28日の事業仕分けが終わった直後に、国立大学附属病院長会議が緊急声明をプレスに投げ込んだという情報が伝わってきました。残念ながら、無視されたのかタイミングが悪かったのか、新聞紙上には掲載されていませんが・・・。
その緊急声明文を入手しましたので、少し、読みづらいものかもしれませんが、このブログでご紹介しておきましょう。
いろいろと具体的なことが書いてありますが、最後の部分、つまり
「なお、限られた時間の議論の中で、国立大学附属病院の診療と教育研究機能が十分でないとした意見もあったが、国立大学附属病院で難易度の高い手術が実施されており、中医協の場でその点が確認され診療報酬改定に反映されたことを強調し、断固反論するものである。」
これは、「大学病院はコンクリートの固まりにしかみえない。」などの仕分け人の大学病院に対するあまりにも無理解な発言に、全国の大学病院の皆さんがそうとう憤慨していることを示しています。
仕分け人の発言は、地域住民のために昼夜を問わず一生懸命大学病院の現場で働いている医師や看護師や職員のみなさんにとって、耐え難い発言であったと思います。
以下緊急声明の全文です。
緊急声明
「国立大学病院の教育・研究・診療機能を危うくする財政的仕組みの廃止を憂慮」
国立大学病院は、良質な医療人の育成と、先端医療の開発及び地域特性も踏まえた地域医療最後の砦としての機能を果たしてきた。特に昨今の救急医療や周産期医療等の社会的要請にも積極的に対応するとともに、法人化後の経営改善にも努力してきた。
しかし、本日実施された事業仕分け第2弾では、国立大学病院の施設整備と大型機器の資金調達を代行してきた「国立大学財務・経営センター」がその対象となり、主要業務はすべて「廃止」との結論が出された。
国立大学病院は医療人を養成するため、採算性を犠牲にしつつ全ての診療領域をカバーする診療科を設置している。
また、研究面においては先端医療の研究・開発・普及のために、現行の診療報酬制度で賄いきれない先進医療機器の先行導入と、人的配置がなされ、国立大学病院の研究的不採算となっている。この点が民間病院や他の公的病院とは違う部分である。
こういう教育研究における不採算を、国が財政的に支えるため、病院運営費交付金が措置されてきたところであるが、この病院運営費交付金も法人化当初から66%削減され、財政的に困窮してきたところである。
教育研究に対する財政支援の減額以外に、国立大学病院の経営が苦しい理由は、国の時代の病院再開発費用の返済負担が大きい点である。
国の時代は、単年度会計であったため自己資金の積み立てができなかった。したがって自己資金がない状況で借入金によって再開発が実行されてきた。
法人化した際には、各国立大学病院の借入金が、国からそれぞれの国立大学法人に負担させられたが、返済期間中の減価償却費等の再開発用の積立金は措置されず、重い債務だけが残された。
法人化後は、制度的に6年間の中期計画期間中は経営努力による自己収入を積立て、再開発に充当できる仕組みとなったが、教育研究の不採算と、その支援が大幅に削減される中、現実にはとても困難であった。
このような、厳しい経営状況を改善することを目標に「財務・経営センター」が設立されたと認識していたが、今回の事業仕分けの結果に当たって、当会議としては、以下の点を確認することが最低条件と考え緊急声明とする。
1.附属病院の施設整備に必要な資金の従来どおりの財政融資資金を活用した所要額の借入の維持・確保。
2.厚生労働省のナショナルセンターと同様に承継債務の大幅な軽減。
3.「民主党政策集INDEX2009」のとおり、附属病院運営費交付金の法人化当初の水準までの回復。
4.老朽化施設の保守費用となる営繕予算の確保。
事業仕分けが事業の効率化を目指すものと理解しているが、各国立大学法人が個別に返済と新規借り入れ手続きを行うこととなり、「財務・経営センター」によって集約化・効率化されていた借入に伴う業務が、各国立大学法人に分散することで、各国立大学法人の業務負担が増大し、かえって事業が非効率になることも深く懸念される。
なお、限られた時間の議論の中で、国立大学附属病院の診療と教育研究機能が十分でないとした意見もあったが、国立大学附属病院で難易度の高い手術が実施されており、中医協の場でその点が確認され診療報酬改定に反映されたことを強調し、断固反論するものである。
平成22年4月28日
国立大学附属病院長会議
常置委員会委員長
河 野 陽 一
国立大学附属病院長会議構成員
北海道大学病院長 福 田 諭
旭川医科大学病院長 松 野 丈 夫
弘前大学医学部附属病院長 花 田 勝 美
東北大学病院長 里 見 進
秋田大学医学部附属病院長 茆 原 順 一
山形大学医学部附属病院長 久保田 功
筑波大学附属病院長 五十嵐 徹 也
群馬大学医学部附属病院長 石 川 治
千葉大学医学部附属病院長 河 野 陽 一
東京大学医学部附属病院長 武 谷 雄 二
東京大学医科学研究所附属病院長 山 下 直 秀
東京医科歯科大学医学部附属病院長 坂 本 徹
東京医科歯科大学歯学部附属病院長 嶋 田 昌 彦
新潟大学医歯学総合病院長 内 山 聖
富山大学附属病院長 遠 藤 俊 郎
金沢大学附属病院長 富 田 勝 郎
福井大学医学部附属病院長 山 口 明 夫
山梨大学医学部附属病院長 島 田 眞 路
信州大学医学部附属病院長 小 池 健 一
岐阜大学医学部附属病院長 岩 間 亨
浜松医科大学医学部附属病院長 瀧 川 雅 浩
名古屋大学医学部附属病院長 松 尾 清 一
三重大学医学部附属病院長 竹 田 寛
滋賀医科大学医学部附属病院長 柏 木 厚 典
京都大学医学部附属病院長 中 村 孝 志
大阪大学医学部附属病院長 福 澤 正 洋
大阪大学歯学部附属病院長 森 崎 市治郎
神戸大学医学部附属病院長 杉 村 和 朗
鳥取大学医学部附属病院長 豊 島 良 太
島根大学医学部附属病院長 小 林 祥 泰
岡山大学病院長 森 田 潔
広島大学病院長 越 智 光 夫
山口大学医学部附属病院長 松 益
徳島大学病院長 苛 原 稔
香川大学医学部附属病院長 石 田 俊 彦
愛媛大学医学部附属病院長 横 山 雅 好
高知大学医学部附属病院長 杉 浦 哲 朗
九州大学病院長 久 保 千 春
佐賀大学医学部附属病院長 宮 耕 治
長崎大学病院長 河 野 茂
熊本大学医学部附属病院長 猪 股 裕紀洋
大分大学医学部附属病院長 古 林 秀 則
宮崎大学医学部附属病院長 池ノ上 克
鹿児島大学医学部・歯学部附属病院長 松 英 夫
琉球大学医学部附属病院長 須加原 一 博
その緊急声明文を入手しましたので、少し、読みづらいものかもしれませんが、このブログでご紹介しておきましょう。
いろいろと具体的なことが書いてありますが、最後の部分、つまり
「なお、限られた時間の議論の中で、国立大学附属病院の診療と教育研究機能が十分でないとした意見もあったが、国立大学附属病院で難易度の高い手術が実施されており、中医協の場でその点が確認され診療報酬改定に反映されたことを強調し、断固反論するものである。」
これは、「大学病院はコンクリートの固まりにしかみえない。」などの仕分け人の大学病院に対するあまりにも無理解な発言に、全国の大学病院の皆さんがそうとう憤慨していることを示しています。
仕分け人の発言は、地域住民のために昼夜を問わず一生懸命大学病院の現場で働いている医師や看護師や職員のみなさんにとって、耐え難い発言であったと思います。
以下緊急声明の全文です。
緊急声明
「国立大学病院の教育・研究・診療機能を危うくする財政的仕組みの廃止を憂慮」
国立大学病院は、良質な医療人の育成と、先端医療の開発及び地域特性も踏まえた地域医療最後の砦としての機能を果たしてきた。特に昨今の救急医療や周産期医療等の社会的要請にも積極的に対応するとともに、法人化後の経営改善にも努力してきた。
しかし、本日実施された事業仕分け第2弾では、国立大学病院の施設整備と大型機器の資金調達を代行してきた「国立大学財務・経営センター」がその対象となり、主要業務はすべて「廃止」との結論が出された。
国立大学病院は医療人を養成するため、採算性を犠牲にしつつ全ての診療領域をカバーする診療科を設置している。
また、研究面においては先端医療の研究・開発・普及のために、現行の診療報酬制度で賄いきれない先進医療機器の先行導入と、人的配置がなされ、国立大学病院の研究的不採算となっている。この点が民間病院や他の公的病院とは違う部分である。
こういう教育研究における不採算を、国が財政的に支えるため、病院運営費交付金が措置されてきたところであるが、この病院運営費交付金も法人化当初から66%削減され、財政的に困窮してきたところである。
教育研究に対する財政支援の減額以外に、国立大学病院の経営が苦しい理由は、国の時代の病院再開発費用の返済負担が大きい点である。
国の時代は、単年度会計であったため自己資金の積み立てができなかった。したがって自己資金がない状況で借入金によって再開発が実行されてきた。
法人化した際には、各国立大学病院の借入金が、国からそれぞれの国立大学法人に負担させられたが、返済期間中の減価償却費等の再開発用の積立金は措置されず、重い債務だけが残された。
法人化後は、制度的に6年間の中期計画期間中は経営努力による自己収入を積立て、再開発に充当できる仕組みとなったが、教育研究の不採算と、その支援が大幅に削減される中、現実にはとても困難であった。
このような、厳しい経営状況を改善することを目標に「財務・経営センター」が設立されたと認識していたが、今回の事業仕分けの結果に当たって、当会議としては、以下の点を確認することが最低条件と考え緊急声明とする。
1.附属病院の施設整備に必要な資金の従来どおりの財政融資資金を活用した所要額の借入の維持・確保。
2.厚生労働省のナショナルセンターと同様に承継債務の大幅な軽減。
3.「民主党政策集INDEX2009」のとおり、附属病院運営費交付金の法人化当初の水準までの回復。
4.老朽化施設の保守費用となる営繕予算の確保。
事業仕分けが事業の効率化を目指すものと理解しているが、各国立大学法人が個別に返済と新規借り入れ手続きを行うこととなり、「財務・経営センター」によって集約化・効率化されていた借入に伴う業務が、各国立大学法人に分散することで、各国立大学法人の業務負担が増大し、かえって事業が非効率になることも深く懸念される。
なお、限られた時間の議論の中で、国立大学附属病院の診療と教育研究機能が十分でないとした意見もあったが、国立大学附属病院で難易度の高い手術が実施されており、中医協の場でその点が確認され診療報酬改定に反映されたことを強調し、断固反論するものである。
平成22年4月28日
国立大学附属病院長会議
常置委員会委員長
河 野 陽 一
国立大学附属病院長会議構成員
北海道大学病院長 福 田 諭
旭川医科大学病院長 松 野 丈 夫
弘前大学医学部附属病院長 花 田 勝 美
東北大学病院長 里 見 進
秋田大学医学部附属病院長 茆 原 順 一
山形大学医学部附属病院長 久保田 功
筑波大学附属病院長 五十嵐 徹 也
群馬大学医学部附属病院長 石 川 治
千葉大学医学部附属病院長 河 野 陽 一
東京大学医学部附属病院長 武 谷 雄 二
東京大学医科学研究所附属病院長 山 下 直 秀
東京医科歯科大学医学部附属病院長 坂 本 徹
東京医科歯科大学歯学部附属病院長 嶋 田 昌 彦
新潟大学医歯学総合病院長 内 山 聖
富山大学附属病院長 遠 藤 俊 郎
金沢大学附属病院長 富 田 勝 郎
福井大学医学部附属病院長 山 口 明 夫
山梨大学医学部附属病院長 島 田 眞 路
信州大学医学部附属病院長 小 池 健 一
岐阜大学医学部附属病院長 岩 間 亨
浜松医科大学医学部附属病院長 瀧 川 雅 浩
名古屋大学医学部附属病院長 松 尾 清 一
三重大学医学部附属病院長 竹 田 寛
滋賀医科大学医学部附属病院長 柏 木 厚 典
京都大学医学部附属病院長 中 村 孝 志
大阪大学医学部附属病院長 福 澤 正 洋
大阪大学歯学部附属病院長 森 崎 市治郎
神戸大学医学部附属病院長 杉 村 和 朗
鳥取大学医学部附属病院長 豊 島 良 太
島根大学医学部附属病院長 小 林 祥 泰
岡山大学病院長 森 田 潔
広島大学病院長 越 智 光 夫
山口大学医学部附属病院長 松 益
徳島大学病院長 苛 原 稔
香川大学医学部附属病院長 石 田 俊 彦
愛媛大学医学部附属病院長 横 山 雅 好
高知大学医学部附属病院長 杉 浦 哲 朗
九州大学病院長 久 保 千 春
佐賀大学医学部附属病院長 宮 耕 治
長崎大学病院長 河 野 茂
熊本大学医学部附属病院長 猪 股 裕紀洋
大分大学医学部附属病院長 古 林 秀 則
宮崎大学医学部附属病院長 池ノ上 克
鹿児島大学医学部・歯学部附属病院長 松 英 夫
琉球大学医学部附属病院長 須加原 一 博