ある医療系大学長のつぼやき

鈴鹿医療科学大学学長、前国立大学財務・経営センター理事長、元三重大学学長の「つぶやき」と「ぼやき」のblog

はたけんぼの酒

2013年05月22日 | 高等教育

4月に鈴鹿医療科学大学の学長として着任したのですが、さっそく僕に連絡をしてきた学生さんがいました。

彼の名は森大地君。医療福祉学科の4年生です。2011年の東日本大震災の時に、森君は三重大学附属病院の医療チームに交じって東北に足を運びました。その頃、僕は医療福祉学科の救急医療の講義を担当しており、森君の活動のお話を聞き、なかなか感心な学生が鈴鹿にもいるな、と思って、僕なりに励ましてきました。

その後、森君は全国のボランティア活動をしていた大学生たちと知り合うところとなり、福島の学生が中心となって立ち上げた学生による震災支援ボランティアの団体「JASP」(Japan All Students Project)に参加し、今日に至るまで、福島と三重を活動の場として支援活動を粘り強く続けています。

 

森君は、そのJASPの三重支部の代表であり、東海ブロックの代表もつとめているのです。今は、特に福島産の野菜などについて、まだ根強く残っている放射能の風評被害の解決に貢献しようと、地道な活動を続けています。

 

 

 

 今日のブログのタイトルの「はたけんぼの酒」というのは、森君が福島へ支援活動に行き、わざわざ僕のために買ってきてくれたお土産なんです。このお酒は、福島県の「JAすかがわ岩瀬」が、喜多方市の大和川酒造さんにお世話になりながら創りあげたお酒ということで、もちろん放射能についても安全です。僕は、さっそく、飲ませていただきましたが、とってもさわやかな味で、僕の好みに仕上がっていました。

 

ボランティア活動というのは、熱しやすく冷めやすい活動では本物ではなく、この学生たちの活動のように、粘り強い地道な活動を継続することこそが、ほんとうのボランティア活動なんだということを、僕は森君から教えられました。彼らのいちばんの心配事は、大震災の記憶やボランティア活動が風化してしまうことです。

森君の地元は、鈴鹿医療科学大学の近くとのことですが、卒業後は、彼がこの2年間、ボランティア活動の場としてきた第二の故郷である福島県で就職することを希望しているとのことです。

森君とJASPの皆さんの活動が今後も継続され、「みんなでキセキ起こそうよ!!」という彼らの夢がかなうことを期待し、大いに励ましてやりたいと思います。

 

 

 

 

 

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「白衣」の重み

2013年05月02日 | 高等教育

4月30日に鈴鹿医療科学大学の薬学部で「白衣授与式」が行われましたので、ご報告しておきましょう。

白衣を授与されるのは4年生が終了して5年生になったばかりの学生たち。6年制の薬学部では、実践的な臨床薬学教育が求められており、学生たちは5年生で病院や薬局の現場で「実務実習」をします。

ただし、実務実習に行く前には、全国的に実施されている「共用試験」に合格しなければなりません。共用試験は基本的な知識を問うCBT(computer-based test)と、臨床的な技能や態度を評価するOSCE(objective-structured clinical examination)からなっています。

もう10年以上前になりますが、三重大学医学部で僕が教授をしていた頃に、医学部でその制度が導入されましたが、薬学部でも同様の制度が導入されるようになったんですね。医歯薬系では標準的な教育項目を定めたコアカリキュラムが策定され、各大学はそれにもとづいて学士教育と評価を行うようになり、この10年間で学士課程の「質保証」が相当進んだといってもいいでしょう。

OSCEを受ける前に基本的臨床技能の教育を受けることも医学部と同様であり、鈴鹿医療科学大では本物さながらの「模擬薬局」が作られ、患者さんに対する服薬指導や調剤などの実習が、ロールプレイやグループディスカッションなどの教育手法を駆使して行われています。

また、PBL(problem-based learning)などのアクティブラーニングについても、僕が三重大学の教授をしていた頃、全国でもかなり早い時期に三重大医学部に導入したのですが、この鈴鹿医療科学大学の薬学部でも一部の授業にPBLが導入されています。昨年の中教審の答申では、学士課程の質保証やアクティブラーニングの導入が謳われているのですが、医歯薬系大学では他学部に先駆けて教育改革が行われ、三重大も鈴大もその先頭を走っていると申し上げていいでしょう。

このように、きっちりと基礎および実践的な教育を受け、共用試験のバリアーをクリアした学生さん、つまり、直接患者さんに接することが許されると評価された学生さんに、白衣授与式を行っています。白衣授与式は、三重大医学部でも10年以上前から実施していますが、必ずしもすべての大学が行っているわけではありません。しかし、やっぱり、6年制のカリキュラムの重要な節目として、この時期に象徴的なセレモニーを行うことは、大いに意義があると感じます。

白衣授与式は、すでに実務実習を終えた6年生、来年実習することになる4年生も出席し、僕と薬学部長の川西正祐さんがあいさつの後、6年生の先輩代表からのアドバイスと励ましの言葉、川西さんによる一人一人の学生さんへの白衣の授与、そして、着衣。最後に、5年生の学生を代表して誓いの言葉が読み上げられました。

僕の挨拶では「白衣」というもののもつ「重み」についてお話しました。

 まず「白衣」は、医療従事者の作業衣であり、制服ですね。最近は、「白衣」は必ずしも「白」とは限りません。ピンクやブルーやグリーンがあり、絵柄がついている「白衣」もあるようです。医学的には「色」は清潔・不潔とは関係がありませんし、機能性を重視すれば、必ずしも「白」が最善の色とは限らないということでしょう。ピンク色の「白衣」の方が、患者さんに温かみを感じさせるということもあるかもしれません。

でも、日本語では「ピンクの白衣」「ブルーの白衣」「グリーンの白衣」なんて言うことになり、「白衣」という言葉が本来持っている「白い色の衣」という意味と矛盾して、なんとなく違和感もありますね。

僕は、カラフルな白衣もそれはそれでいいのですが、やはり「白」という色に、「白衣」の「重み」を感じています。

「白」は、相手に清潔感を感じさせると同時に、純粋さの象徴でもあります。医療従事者が、患者さんのために、自分の損得や利益を考えずに純粋な気持ちで接してくれている。そんなふうに、白衣を見た人は感じるのではないでしょうか?

また、白衣は「プロフェッショナル」ということの象徴のように思えます。野口英世博士をはじめとして、小さいころ読んだ偉い学者さんたちの伝記には、たいてい白衣姿の絵が出てきますしね。

一般の人から見れば、白衣を着ている人は、その道、特に医学・医療領域のいっぱしの道を究めた人、つまり「プロフェッショナル」であると受け取ってしまいます。逆に、白衣を身に着ける医療従事者にとっては、「プロフェッショナル」としての期待に応えなければならないという責任感を生じさせるものでもあると思います。

白衣を着た医療従事者は、まず患者さんのために純粋な気持ちで接しなければならない。しかも「プロフェッショナル」として失敗は許されない。事故を起こせば社会から大きな責任を問われることになります。

学生さんには、このような「白衣」の持つ「重み」を感じていただき、毎朝「白衣」を着る時には、今日一日は「真剣勝負」だぞ!と緊張感をもって心を新たにし、そして、一日が終わって「白衣」を脱ぐ時には、今日一日、自分は「白衣」の「重み」にふさわしい行動ができたのかどうか、振り返って反省をしていただきたいと思います。

だいたい、こんな主旨のお話を、これから病院・薬局の現場に赴こうとする学生さんたちへの餞といたしました。

5年生の皆さん、ぜひとも実り多い実習になることを期待していますよ。

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