序盤、荻原浩や清水義範の書くライトな探偵小説っぽい雰囲気を目指して失敗したと言った感じで読むのが辛くなる。
そのうえ外来語表記に拘りがあってヴィニール、スウィッチ、ヴィデオ、プライヴェート・・・など読みにくいったらない(だったらオーバーハングはオーヴァーハングって書けよ・・と言いたい)。
しばらくして話が動き出すと、あいかわらず痛い比喩や挿話があったりするものの、なんとか物語の世界に入って行けるようになる。
特に清安真病院の特別室の謎が深まってからは、綾辻行人を連想させるようなホラーミステリーの色が濃くなり俄然面白くなっていく。
このあたりで、何となく意味不明だったプロローグ1に繋がりそうな予感が・・・。
しかしちょっとズレた描写や拘りの「プライヴァシィ」が出てきてホラーじゃなくなってしまう。
また何度読み返しても状況が良く分からない描写があったり、普通に書けばいいところを聞いたことない単語で書いてあってそれを調べたりと、ところどころで躓いてしまう。
そうして数々なハードルが立ちふさがるけれど、ストーリは面白いので何とかクリアして読み続けられる。
核心に迫るにつれハードボイルドの匂いもしだして、中盤からいよいよ本格ミステリーらしくなって行く。
ここまで来ると、竜崎の場面になると途端にレベルの低い描写になることさえ我慢すれば、物語に入り込み一気読み。
ミスリードさせるような描写は全部クリアしたものの、直前まで予想できなかった展開には脱帽。
伏線はいっぱい有ったのに。
島田荘司の路線かと思っていたら、西條奈加の「刑罰0号」とか荻原浩の「海馬の尻尾」と同じ系列でした。
プロローグ2を最後に持ってきた構成は良かった。
ストーリも面白いし構成も良いのに、返す返すも竜崎に関する描写が残念。
読みにくいだけの拘りを無くして、滑っている描写を止めれば文句なしの作品。
セルバ出版