東京教組(東京都公立学校教職員組合)

教職員のセーフティーネット“東京教組”

母のうた

2012年08月02日 | インポート

Photo アイヌ文様刺繍家であり、アイヌ民族肖像権裁判などアイヌ民族の復権を訴えてきたチカップ美恵子さんの母、伊賀ふでさんの詩集「母のうた」(伊賀フデ詩集、現代書館)が詩人の麻生直子さんと上村佳弘さんによって上梓された。日常生活の自然なつぶやきがアイヌ語と日本語で綴られていて、生きることの苦しさつらさを言葉として紡ぎ出している。

 「泣いても 笑っても 生きるだけが人生だ 悲しい気持ちをかくして 笑顔を忘れず 進みて世を知るべし」と詠い、自らの覚悟として「世を知るべし」と言い切り、日常の悲しみも諦念も乗り越える。「貧乏」という詩は、「私は貧乏を売り物にしたくない けれど貧乏である 啄木や林芙美子のように 売る貧乏がない 中身のない貧乏である できることなら 私も貧乏を売りたい」。なんという素直さ、まっすぐな貧乏。思わず微笑んでしまう。

詩集にはCD「はるとりのウポポ」もついていて、貴重な音源に出会える。歌(ウポポ)の抑揚、節回し、声の質も、いにしえのウポポはかくあらんと思う。「ポンノッポ ツイカリレ エシララ サマ ツイテレケレ」という歌は、山本弥太郎(伊賀ふでと山本多助の祖父、ヤイテツ エカシ ・釧路コタンの最後の首長)の自作のアイヌ語の歌。「歳をとっても若い者には負けぬ私はエカシ(古老)」とふでが意訳している。子守唄(イフンケ)もいい。

                    (フウロソウ)