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国立天文台水沢の危機

2020-03-29 23:43:47 | 
 天文情報サイトで次の記事が投稿されていました。
先日の国立天文台野辺山宇宙電波観測所に次いでの運用停止です。
2019年4月にはブラックホールの影の撮影成功にも貢献してきた施設です。
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VERAプロジェクト前倒し終了および今後のアンテナの運用停止見込みについて
投稿日 : 2020-03-27

                国立天文台水沢VLBI観測所長 本間 希樹

この度、国立天文台の執行部方針として
 i) 水沢VLBI観測所のVERAプロジェクトの今シーズン末(2020年6月)での前
  倒し終了
 ii) それに伴う当観測所予算の削減(昨年比で約5割減)
が3月26日付けで観測所宛てに正式に通知されましたので、コミュニティの皆
 様にもここにお知らせします。
当観測所としてはVERAの全4台のアンテナの2022年までの運用継続を目指して
おりましたが、今回の決定により、今後数か月以内にアンテナ運用が停止する
見込みです。詳細については現在当観測所にて緊急に運用計画を策定しており
ますが、現段階で以下のような影響が出ると予想されますのでコミュニティの
皆様にあらかじめお伝えします。
1) 現在のVERAのアンテナ全4局の観測運用(VERAおよび、日韓VLBIと東アジ
 アVLBIも含む)は現在の観測シーズン(2020年6月中旬まで)で終了する見込
 みです。
2) 2020年7月以降は予算削減の影響でVERAの4局のアンテナのうち、水沢局
 以外の3局
 (入来、小笠原、石垣島局)の運用が停止する見込みです。
3) 2020年7月以降の共同利用については、
  a) VERAの共同利用は廃止
  b) 日韓VLBI(KaVA)は現在の7局→4局へ削減して運用
  c) 東アジアVLBI(EAVN)は現在の最大11局→最大8局へ削減して運用
 となる見込みです。

今後の共同利用の方針や観測期間などについては詳しいことが決まり次第
また改めて連絡いたします。
以上、コミュニティの皆様に多大なご迷惑をおかけすることをお詫び申し
上げます。
なお、これまで国立天文台ではVERAの観測網運用を2022年3月まで継続する
方針で運営してきており、当観測所でもこの間研究者コミュニティと協力して
VERAを用いた研究を進めるとともに日韓や東アジアの観測網を整備して国際
共同観測を進め、さらにはそのような国際協力を発展させて、2019年4月には
ブラックホールの影の撮影成功にも貢献してきました。そのような中、昨年
12月に突如大幅な予算削減の可能性が現執行部から観測所に提示されました。
水沢VLBI観測所としては、従来方針とは異なる急激な予算削減とそれにとも
なう観測運用の停止はコミュニティへの影響が大きいのでできるだけ避ける
よう執行部に申し入れを行ってきましたが、最終的にこのような決定となり
ました。
観測所としては今後、アンテナの共同運用パートナーや外部資金・寄付の獲得
等により、今後も一台でも多くのアンテナの運用を続ける可能性について検討
していく予定です。観測所だけでなく、研究コミュニティおよび国民の財産で
もあるVERAの全4台の電波望遠鏡が今後も研究に有効に活用されることを引き
続き目指していきますので、今後とも皆さまのご支援とご協力を賜ることが
できれば幸いです。

VERAプロジェクト
VERAは、銀河系の3次元立体地図を作るプロジェクトです。VLBIという電波
干渉計の手法を用いて、銀河系内の電波天体の距離と運動をこれまでにない高
い精度で計測し、銀河系の真の姿を明らかにします。 国立天文台を中心に、
多くの大学や研究所からさまざまな分野の研究者が参加し、2003年から観測が
始まっています。
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★管理人の思い
野辺山宇宙電波観測所の時も書きましたが、どこの研究機関が運営費交付金の
形で予算措置が行われています。
年度計画、中期目標、長期目標という形で成果が求められます。
成果が目に見えない(見えにくい)プロジェクトや施設が矢面にたち、この
ような形になります。
2008年11月、国立天文台水沢での会議時に撮影。

水沢観測局の建屋

観測室(窓越しに電波望遠鏡が見える)

10mアンテナ