ある医療系大学長のつぼやき

鈴鹿医療科学大学学長、元国立大学財務・経営センター理事長、元三重大学学長の「つぶやき」と「ぼやき」のblog

事業仕分け:枝野大臣の視察で私の思いは伝えました。本番でのフェアなディスカッションを望みます。

2010年04月21日 | 高等教育
昨日、4月20日(火)の11時45分から、事業仕分け議員の(独)国立大学財務・経営センター(以下財経センター)の視察がありました。私は理事長として、施設のご案内と質疑応答に対応しました。

お越しになったのは、枝野大臣、蓮舫議員、菊田議員、尾立議員の4人で、一ツ橋の学術総合センタービルの10階にある財経センターと、11階にある(独)大学評価学位授与機構の2つを視察されました。

まず、学術総合センタービルの1階と2階の会議室と講堂を視察され、10回の財経センター、11階の学位授与機構の部屋を視察されたあと、会議室で概要説明と質疑応答がありました。

それにしても、議員さんたちを撮影しようとするすさまじいマスコミの数。廊下を歩く時も、ちょっと気をぬくとマスコミの方々の波に溺れてしまいます。まるで満員電車です。

概要説明の時間では、まず、私から財経センターの概要をさせていただき、次いで(独)大学評価学位授与機構の平野さん(前名古屋大学長)が機構の説明をされました。

私は、昨年まで三重大学長をし、鈴鹿医療科学大学副学長と、三重県文化振興事業団の理事長を経験して、今回公募に応募して理事長になったこと、そのようなことから大学と大学病院の現状、そして現場の思いを伝えたいと申し上げました。そして、パネルの図を示しつつ、日本の医学研究の低下、大学病院の危機的状況、そしてそれが国際競争力と地域医療の低下に拍車をかけていること、また、国立大学全体としても交付金の削減と施設整備費の不足によって、国際競争力が低下しかかっていること、そのような大学の大変な状況の背景の中で、財務経営センターは、病院への長期低金利の貸付や、施設費交付事業、そして、経営支援や調査研究を行うことで、国立大学と病院を下支えし、日本の成長につなげることを使命と考えていることを述べました。




枝野大臣や連舫議員は、現場の皆さんの “思い”については共有するが、今日はそういうことを聞きに来たのではなく、どのように具体的に効率化するかということを検討したい旨をおっしゃいました。

そんなことで、私の説明は、仕分け人の方々が求めていたプレゼンではなかったようなのですが、私としては、大学や大学病院の現場の危機的状況と現場で頑張っている皆さんの思いと、それを支える財務経営センターの重要性について、私の思っていることを一生懸命にお話しできたことは良かったと思っています。

また、千葉に財経センターの本部があり、都内に東京連絡所があって二つに分かれているが、都内で作業をする方が効率的であり、ぜひ、効率的なところで仕事をさせていただきたいとお願いをいたしました。

枝野大臣がお帰りになったあと、尾立議員と連舫議員が残られて、財務経営センターが融資を行う必要性に関するご質問をされました。私は、大学病院は教育・研究・地域医療支援という極めて大きな使命があるので、単に採算がとれるかどうかということだけで経営の判断はできないこと、教育・研究や地域医療の支援まで含めて経営を判断しようとすれば、それぞれのデータを把握・分析する必要があり、それは一般の金融機関では困難であるが、現場に近い立ち位置にある財経センターは可能である旨をご説明しました。

私の説明にほんとうにご納得いただいたかどうかは、わかりません。でも、ぜひ、ご理解を賜りたいと思っています。

視察の皆さんをお送りし、いくつかのマスコミのインタビューに応じ、最後に私に密着取材していたTBSの記者とカメラマンの撮影を受けて、私のこの日の仕事が終わりました。

緊張感が一気にとれて、さすがにしばらく放心状態でしたね。

後になって、知ったのですが、枝野大臣は視察当日の朝の記者会見で、記者から学術総合センタービルの視察をすることについて聞かれて「基本的には文科省関連の東京事務所が一つのビルに集中しているというふうに認識いたしておりまして、ここのところは事実上全部取り上げるというつもりでおります。そこを取り上げることで、竹橋以外のところにある他の独法、他の省庁の所管の独法の東京事務所についても、いわゆる横串が刺せるのではないか、非常に1カ所に固まっているので、象徴的でわかりやすいという問題意識です。」と述べておられたとのことです。

つまり、最初から“全部取り上げる”という結論ありきで視察にお越しになられたということなのでしょうか?

本番はこの28日ということになりましたが、私は仕分けそのものには賛成で、マスコミにも一貫してそうお答えしており、むしろ現場から仕分けの提案があってもいいのではないかと思っています。でも、やはり、最初から結論ありきではない、ほんとうのディスカッションのできるフェアな仕分けの場になることを願っています。そして、財経センターの本来の業務を否定されてしまって、今たいへんな状況にある国立大学や附属病院の機能が低下してしまうことだけは何とか避けたいと思っています。



TBSの密着取材は本日の夕方6時前からの報道番組で流れるようです。時間のある方はぜひ見て下さい。

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1 コメント

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思い (しみず)
2010-04-21 19:52:22
先生のプレゼンのご苦労と「思い」、それと政治側のおもわくのずれが見えるようで、私レベルの理解でもため息が出ます。先生の訴えられることは、大学や大学病院の現場、そして地域社会の現場を肌で感じないと、理解は難しいのかもしれません。そこからでないと、「思い」というものが出てきません。この「思い」というものがないと、学問や医学・医療や政治が、ただの技術やシステムで終ってしまって、「文化」にならないのだと思います。フランスにいたとき、研究・実験企画の前に、その哲学を語らせられて、辟易したことをなつかしく思い出します。ただの小さな実験なのに、そこでは人生観さえ要求される。その意味が、今になって少し感じられるような気がします。心から応援しています。先生は、医学や大学病院の向こうに患者さんを見ておられますし、業績の向こうに文化を見ておられるからです。
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