中央)のマスコミは何も報道しない。この温度差こそ耐え難いものではないか。
 沖縄県民の危機感を東京(中央)でも共有するための集会が、前述の二人を招いて開催される。呼びかけ人・参同人には、川平朝清さん(東京沖縄県人会名誉会長)、福田邦夫さん(明治大学軍縮平和研究所代表)、横路孝弘さん(元衆議院議長)、組坂繁之さん(解放同盟委員長)、鳩山由紀夫さん(元首相)も名を連ねている。

沖縄と連帯する東京集会
4月22日(火) 午後 6時半 開会
文京シビックセンター 小ホール

ブーゲンビリア


ランドセル俳人の五・七・五

2014年04月04日 | インポート

55  イジメを受け、担任の教師にも受け止めてもらえないまま不登校に追い込まれた小林凛君の句集。
 彼に俳句がなかったら、それを受け止める母と祖母がいなかったらと思うと背筋が寒くなるようなイジメのひどさ、学校の対応のひどさに愕然とする。
 子どもにとって俳句を含めて意見表明、表現することの大切さを教えてくれる一冊だ。そして、凛君の祖母と母のようにその表現を受け止める人がいなければ表現は成り立たない。イジメを許さず、子どもの表現を受け止めることができる教員であり続けたいと誓った一冊だった。
小林凛君の巻頭の言葉が胸を打つ。

「俳句への挑戦」
 この日本には、いじめられている人がたくさんいる。
 僕もその中の一人だ。いじめは一年生から始まった。
 からかわれ、殴られ、蹴られ、時には「消えろ、クズ!」とののしられた。それが小五まで続いた。僕は生まれる時、小さく生まれた。「ふつうの赤ちゃんの半分もなかったんだよ、一キロもなかったんだよ」、とお母さんは思い出すように言う。
 だから、いじめっ子の絶好の標的になった。危険ないじめを受けるたびに、不登校になってしまった。そんな時、毎日のように野山に出て、俳句を作った。
 「冬蜘蛛が糸にからまる受難かな」
 これは、僕が八歳の時の句だ。
 「紅葉で神が染めたる天地かな」
 この句は、僕のお気に入りだ。
 僕は、学校に行きたいけど行けない状況の中で、家にいて安らぎの時間を過ごす間に、たくさんの俳句を詠んだ。僕を支えてくれたのは、俳句だった。不登校は無駄ではなかったのだ。いじめから自分を遠ざけた時期にできた句は、三百句を超えている。
 今、僕は、俳句があるから、いじめと闘えている。
―小林凛

 「百歳は僕の十倍天高し」と日野原重明さんを詠んだ凛君に、日野原さんは「不登校の少年凛君は 俳句をつくり始めたことで いじめに耐えた 春の陽に彼は輝く。」と推薦の言葉を送っている。生きものや自然とのふれあいの中で彼がいじめと向き合い、闘った六首を紹介する。

ブーメラン返らず蝶となりにけり
生まれしを幸かと聞かれ春の宵
強風にあおられまいとしじみ蝶
いじめ受け土手の蒲公英一人つむ
いじめ受け春も暮れゆく涙かな
いじめられ行きたし行けぬ春の雨

ランドセル俳人の五・七・五(小林凛・ブックマン社)
(メジロとアンズの花)


小出裕章さんとハードボイルド

2014年04月03日 | インポート

Photo  ハードボイルドと言えば、レイモンド・チャンドラーの遺作『プレイバック』で探偵フィリップ・マーロウの名台詞"If I wasn't hard, I wouldn't be alive. If I couldn't ever be gentle, I wouldn't deserve to be alive.”(強くなければ、生きられない。優しくなれないなら、生きる価値がない。)が有名であるが、思わぬところでこの台詞に出会った。
 「100年後の人々へ(小出裕章、集英社新書)」がそれだ。
 原子核工学の研究者として反原発を、率直に語っている。ブレない立ち位置と、科学者としての倫理性の高さに感心する。一方で、そもそも科学者は、社会(国家・企業)の要請に従って研究するという厳然たる事実も思い知らされる。その競争と効率優先の市場原理が産み出した怪物を「原子力マフィア」と「放射性廃物」と命名し、あらゆる生きものに犠牲を強いる原発への毅然とした姿勢は揺るぎない。さて、「優しくなれないなら、生きる価値がない。」について、小出さんは、宮沢賢治、松下竜一、日本国憲法前文、田中正造などの生き方、方向性に共感を示しつつ「優しさは、沈黙の領域へのまなざしに宿る」として次のことばで締めくくる。

 チャンドラーの「優しくなる」とはどういうことか、という問いに戻れば、自分以上に生きることに困難を抱えている生きものに対して、どんなまなざしを向けることができるのか?それが私にとっての「優しさ」なのだと最近思うようになりました。
 未来に対しても、現在の時空に生きる子どもたちに対しても、人間たちに何も意見することのできないほかの生きものたちに対しても、自分がどう向き合えるか。
「優しさ」は、沈黙の領域へのまなざしに宿るものなのです。